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敵たち

【とにかく、奴にとっては最善の状況だと言えるよね。でも奴自身を除いたあれこれは『バルセイ』とは差が大きい。だから何をするか予想しづらいよ。今の安息領の動きもそうよ。……ただ言えることが全くないわけじゃない】


『隠された島の主人』の語調には変調された声の向こうからも感じ取れるほど不快さが宿っていたけれど、目の前の障害物に挫折した様子は全くなかった。


【まぁ、一番わかりやすいのは安息八賢人に関することだと思うけど。この前安息領があちこちで暴れまわって安息八賢人の何人かが逮捕されたでしょ? あれを放っておく奴らじゃないってことは、あんたたちもわかるはずよ】


「救出作戦でもするということですか?」


【おそらくね。残りの八賢人をはじめとして戦力を集めているみたい。特にすでにラスボス化したまま封印されているピエリは奴にとっても惜しい戦力だと思うし】


 そうね。集まった戦力で他の事を起こすこともできるだろうけど、逮捕された他の八賢人と封印されたピエリを奪還することが最大のリターンを得られる方法だという点には私も同感だ。


『隠された島の主人』は私の考えを読んでフンと鼻で笑った。


【考える頭が壊れていないようで何よりね。とりあえずそれ以外にも安息領が何かを狙っているような気配はあるけど、戦力を集めることほど露骨なものじゃないからまだ私も詳細は把握していない。……そして、実は今日の本題は安息領に関することじゃない】


『隠された島の主人』がそう言うと手を広げた。掌から流れ出た魔力が立体映像を描き出した。


 これは……まるで軍隊の旗のような紋様が幾つか互いに戦っているような様相だった。


 いや、ようななんてじゃないみたい。


【そろそろ五大神が動くよ】


「五大神が? どういう意味ですか?」


【五大神教が最近神託を受けてあんたたちと接触したでしょう。あの時はまだ微温的だったけど……状況が急変した。そろそろ奴らも本格的に行動に出るつもりよ】


 そういえば五大神教の五つの宗派のうち『光』はお姉様に好意的で、残りは敵対的だと聞いた。正確にはお姉様というよりもお姉様と協力するこの邪毒神にだ。


 どんな状況なのかはわからないけど、五大神教が本格的に動くというのは結局この邪毒神のせいじゃないかな?


【笑わせないでよ。これは私とは違う。さっきも言ったけどテリアのせいで筆頭の目標が大きく進展したからよ】


「責任を押し付けているのですか?」


【一人勝手に決めつけるのは構わないけど、それで状況を台無しにしでもしたらあんた自身が後悔することになるよ。だから判断はしっかりしなさい】


『隠された島の主人』が魔力の立体映像を操作した。映像が示す形象が変わった。


 五つの光と一人の人のシルエット。光はそれぞれ五大神教の宗派を象徴する紋様の形を取った。人間のシルエットは特に誰かを表す外見的特徴はなかったけど、顔に何か微妙に粗末な人の顔の絵が貼り付けられていた。


 ……あれもしかしてお姉様?


【五大神の奴らはすでに内紛も辞さない覚悟よ。どちらも引き下がらないでしょう。その争いに巻き込まれる信者たちは、まぁ別に可哀想とは思わないけど……それで奴らもあんたたちもかなり苦労することになるよ】


「五大神教は宗派は違っても皆同じ理想と目標を持って進んでいくと聞いていました。そんな彼らが内紛だなんて……」


【それは五大神が同じところを目指していたからに過ぎない。でもすでに彼らの道はずれてしまった。そしてどちらも引く気はなく、自分を支持する宗派を動かしてでも意思を貫徹する勢いよ】


 意思を貫徹する。


 その言葉の響きがあまりにも不吉で、私はゴクリと唾を飲み込みながら拳を握り締めた。


 ここで『隠された島の主人』を相手に緊張しても仕方ないとわかっているけど、これは結局お姉様と私に直接関連する話。いい加減に聞き流すわけにはいかない。


 続いて流れ出た言葉は私の予想通り、いや、ある意味では予想以上だった。


【まぁ、少なくとも五大神教はあんたが言ったとおりに生きてきた。実在する神が強力な権威と神託で影響力を行使し、時には実際に力を振るうまでする環境である以上、宗教が堕落する余地があまりなかったからね。でもそれゆえに彼らは五大神が成す調和が永遠に続くと信じて疑わなかった】


 小さな鼻笑いとともに笑い声が漏れ出た。五大神教を嘲笑っているのか、それとも五大神を嘲笑っているのかはよくわからなかった。


【それが間違いというわけじゃないよ。元々五大神は互いに調和を保ちながら世界を支える役割だからね。自分たちで反目し敵対するのは職務怠慢を超えた破綻よ。五大神教の奴らもそんなことが実際に起こるとは思いもしなかっただろうね】


「どうして……五大神がそこまでするんですか?」


【まぁ、そこにはいくつか理由がある。その中には筆頭の影響で言っても聞かないこともあるしね。私が確実に言えるのは……そのいくつかの理由の一つが私だということくらいよ】


 その言葉は結局事態の原因にある程度寄与したってことじゃない。


 そんな非難の心を込めて睨みつけたけれど、『隠された島の主人』は軽く肩をすくめることで私の視線を受け流してしまった。


【『光』以外はみんな頭が固いからね。私が邪毒神だという理由だけで敵対するんだよ。もちろんそれは安息領の方へも同じことだけどね】


「『光』は違うということですか?」


【正直に言えば『光』は昔から私の協力者だったから】


 これはまた何の突発発言?!


 五大神のうちの一人が邪毒神と協力関係だなんて寝耳に水だよ。


 でも当の本人は驚愕する私を嘲笑うかのように笑うばかりだった。


【他の奴らは昔からそれが気に入らなかったようね。でも私や『光』に直接文句を言う勇気はない間抜けばかりだった。でももはや傍観できない地点まで来てしまったから、結局強硬な行動に出たというわけよ】

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