八賢人の行方
長い間ぼんやりとした意識が続いていた。
全く意識がなかったわけではない。しかし私はどこにいるのか、どんな状況なのかわからなかった。頭の中が曖昧に霞んだ状態でただぼんやりと何もない虚空を見つめるだけで、時間を数えようという考えさえ頭に浮かばないままだった。
過ぎ去った歳月が何年なのか、それとも僅か数秒なのかもわからない状況で、突然頭の中に流れ込んできた声が私を目覚めさせた。
[ピエリ・ラダス。そろそろ目覚める時間よ]
聞き取りにくい声だったが、この話し方と妙な感じは馴染みがある。聞き取れないはずがない。
「……筆頭ですか?」
[そうそう、記憶はしっかりしているみたいねぇ]
その言葉を聞いた瞬間、突然意識が急浮上し頭の中がはっきりした。相変わらず目の前に見えるものは何もなかったが、私がどんな状況でどんな経緯でこうなったのかがはっきりと思い出された。
「私は今封印されているのですか?」
[そう。今封印を解除しているところだよ。ついでに話しかけているんだ]
「……オステノヴァの封印は素晴らしいものですね。今の私は規格外の力を手に入れたという自覚がありますが、その私を完璧に封印するとは」
[感心しているのにごめんだけど、封印が解けたらすぐに仕事をしてほしいよ]
筆頭はそのようにいきなり私がすべきことを説明してくれた。
聞いてみれば納得する一方で、呆れたという感想も同時に湧いた。
「人の扱いが荒いですね。それより私が封印されている間に多くのことがあったようですが」
[封印が一日や二日前の話じゃなかったからねぇ。まぁ、とにかく今は仕事さえうまくやってくれればいいんだよ]
「頑張ります」
意識に続いて、だんだんと感覚が戻ってき始めた。
特に私自身の中に眠っている巨大な力が実感として感じられた。あのフィリスノヴァ公爵と互角に戦えるほどの力。たとえその戦いを続けていたら持久力の差で敗北していただろうが、武力そのものは奴と互角だったというだけでも凄まじいことだ。
戦いの最中にそのまま封印されたため多少消耗した状態……だろうと思った瞬間、外部から膨大な魔力が流れ込んでくるのが感じられた。私の力をさらに増大させるものではなかったが、消耗した魔力が瞬く間に回復された。
[頑張ってほしいという意味で贈る贈り物よ]
「ありがとうございます。精一杯努めましょう」
そう言った直後に目の前が突然明るくなり、両足が大地を踏む感触が感じられた。封印が解かれたのだ。
目の前に広がった光景は……懐かしいほど馴染み深く、憎らしい場所だった。
封印の中で聞いた指示を再び思い出す。
『これからキミを含めて、逮捕されていた八賢人たちを全員タラス・メリアの王城に送る。存分に暴れてくれればいい。バルメリアの国王を殺せればなおさらだよ』
王都タラス・メリアでも最も重要な場所、一度も侵入を許したことがなかった無敵の要塞――バルメリア王城。
筆頭でさえも私たちをそのまま王城の中に突っ込むことはできなかったようだ。私たちが降り立ったのは王城の正門のすぐ前だった。
王城全体が絶対的な防御結界で守られているが、通行を担当しなければならない門はほんの少し弱い。かろうじて存在する弱点と言えるだろう。
私と一緒にここに来た八賢人は四人。筆頭とアルバラインの姉弟を除いた全員だな。
「ここは……」
その中でラースグランデが戸惑ったように呟いた。
他の八賢人たちも状態は似たようなものだったが、私は奴らをきれいに無視して剣を抜いた。
――蛇形剣流奥義〈極牙〉
巨大な一撃が王城の防御結界を一発で叩き割った。
「何を!?」
「皆、来る途中で筆頭の指示は聞いただろう。無駄に相談する時間などいない。来た以上は確実に暴れるのが我々の役割だ」
その言葉を投げただけで八賢人たちの表情が変わった。さすが数多の修羅場をくぐり抜けてきたベテランたちだ。
その中でボロスだけは少し違ったが。
「クハハ、いいじゃねぇか。ちょうど最近運動不足で体がなまってたんだよ。さぁ、思いっきり暴れてやろうぜ!」
戦闘狂のボロスらしい言葉だな。
私が先頭に立って崩れた城壁を踏んで中に進入した。斬撃が崩したのは王城の敷地を包む外壁だけだったが、最も堅固な壁であり防御結界の起点でもあった。
もちろん内側にも結界をはじめとする防御体系は隙間なく整えられている。その中に主要人物たちがいるだろう――と、常識的にはそう考えるだろうが。
「来たか。本当に来るかどうか半信半疑であったがな」
宮殿の前に一団の人々がいた。まるで私たちを待っていたかのように。
長い間騎士団に身を置いていた私だからこそもしかしたらと予想はしていたが、実際に見ると呆れてしまって思わず口を開いた。
「一国の王がここで何をなさっているのでしょうか?」
「それを本当に知らずに聞いているわけではあるまい。他の者どもはともかく、貴様は長い間騎士であったからな」
バルメリアの王はすでに始祖武装『覇王の鎧』を身にまとったまま一行の先頭に立っていた。
彼の後ろにいる者たちは王城を守る騎士団の兵力のようだが、数は多くない。おそらく今王城に駐屯中の部隊だけを急いで集めたのだろう。
その騎士たちの指揮官と思われる者が困ったような顔で王を横目で見る気持ちには少し共感できる。……私もあの王のあんな点のせいで騎士時代にかなり苦労したからな。
しかし王のそのような特性を知っている者は私たちの中では私だけだった。
「あぁ? 王様ってヤツが何してんだ? 命が惜しくねぇのかよ」
「おい、待っ――」
ボロスが鼻で笑いながら前に飛び出した。
五人の勇者の末裔である王家と四大公爵家は王侯貴族らしからぬほど個人の武力も圧倒的だ。その事実はボロスも知っているだろうが、それでも王という者の物理的な力がどの程度なのか気にする必要がないと思ったのだろう。
それが間違いだと、バカめが。
「へたくそな若造めが」
ボロスの巨大な魔力が凝縮された槍を、国王は何でもないように左手で掴んだ。
その腕が下に振り下ろされるとボロスはあっけなく簡単に床に叩きつけられた。
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