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反撃と機会

 ――テリア式邪術〈怒りの態勢〉


 同時に同じ邪術を使いながら、私と『私』はお互いに向かって突進した。


 喉の奥から込み上げてくる血を必死に飲み込みながら剣を振るった。〈怒りの態勢〉が生み出した莫大な魔力に自分の力を加え、〈五行陣・金〉と〈驕慢の視線〉の権能でその力を極限まで磨き上げ、そしてまた世界に貫徹する。


 自分で考えても完璧だと自賛できるほどの斬撃が『私』の斬撃を正面から相殺した。


 目を見張るほどの成果だったけれど、その代償も同時にやってきた。


「げほっ」


 目の前が赤く染まり、口から血が溢れ出た。赤く染まった視界さえ揺らぐほどの激しい頭痛と全身が引き裂かれるような激痛が私を襲った。


 全身に魔力を巡らせることさえ上手くいかず、耐えきれずに片方の膝が崩れ落ちてしまった。


【たった一撃でその有様とは。分不相応な力に手を伸ばしたからそうなるのですわ】


『私』は平然と嘲笑いながらゆっくりと私に近づいてきた。邪毒に染まった剣先が片膝をついてしまった私の顎を持ち上げた。


【その中でも片足だけでも踏ん張り続けているのは褒めてあげましょう】


「余裕を見せるなんて、随分と舐められたわね……!」


【実際に舐めるに値する相手ですからね】


 まぁ、否定はできないね。


〈怒りの態勢〉は一度魔力を生産してしまえば発動を解除しても既に生産された魔力が消えることはない。その特徴を利用して一瞬だけ発動しただけなのに、〈驕慢の視線〉との同時発動が重い代償として私を襲った。さらに邪術とは違うけど〈五行陣・金〉まで同時に使用するのも私には荷が重かった。


 しかし本体の力だけでも化け物のようなのに邪術の同時使用まで何ともないようにやってのける奴を相手にはこれくらい無理をしなければ勝つことができない。いや、無理をしても勝算が乏しい。


 それでもやるしかない。


 ――『浄潔世界』専用技〈浄純回帰〉


 私の顎に触れている剣先を通して浄化の魔力を流し込んだ。


 しかし『私』は既に予想した手だというように莫大な魔力で浄化の魔力を押し返した。邪毒を最大限排除したのは『浄潔世界』の力を知っているからだろう。


 しかし今の『私』なら本質的に邪毒が全く混ざらないことはない。


 結果的に『浄潔世界』の魔力が微弱な邪毒を浄化しながら私の力に変換し、それを原動力にさらに押し進めた。微弱とはいえ比率がそうなだけで、絶対量自体は決して少なくない魔力を継続して奪えば結局力勝負が逆転するのは一瞬だ。


『私』はイライラしたように舌打ちしながら剣を捨てた。神妙な魔力操作で『浄潔世界』の魔力を剣に押し込んだ直後の行動だった。


 そのため体内に侵入はできなかったけれど、瞬間的に『私』が剣を捨てさせる成果があった。


「はあっ!」


【拙いですわね】


 苦痛の後遺症が残る体を魔力で無理やり動かして剣を振るった。けれど『私』は残り一つの剣で軽く斬撃を受け止めた。


 しかし次の瞬間、『私』は眉をひそめながら私の剣を弾き飛ばした。


「あら、せっかくなら力比べで私を圧倒してみたらどう?」


【そんな野蛮で品のないことをするつもりはありませんもの】


 口ではそう言っているけど、実際には『浄潔世界』の力を警戒しているだけだ。今の私は剣に『浄潔世界』の魔力をたっぷり乗せ、刃が触れるたびに注入して『私』を浄化しようとしているのだから。


 でも『私』は圧倒的な技量と魔力で私の剣撃を素早く受け流し、むしろ反撃で私の体に傷を累積させていった。残留する邪毒が傷の再生を妨げた。本来なら『浄潔世界』の力で邪毒ごと浄化したはずだけど、『私』の〈驕慢の視線〉が私の浄化力を抑制して力を成立させていた。


 私の剣が大きく弾き飛ばされ『私』の剣がその隙を狙って動く瞬間、私はこっそり準備しておいたものを発動した。


 ――テリア式邪術〈色欲の姿態〉


 すべてを私の強力な味方にするカリスマの権能。


 たった一人を私の操り人形にする〈怠惰の剣〉とは違い、周囲すべての心を洗脳して味方にする能力。一挙手一投足を具体的に制御することはできないけど心から従わせる能力であり、味方を超強化する力も持っている。


『私』は自分の力で〈色欲の姿態〉に抵抗したけれど、ほんの少しの間剣が止まった。


 その些細な隙を些細でなくする一撃が横から飛んできた。


 ――アルカ式射撃術『浄潔世界』専用技〈恩恵の翼〉


 アルカがしばらく支援射撃をしなかった理由。私がこっそり下した指示通り『浄潔世界』の魔力を大量に集めて凝縮しながら準備していた一撃を今発射したのだ。


『私』は知っていても力で対処できると思って放置したのだろうが、〈色欲の姿態〉によって一瞬体が固まってしまい対処できなかった。さらにアルカの力は〈色欲の姿態〉の権能でさらに強化された。


 その結果強大な浄化の矢が『私』の胸に深く突き刺さった。


【くっ……あああああ!?】


「きゃあっ!?」


『私』の体から雪崩のように莫大な邪毒と魔力が猛烈に噴き出した。それが強力な物理力となって近くにいた私を吹き飛ばした。


 アルカが集めて凝縮した浄化の力が〈色欲の姿態〉でさらに強化された一撃。邪毒獣さえ一撃で浄化できるほど強力な浄化の矢だった。しかしその力でさえも『私』を一度に浄化することはできなかった。


『私』は猛烈に力を噴き出しながら抵抗した。アルカの矢はその中でも燦然と輝きながら邪毒を消し去り、消し去った邪毒は『浄潔世界』の権能で浄化の魔力となって再び矢の力を大きくした。


 しかし激烈な勢いで邪毒を消し去っていく矢でさえも『私』の圧倒的な力を受け止めきれなかった。矢の光彩が徐々に弱まり邪毒に汚されていくのが感じられた。


 しかしそれは非常に大きく露骨な隙だった。

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