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交戦と加勢

 ――紫光技特性模写『封炎』


 火を封じる特性を模写し、直接攻撃を担当する『万壊電』と共にサリオンに浴びせかけた。


 もちろん特性一つ模写しただけでサリオン級の強者の魔力を完全に封じることは不可能だ。封印はおろか有意義に抑制することすら本来なら難しかっただろう。


 しかし私にはそれを無効化するほどの魔力量と技術があった。


 ――テリア式邪術〈驕慢の視線〉


 無限に達する魔力量で無謀に押し切りながら、〈驕慢の視線〉の力まで全て『封炎』にのみ投資してサリオンの力を最大限抑制した。そして〈五行陣〉は攻撃技術の方へ活用してサリオンを押し切った。


「ぬぅっ……!?」


 無限の魔力と〈驕慢の視線〉の力まで動員してもサリオンの魔力を完璧に封印することはできなかった。しかし例えるなら建物を丸ごと燃え盛らせる大火災レベルから小さな焚き火程度にまで炎が弱まった。


「面白いのぅ。なかなか斬新な方式じゃ!」


 しかしサリオンは全く萎縮しなかった。むしろ気分良さそうに笑っていた。


 彼の硬い筋肉がさらに膨張した。特性の魔力が抑制された代わりに純粋な白光技の魔力を全身に満たしたのだ。外へ噴き出す力も純粋な魔力の物理力のみだった。


 しかしそれだけでも巨大な山が動くような圧迫感と物理力があった。


「儂の『獄炎』をここまで抑制するとは姉上にも容易ではなかろう。感服じゃ。しかしこの儂がそれだけで無力化されると思ったわけではあるまいな?」


「もちろん……よ!」


 サリオンの拳がさらに強く重くなった。のみならず彼が放つ魔力が巨大な壁あるいは盾のようなものとなって私を叩きつけた。私は剣でそれを受け流そうとしたけれど、面積が広すぎる攻撃は受け流すことすら不可能だった。


 けれどこの程度は予想していた。


 ――天空流奥義〈満月描き〉


 巨大な魔力の球体でサリオンごと魔力の壁を押し返した。暴れる斬撃が壁を削り取りサリオンの腕に軽い傷を残した。


 その直後に力を集中して繰り出した突きがサリオンの魔力を突破した。彼の脇腹が貫かれ血が流れ出た。依然として大きな傷ではなかったけれど、彼の強靭な魔力と肉体を突破できるということが証明されたのだ。


 サリオンの巨大な魔力とそれを扱う技量が圧倒的だということはすでに知っていた。特性を抑制しても純粋な魔力だけでも脅威的な敵だということも。


 しかし戦闘系特性は結局使わないよりは使う方が当然より良いものだ。それを抑制したこと自体が大きな意味があるのだ。


 こんな魔力量で押し潰す無謀な方式と邪術を使用して五行陣の限界を超える方法は母上には不可能だ。だから母上にはテシリタの方の相手を頼んだ。どうせテシリタにはこんな力だけの粗雑な方式など通用せず、母上の方が相手しやすいだろうから。


 もちろんそうだからといって相手しやすいわけでは決してない。油断はおろか命を懸けて相手しなければ――。


「おや。こんな形で再会するとは思いませんでしたが」


「!?」


 突然後ろから聞こえた声が誰のものなのかを認識し、真剣に驚愕しながら稲妻のように振り返った。同時に剣を振るった。


 正面にサリオンがいることすら意識する余裕がないほどの相手がそれほどの魔力を秘めて現れたことに対する反射的な行動だった。


 それも仕方なかった。もし相手が現れるや否や奇襲を狙っていたら、サリオンよりはるかに大きな脅威となっていただろうから。


 けれどサリオンは呆れたように私じゃなく現れた者の方を見ており、現れた者もただ私の攻撃を平然と防いだだけだった。


「ピエリ・ラダス……! どうしてここに?」


「こちらに用事が出来ました。私としても本意ではありませんでしたが」


 ピエリは片手に握った剣で平然と私の攻撃を防いだ姿勢のまま、口元だけで笑いながら鋭い眼差しで私を見抜いた。


 後方へ大きく跳躍して二人の八賢人の攻撃に備えた私だったけれど、すぐに飛びかかってくる気配はなかった。


「さあ……うむ?」


 正確にはサリオンの方は瞬間的に私との戦闘を続行しようとするような姿勢を取ったけれど、突然他所に注意を奪われたように視線を逸らした。


「……ふむ……分かったわい。そなたの仰る通りに」


 どうやら何か通信が来たようだ。


 サリオンがあんな口調で対応するということは……。


「ピエリ・ラダス。儂はこれから姉上に加勢するぞ」


「ああ、知ってる。どうせこちらは私一人で十分だ」


 サリオンが母上の方へ行くのを阻止することができなかった。むやみに飛びかかって私がやられるのが目に見えていたからでもあったけれど……そんな理由がなくても動けなかっただろう。


 ピエリが強烈な殺気を私に向けて放っていたのだから。


「急にどうしてここに戻ってきたのかしら?」


「元々は別の方の仕事をしていましたが、そちらが片付いたのでこちらを手伝えという指示を受けましてね」


「指示? 筆頭が?」


「他に誰がいるというのですか? この世で私に指示を下せる者は一人しかおりませんよ」


 ピエリはどこか物憂げに見えた。力がないように見えるというか、意欲が足りないように見えるというか、あるいは疲れているように見えるというか。


 けれど私に向けられた殺気だけは本物だった。


 ……こんな状況を想定していなかったわけじゃないけど、正直実現する可能性が大きいとは見ていなかった。わざわざここへピエリを再び連れてくるメリットが大きくないから。


 魔力の気配を探ってみるとピエリだけでなく他の八賢人も来て騎士団と交戦中のようだ。


 脅威的ではあるけれど、わざわざこの者たちでなくても私たちには容易ではない戦いだった。わざわざ脱獄させた八賢人たちをここへ連れてくるよりは他所へ送る方がより効果的だっただろうに。ピエリの言葉を見ると実際に一度はそうだったようだね。


 しかし理由はどうあれ、こうなった以上は実際に対処すべき現実でしかない。

申し訳ございません。

本日二回の更新をすると申し上げましたが、また急用が生じまして明日に延期せざるを得なくなりました。

度重なる延期、本当に申し上げる言葉がございません。


ある程度作業は進んでおりますので、今回は次の週末ではなく明日すぐに二回の更新をさせていただきます。


読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!

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