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決着

 ああ……結局爆発しちゃったわね。


 大声で叫びながら突進するリディアを見た瞬間、私はため息をつきながら額に手を当ててしまった。この時点で勝利は決まったも同然だけど……ディオスが死なないことだけを祈ろう。


 リディアはいつの間にか『野性の爪』と『青いワニ』を両手に持っていた。『青いワニ』がディオスの防御を無力化し、『野性の爪』がまるで獣の爪のように様々な魔力の斬撃を吐き出した。それに対抗してディオスは〈遊歩道〉と〈高速道路〉で応酬した。


「この……!」


「死んじゃえ!!!」


 ディオスが槍を突き出した瞬間、リディアは爆発で向きを変えて彼の首筋をナイフで斬り下ろした。それは首筋から出た鋼刃の群れに阻まれたけれど、ナイフの刃が爆発して鋼刃を壊した。少しだけどディオスの首筋に傷ができた。


 リディアは距離を気にせずむやみに〈爆炎石〉をまき散らし、至近距離で乱暴にナイフを振り回し続けた。


 狂暴な勢いにディオスは多少当惑しているようだった。それでも落ち着いて攻撃を受け流すのを見ると、それでも騎士科の上級生らしく実力はあるようだね。


 しかし、その姿がリディアの怒りをさらに煽った。


「死! ね!!」


 ――『アーマリーキット』具現兵器・近接炸裂型マチェテ『灰色の猿』


 リディアは『青いワニ』を妙に機械的なマチェテに変えた。そのようにマチェテとナイフで猛烈に攻撃を浴びせる姿はまるで興奮した猛獣のようだった。それに『灰色の猿』は単なる刀ではなかった。


 ドカンとマチェテから爆発が起こった。


 機関部の付いた柄に〈爆炎石〉を装填し、それを消耗して強力な爆発の斬撃を放つ能力。マチェテを振り回すたびに爆撃を飛ばせばディオスの盾が耐えられなかった。


 しかもリディアは姿勢や大地に全くこだわらない。


 姿勢さえ整えないまま、ただ爆発を利用して飛び回り、その一方で小さな体を利用して隙間に突っ込んだりした。それに対応するディオスもなかなかだったけど、どんどん速くなるリディアに少しずつ隙を突かれていた。


 その途中、リディアは〈爆炎石〉をディオスの目の前に投げた。


「!?」


 文字通り目の前で爆弾が爆発した。まさに殺す勢いだった。


『鋼鉄』の保有者らしくディオスの防御は非常に硬かったけれど、それでも少しずつ傷が増えていた。リディアもディオスの反撃や自分の爆発の余波で傷が増えてはいたけど、彼女のテンションはそれと関係なくどんどん上がった。


「ハハハハハ! あっはははははははは!! 爆発しちゃえ! 爆発しちゃえ! 爆発して死んじゃえーーーー!!!」


 ああ……もう爆弾をやたらにまき散らしているわね……。


 その様子を見守っていたアルカとネスティも混乱気味だった。


「リディアお姉さん……ど、どうしたんですか?」


「お嬢様がおかしくなった……」


「まぁ、欲求不満だったのでしょ。今までディオスに押さえつけられてきたからね」


 リディアは実際、火と爆発が好きだ。そんなリディアが長い間虐待されてストレスがたまり、興奮するとそのストレスが爆発して気違い爆弾魔になってしまう。今のように。


 それでもゲームで暴走した姿に比べれば、今はむしろマシだ。


 ……私の傍にいる二人は全然そう思っていないようだけどね。これだけは私も何もできない。いい加減にしてね、リディア。


 


 ***


 


「はははははははは!」


 死ね! 死ね! 死んじゃえ!!! 心の中で、そして口で何度も叫びながら刀を振り回した。


 心が沸き立つ。


 すっきりする。腹が立つ。気分が良い。イライラする。何よ、なんでそんな顔をするの。あっけに取られた? クソクラエよ、私をこうさせたのはお前だろクソヤロウが!! 気持ちいい! 全部吹き飛ばしたい、爆発しちゃえ、爆発しちゃえ、全ッ部粉になっちゃえ!!


