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進軍と援軍

「どうしてそんなことを?」


「汝が極端な道を突き進んだことには余の責任もある。立場上、本当の意味で責任を取ることはできぬが、せめて汝の剣と感情を一度は直接受け止めねばならぬと思ってな。つまらぬ自己満足に過ぎぬ」


「確かにただの自己満足なのですね」


 そう言ったものの、国王の行動を軽視してはいない。


 少なくともそこに込められた心だけは真心だということがわかるほどには、かなり交流があった。それに……そんな自己満足だけのために行うには、今の行動が国王という立場に相応しくない。


 単純な感情的な理由だけで自分の危険を招くような愚かな男ではない。


 しかし彼の案配を警戒したところで戦いを避けられる状況でもないし、そうするつもりもない。


 まずは突進と共に軽い斬撃。平騎士程度なら一撃で殺せる攻撃だが、国王には牽制程度にしかならないだろう。


 その瞬間、騎士の一人が割り込んできた。本来なら私の一撃に耐えられなかったはずの彼の剣に国王の結界の力が加わり、強固な壁となって斬撃を阻止した。


「よくやった」


 国王は剣を振るった。


 私に届く間隔ではない。しかし結界兵器の力はすでに周辺一帯に及んでおり、空間を裂く力が刃の軌跡に沿って私を襲った。相当強力な力だったが、それ以上の魔力で押し潰すように結界の力自体を粉砕した。


 前面に騎士が立ち、国王が結界の力で支援する。そんな構図が続く――と思った瞬間だった。


「ぬぅっ!」


 突如として目の前の騎士の姿が国王に変わった。大剣の刃が目の前に迫ってきた。


「陛下!?」


 ……どうやら配下の騎士と協議した戦術ではないようだな。


 使われたのは単純なものだ。結界内の位置を自在に変えられる力で騎士と自分の位置を入れ替えたのだろう。


 軽く剣を受け止めると、国王はさらに力を込めて押し寄せてきた。刃と刃がしばし膠着状態となり、その向こうから国王の豪放な笑みが見えた。


「直接向き合わねば剣を受け止めたとは言えまい」


「とはいえ国王が直接相手に向かっていくのはいかがなものかと私は思いますが」


 応じながら剣を振るう一方で、気配の感覚だけで周囲を確認した。


 他の八賢人たちも騎士たちとの戦闘に突入したようだ。騎士たちは今国王と共に戦っている一人を除いて全員が八賢人たちとの交戦に入った。


 戦況自体は八賢人たちの優勢か。でも騎士たちは頭数だけはこちらより多く、熟練した有機的な連携で戦力差を補いながら持ちこたえていた。そのため八賢人たちも騎士たちを圧倒できずに時間が引き延ばされていた。


 この場で最も強い私に他の奴らまで加勢するのを防ごうとする動きのようだね。最善の判断だが……あくまでも彼らにある選択肢の中の最善に過ぎない。


「ぐっ!?」


 瞬間的に力と速度を引き上げて強い斬撃を放った。国王を守るために全力で飛び込んできた騎士が胴を深く切られた。


 国王が慌てて結界の力で騎士の体を引き寄せて死亡には至らなかったが、当面の戦闘続行が困難なほどの重傷だった。


「治療に専念せよ。余がピエリ・ラダスを食い止める」


「へ、陛下……いけませ……!」


 騎士は国王を制止しようとしたが、国王の足を掴んで引き留める力さえないようだった。


 国王は真剣な顔で大剣を振るった。あらゆる強化効果を持つ結界が国王の戦闘力を数十倍に向上させ、私の力を低下させたり物理的に相手を阻止して攻撃する様々な力が私を攻撃した。


 以前の私なら圧倒されたほどの力だったが、今の私には大きな脅威ではなかった。


「陛下個人に恨みはありませんが、陛下の死は私にとって非常に大きな助けとなるでしょう。ですからその首、頂戴します」


 ――蛇形剣流奥義〈一頭竜牙〉


 斬撃の嵐が竜の形象を描きながら国王に浴びせられた。


 その瞬間王城から驚異的な魔力が噴き出した。


 ――バルメリア式結界術奥義〈最後の城〉


 王城自体が一つの巨大な魔道具であり結界の起点。その力を最大限に活用した防御壁は私の〈一頭竜牙〉さえ一度は防ぎきれるほど強かった。


 もちろんその一度が限界で、私の前では大きな時間稼ぎにもならない。しかしたった一度、刹那の時間さえもこの程度のレベルの戦いでは大きかった。


 ――アルカ式射撃術〈願いの星〉


 突然開いた転移門から強力な矢が飛び出してきた。


 すぐさま反応して矢を払い除けたが、その瞬間矢が別の術式に変わった。


 ――白光技〈絶望の檻〉


「……おや。面白い援軍ですね」


 展開された魔力が格子のような形となって私を囲い、魔力の格子から伸びた鎖が四肢を拘束した。魔力を封印し肉体を束縛する強力な制圧の術式だ。


 もちろん今の私には些細な足枷にすらならない出力に過ぎなかった。私が何でもないように四肢を動かすだけで簡単に砕けるほど。


 別の転移門が開き、可愛らしい少女が飛び出してきた。さっきの矢を放ったアルカ・マイティ・オステノヴァだった。それに敷地のあちこちから転移門が開き、見覚えのある顔ぶれが続々と現れた。


 その中でも私のすぐ後ろから私に剣を振るう騎士がいた。


「ふむ。久しぶりですね、ジェリアさん」


「こんな状況でも平然としている度胸は認めてやるぞ」


「度胸以前の問題なのです。脅威を感じる要素がありませんので」


 ジェリアさんの重剣を軽く受け止め、逆に力で押し返した。ジェリアさんの激しい抵抗が感じられたが、私には片腕だけで勝てる力に過ぎなかった。


 現れた面々は……すべてテリアさんの協力者たちか。アカデミーでもよく一緒に行動していた友人たちに国王の息子でもあるケイン第二王子、そして私がよく知らない何人かの顔ぶれもいた。


 よく知らないとは言っても安息領の情報網で把握しておいた人間関係内の人物たちだな。


 一見すると国王に援軍が到着して私が不利な状況のようだが……私は思わず笑みを漏らした。


「これは、どうやら思ったより私の方に余裕がある状況のようですね」

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