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同じ力

 なんて卑怯な! ……と言い返したくなるけど、承知の上でやる奴なので意味はないだろう。


 そんなことより今の状況を打開する方法を考えなければならない。


〈怠惰の剣〉は対象の自我と自由意志を抑制し自分の命令だけに従う傀儡にしてしまう。発動する前なら防ぐことができるけれど、一旦支配が完了してしまえば解除するのが非常に難しい。〈五行陣〉と同等の権能で行う強力な支配だから。


 解除が全く不可能なわけではないけれど、そんな隙を与えそうにもない。


 アルカがまた私に飛びかかってくる瞬間、『私』が嘲るように口を開いた。


【あぁそうでしたわ。私ったら忘れていましたわね】


『私』が指パッチンするのと同時に、突然アルカの魔力がぐっと生き返った。振り下ろされた剣を受け止めたけど重さの格が先ほどとは違った。


 ――『万魔掌握』専用技〈万魔支配〉


 暴力的な力が私の剣に宿った魔力まで一部奪い取るほどだった。


「くっ、こんなことを……!」


『万魔掌握』を封印していた〈嫉妬の鎖〉を解除したのだ。


 アルカを支配したからあえて封印を維持する必要がなくなったからでもあるけど、同時に私に一つの事実を誇示するための目的もあった。


 それは邪術三つの同時使用を私に意識させることだった。


 即ち〈驕慢の視線〉、〈嫉妬の鎖〉、〈怠惰の剣〉を同時に維持していたということ。短時間だったため長時間維持した場合の反動があるかどうかは分からないけど、少なくとも一瞬の使用で負担を大きく感じる様子ではなかった。それをあえて私に誇示したのだ。


「奇襲に使えたはずなのに、なんて悪趣味なことかしら……!」


【もちろんそういう方法も考えましたけれど、私なりに戦略的な活用の余地がありますので】


「分かっているわよ!」


 腕力でアルカを吹き飛ばした直後、魔力で無理やり体を素早く回転させた。振るった剣に『私』の剣が激突してきた。


 瞬間的な応酬は拮抗した。しかしその直後にアルカがまた飛びかかってきたのが問題だった。


 具体的な命令を下さなかったのだろう。アルカの行動は極めて単純だった。もし一対一だったら容易に制圧できただろう。


 もちろんそんな容易な一対一をあえて作る理由がないだろう、『私』の立場では。


「はああっ!」


 剣を大きく振るって巨大な魔力斬撃を放った。アルカだけでなく、別の方向から再び突進してくる『私』まで防ぐために。


 しかし『私』の剣は強力で、アルカの〈万魔支配〉の力も相変わらずだった。


「っ……!?」


 私の斬撃を突き破って突進してきた『私』の剣を防いだ。同時にアルカが別の方向から私に攻撃を浴びせた。


 黄金の眼光を輝かせながらすべての攻撃に対処したけれど、正直言って手に負えなかった。


 すでに私の主敵は同等の権能を使う『私』。一対一でもお互いの権能は拮抗、いや正直言えばごくわずかに私の劣勢だった。そんな状況でアルカまで加勢されれば当然厳しい戦いになるしかないだろう。


〈五行陣・金〉で観測できる〝勝利〟の可能性がどんどん減っていた。アルカの〈万魔支配〉が私を妨害する分、私の力が勝利する確率と可能性も萎縮してしまったのだ。


 普通の二対一ならこの程度は些細な差だっただろうけど、〈五行陣・金〉と同等の〈驕慢の視線〉を相手にする時はその些細さすら致命的だ。


【諦めが遅いですわね。貴方に勝ち目はありませんわよ】


「そんなの、やってみなきゃ分からないの!」


 意地を張る私を『私』は相変わらず嘲笑うだけだった。


【みっともないですわね。アルカ、やりなさいな】


『私』の魔力がアルカに命令を伝達すると同時に、アルカの動きと気配が一変した。


 ――アルカ式射撃術〈ホシクモ〉


 魔矢の豪雨が私を周辺一帯ごと狙った。


 すべての魔矢に〈万魔支配〉の力が宿っていた。それが私一人だけでなく周辺全体を覆うと、めちゃくちゃに混ざった『万魔掌握』の権能が魔力を攪乱した。


「くっ、でさえ苦しいというのに……!」


【諦めれば楽になりますわよ】


「誰が!」


 魔力は攪乱されても私の体が秘めている魔力まで奪われるわけではない。


 すべての魔力を身体と剣の強化に集中して魔矢を斬り払った。そして魔矢の隙間をかき分けるように突っ込んでくる『私』の剣を避けて防いで弾きながらどうにか隙を狙った。


〈驕慢の視線〉に対抗するためにも〈五行陣〉を他のものに転換することはできない。しかし今の状態を維持してもこの状況を打開することはできない。


 それでも大丈夫。〈五行陣・金〉は間違いなく勝利の可能性を照らし出しているし、私自身も〝それ〟が可能だということを初めから予想していたのだから。


 要は『今の状態を維持』しなければいいということ。即ちこの状況を覆して勝利へ向かう道を選べばいいということだ。


「はああああっ!」


 ――天空流奥義〈轟く落雷〉


 技巧も考えもみじんもない、ただ全力で剣を振るうだけの強撃。


 ただ威力だけですべてを語る一撃が『私』を後退させた。その短い隙にアルカに向かって突進して剣を振るった。


 しかしアルカは普段以上に機敏な動きで剣を避け、回避動作をそのまま回転につなげながら魔力剣を作って振るった。


「ふっ!」


 魔力を集中した肘でアルカの剣を叩き落として弾き飛ばし、後ろに回りながら剣を振るった。背後から私を攻撃しようとしていた『私』の剣と私の剣が激突した。


【これを防いでもアルカの攻撃までどう対処するつもりかしら?】


「こうしてよ!」


 アルカがまた立ち上がって突進してくる気配が感じられた。


 それを振り返らないまま、人差し指だけを一本立ててアルカの方へ向けた。


 普段とは違う不吉な魔力が私の指先から流れ出るのと同時に、強烈で圧倒的な頭痛が私の頭を掻き乱した。


 けれどその頭痛は成功の証でもあった。


 ――テリア式邪術〈怠惰の剣〉

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