 めちゃくちゃに入り混じった感情は整理すらできず、ただ興奮という形で爆発した。


「クソみたいな顔どけ!!」


 こう叫ぶ私の顔が女の子らしくないという自覚はある。


 しかし……私をこのようにした張本人がそんな顔を見セルナよ!!


「しきりに! もがか!! なくて!!! 死ね!!!!」


「お前が死ね!!」


 ――鋼鉄槍道〈トンネル〉


 ――『灰色の猿』専用結火剣術〈紅蓮の鎖〉


 すべてに穴をあける突きと連鎖爆発する斬撃が激突した。連続した爆発が突きの勢いを殺し、強力な突きが爆圧を霧散させた。


 二つの技が相殺された瞬間、『灰色の猿』に残っていた最後の〈爆炎石〉を発動させた。爆発と共に槍が弾き飛ばされ、クソヤロウの胴体が露出した。そこに向かって『野性の爪』の刃を構成した魔力を全て解放した。


 ――『野性の爪』専用結火剣術〈暴君の爪〉


 巨大な斬撃の爪がクソヤロウを襲って爆発を起こした。暴煙の向こうでクソヤロウの魔力が距離を広げるのが感じられた。


 追いかけようとした。しかし、その前に全身から感じられた激痛に息を吐きながら片膝をついた。座り込まずに耐えたのは、純粋に片意地だった。


「うっ、あ……!?」


 痛い!!


 クソヤロウにやられた傷よりも、自分の爆発に自ら当てられた傷や無理に自分自身を繰り返し〝発射〟しながら蓄積したリバウンドが一気にきた。


 いや、今まで興奮で感じなかっただけで、ダメージは蓄積し続けたんだろう。私も知らないうちに臨界点でも越えてしまったのかしら。


 そんなことは私の知ったことじゃないのよ!!


 足に力を入れる。この不愉快な気持ちまでいっぱい込めてクソヤロウの顔をビリビリと引き裂いて……。


[リディアさん]


「!?」


 一瞬、すべてが凍り付いた。


 まるで氷水をいっぱいかぶったような感覚だった。それで冷静を取り戻す……ことはできなかった。ただめちゃくちゃに入り混じって爆発する感情に戸惑いが追加されただけ。しかし、そのおかげで頭に考えということをするだけの余白ができた。


 それがテリアさんの思念通信であることにようやく気づいた。


[落ち着いてください。そんなに無理しなくてもいいですわよ]


「でも!」


 思念通信で返信する余裕さえなかった。それでもテリアさんは私の反応を予想したかのように少し笑いながら話した。


[ふふふ、大丈夫ですの。ディオスをよく見てね]


 よく見てって、何を?


 テリアさんの声のおかげで、クソヤロウを観察できるほど頭が冷めた。


 傷は私より少なかったけど、魔力の相当量を投資した鋼の羽毛がほとんどなくなった。一応はかなり力を消耗したようだね。しかし、体調は私よりずっと良かった。


 やっと私はテリアさんが言いたいことが何なのか気づいた。


 私の『結火』は一度作った宝石は永久に維持される。そして今まで使った〈爆炎石〉と魔弾も全てあらかじめ用意しておいたもの。自分の魔力を直接使ったのは身体強化や即席で新たに作った〈爆炎石〉、そして武器を強化する魔力ぐらい。


 つまり、クソヤロウは怪我は少ないけれど魔力が底をつく直前で、私は体はめちゃくちゃだけど魔力は十分だ。


「ムカつくぜ……」


 その時、クソヤロウが陰惨な声を出した。しかも一度も見たことのない血走った目で私を睨んでいた。


「俺が、俺が今までどれだけ力を入れたのか……! 貴様なんかがそれを横取りするというのか!」


「気違いヤロウ。何言ってるの」


 ムカムカする。今にもあの舌を抜いて破ってしまい、目に余る目をナイフで切り取ってカラスに投げてあげたい。そうでないのは、純粋にテリアさんが私の暴走を望んでいないからだ。


