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不明な意図

 テリアのラスボス化が解除され、一度気を失っていた彼女が目覚めた直後。


 ボクはテリアの頭をきつく締め付けていた手を離したが、依然として鋭い眼差しを彼女に向けていた。ボクだけでなく、他の人々からも厳しい視線が注がれていた。


 テリアはこういう時いつもそうだったように、あわわわとしていた。


 まぁ、正直テリアがつまらない理由で内密にしていたとは思わない。単に心配をかけたくないという理由で一人で抱え込んでいたことについてはすでに前に叱られていたし、その後はそういう態度を取らなくなったのだから。


 だがそういう気持ちが全くなかったわけではないだろう。


「……アルカ以外には事前に知られてはいけないって思ったの。アルカにも直前まで知られないよう資料を加工したし」


 テリアがようやく口を開いた。


 依然として戸惑いと申し訳なさそうな様子が歴然としていたが、今は心を整理したようで一段と落ち着いていた。


「なぜだ? 君のことだ。感情的な理由だけではあるまい」


「そうよ。『バルセイ』で関連する部分があったのよ」


 テリアは眉をひそめた。何というか……これから話す内容が自分も気に入らないような様子だ。


「隠しルートでは安息領が企む行為を事前に察知して対策を立てる道もあったの。でもその方法を選べば安息領の行動も変化してしまうの。いろいろな試みができるけれど、そのすべてが失敗に終わって……最初の意図通りに事件を起こした後にラスボス戦を行って解決するのが唯一のハッピーエンドだったわ」


「安息領もかなり手間をかけたようだな。ならばラスボス戦でも介入があったと思うが、今回はそんな気配がなかったぞ」


 今回のラスボスがテリアだったことは想像もしていなかったが、それとは別にラスボスが現れるということ自体はすでに知っていた。それに対する備えもしていた。


 もちろん秘密裏に進めるには規模が大きすぎたし、安息領の介入を想定して騎士団もかなりの数が配置された。安息領が出没した場合には報告が来るようベティスティア様の手配もあった。


 しかし安息領は気分が悪くなるほど静かだった。


 ここに攻め込んでくることはなかった。かといって騎士団がここに全力を投入した隙を狙って他の場所で暴れることもなかった。文字通り、ラスボス戦を進行している間、安息領は影も形も見えなかった。


『バルセイ』ではラスボス出現の原因となった時空亀裂の暴走を安息領が引き起こしたと聞いたが、この現実ではそれさえもボクたちが任意に引き起こした。それまで考えると安息領は文字通り何もしなかったのだ。


 テリアは頷いた。


「『バルセイ』でも同じだったわ。ラスボスの可能性を回避しようとすれば必死になって妨害工作を繰り広げたけれど、ラスボス戦を行うルートに進むと安息領はほとんど介入しなかったの」


「奇妙な話なのね。まるで……〝聖女〟を暴走させさえすればその後はどうでもよいというようね」


 ベティスティア様の言葉だった。ボクも、そして他の人々もその言葉に同意した。


 テリアは眉間にしわを寄せた。ベティスティア様の言葉を否定してではなく、同意するからこそ一層不可解だという意味の表情だった。


「安息領の意図は私にも分かりません。『バルセイ』にも出てこなかったし、推測できるような手がかりもほとんどありませんでしたから。〝聖女〟の暴走を誘導したのは確かですが、肝心の切り札まで消費して暴走させた〝聖女〟が浄化されるのを防ぎもしなかったんです」


「単に暴走した〝聖女〟の力で何とかなると楽観していた、ってのはどう?」


 シドの言葉だった。


 一見軽く見える発言だが、一理ないわけではない。暴走したテリアの力はボクたちがとても太刀打ちできないレベルだったのだから。


 正直、ボクたちが重傷を負った程度で済んだのは、ひとえにラスボステリアが余裕を持っていたからだった。どういうわけかアルカが気を失った後は本気を出すと暴れたが、実際のところ魔力が不安定だった上、テリア自身もどこか気が散っているような様子だった。


 そんな彼女にさえ、ボクたちは何もできなかった。勝っても脱力して死んでしまうほど力を絞り出し、途中からは本来安息領を警戒すべき騎士団部隊と魔導兵団の遠距離支援まで動員した。それでもラスボステリアにまともな有効ダメージを一度も与えられなかった。


 正直、途中からボクが侵食技と神獣の力まで総動員して防御態勢を敷かなかったら、間違いなく誰かは死んでいた。いや、百パーセント全滅だった。全員がどうにか生き残ったのは僥倖と奇跡が重なった結果でしかなかった。


「……正直さっきのテリアの力を見るとそれも一理あるね。でもだからといっても万一に備えなかったのは無謀すぎるようにリディアは思うよ。今まで方々で同時に手を打っていた奴ららしくないんだよね」


「むしろそのような絶対的な強者を出してきたからこそ、勝機を固めるためにもっとひどいことをしても不思議ではないね」


 リディアとケインの言葉だった。


 ふむ。テリアも答えが出ないといった表情で、この問題については考えてみても仕方ないだろう。


「とにかくそれで皆には秘密にしたの。もちろんこれまで全部教えて対策を立てる方法もあったでしょうけれど、余計なことをして些細な部分でしっぽを掴まれたら困ったから。もちろん時空亀裂を私たちが故意に暴走させるのも安息領を刺激する可能性があったけれど……」


「それは少なくとも奴らが望むことをボクらがあえて成し遂げてやる形だったからな。だから介入しなかった可能性もあるだろう」


 ボクはため息をついた。


「正直君の判断には説教したい部分が多いが……少なくともそれなりの理由があったということはわかった。最善だとは思わないがな」


「ありがとう」


 テリアはそう言いながら、今思い出したという顔で〈浄純領域〉を展開した。傷に残留して再生を抑制していた邪毒が消えた。ずっと楽になったな。


 そろそろ場を収めようかと思っていたところ、今まで黙っていたアルカが手を挙げた。


「あの……気になる部分があります」

昨日お知らせしたとおり、今週末は両日とも二回ずつ更新いたします。


読んでくださってありがとうございます!

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