「力を入れる? 一人で爵位に目がくらんで妹を虐待したのが? 気違いこと言わないで! キサマが失うものがあるなら、それはキサマがクズだからよ、このクソヤロウが!!」


「貴様なんかが何が分かるんだ!!」


「興味ない! クズの考えなんて!! キサマを今バラバラに破らないのが私の最後の慈悲よ、外道め!」


 もう聞きたくもない。クズの欲のせいで私がそんなことをされて生きてきたということも腹が立つのに、汚い口で戯言をしゃべるのをずっと聞いていたら私がおかしくなりそう。


 ――『アーマリーキット』具現兵器・超長距離狙撃小銃『鷹の目』


 長い射程距離と特殊な魔弾を支援する狙撃小銃を具現する。


 そして今装填しているのは戦術魔弾〈唐変木のおじさん〉。私が持っている魔弾の中でも最強の突破力の弾だ。


 一方、クズヤロウも黙ってはいなかった。残りわずかの羽毛と魔力を全て槍に集中していたのだ。恐らく残りの魔力を全部打ち込んだ最後の一撃。それでも残りをすべて集中しただけに、魔力量は相当だ。


 私が準備を終える前に先手を打つように奴が先に地面を蹴った。でも……もう遅いよ。


 ――鋼鉄槍道・ダウセニス専用技〈極穿の歩み〉


 ――アルケンノヴァ式射撃術〈常進の一線〉


 貫通と突破に特化した二つの攻撃が正面からぶつかった。


 ガガガガガッとうるさい音と共に魔力が激しく飛び、その余波で周辺一帯が破壊され始めた。破壊はすぐに広がって決闘場全体に影響を及ぼし、コロシアムの壁と結界にまで亀裂を起こした。


「はあああああああっ!!」


 少しずつだけど私の魔弾が押された。


 さすが余力をすべて投入した一撃。今の私の最強の突破技を使ったのに押されるなんて、正直驚いた。


 しかし、私が最後の武器として銃を選んだのは理由がある。


 ――アルケンノヴァ式射撃術〈普及射撃〉


 別の戦術魔弾を装填して撃った。それが先に発射した〈唐変木のおじさん〉に触れた瞬間、まるで氷が溶けるようになって〈唐変木のおじさん〉に吸収された。その瞬間、競合していた魔力が急激に増幅した。


「うっ!? き、貴様……!」


 クソヤロウは歯を食いしばって耐えたけど、今度は私の魔弾が少し優勢だった。このままにしておくだけで終わるだろう。


 でも、そんな結末は気に入らない。


 ドカンと自分自身を再び勢いよく発射した。衝突して渦巻く魔力を突き抜けて奴の横へ。〈爆炎石〉を全身にまとったけれど、暴れる魔力で〈爆炎石〉が壊れ、私の体が裂けて血が流れた。


 正直、すごく痛い。しかし自分自身に虚勢を張るようにその中で耐えた。そして武器を『青いワニ』に変えてクズヤロウのこめかみを狙った。


「!? 何を……!」


「終わりよ」


 ――白光技〈鎮圧弾〉


 射撃後すぐ横に逃げた。魔弾の衝撃と脳震盪でクズヤロウの姿勢が崩れ、〈極穿の歩み〉と競合していた魔弾が奴の右腕を完全に破壊した。奴は悲鳴というより息が漏れ出るようなうめき声と一緒に意識を失った。


 しばらくその姿をぼんやりと眺めた私は、観客席が騒がしくなるのを見てやっと実感を感じた。


 ……勝った。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

バトルがよかった! とか、リディアが勝って嬉しい! とか、とにかく面白い! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークを加えてください! 力になります!

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