内面の戦い
――天空流奥義〈万象世界五行陣・木〉
――テリア式邪剣術奥義〈夜虎の牙〉
私たちの最初の一手は、探索と牽制を兼ねた必殺の一撃。
斬撃がぶつかり相殺され、魔力の衝撃波が広がった。しかし私は体を押し出してそれを突破し、『私』は優雅な剣舞を舞いながら衝撃波を受け流した。
今度は至近距離で剣を交えようとした瞬間だった。
――アルカ式射撃術〈ホシクモ〉
無数の魔矢が神妙に動きながら『私』を狙った。私を絶妙に避けて『私』だけを狙う軌道だった。
【ふん】
『私』は片手の剣だけで魔矢を全て弾き返し、残りの一振りで私を攻撃した。単純な突きだったけれどまるで泰山で押し付けるような重さと力が防御した剣ごと私を押し返した。
「アルカ! もう一度よ!」
――天空流奥義〈五行陣・土〉
指示を出すと同時に大量の魔力を撒き散らした。撒かれた魔力はそのまま媒体となって私の支配力を周囲に広げた。
周囲の魔力を私の意のままに制御する奥義。相手の攻撃さえも強奪するほどの力は元々強力だったけれど、今は普段以上にさらに圧倒的な力だった。
その力でアルカが再び発射した〈ホシクモ〉の弾幕を全て奪って操った。私の魔力が加わって魔矢がさらに強力になり、軌道もまた射撃の枠を超えた予測不可能な経路を描き出した。
魔矢を操って私の剣撃を補助する形で攻勢を仕掛けると『私』が眉をひそめた。
【なんと安っぽい手口かしら。それを協攻と思うのですの?】
――テリア式邪剣術〈湖の砕けた月光〉
気品があるが激しい舞いが魔矢と斬撃の攻勢を受け止めた。こちらは二人での協攻なのにむしろ速度と勢いで押し返されてしまった。
しかし〈五行陣・土〉の支配力自体が消えたわけではない。
『私』の魔力さえ奪って剣に纏い続けて振るった。もちろん〈五行陣・土〉の力でさえ『私』の強大で圧倒的な魔力と支配力を完全に上回ることは不可能だったし、割合で言えばごく僅か。しかしそれでも相手の力を弱め、私の力を強化する効果は十分だった。
【さすが五行の境地。母上もそうでしたけれど、やはり世界を思いのままに操れる力は煩わしいものですわ。】
「思いのままとは言えないほど自由じゃないけれどね!」
――天空流奥義〈五行陣・水〉
叫びながら五行陣を転換。〈五行陣・土〉で展開した魔力と共に周囲の全てを右手の剣先に凝縮して極限の一撃を作り出した。その威力は現実での私が放つ以上のものだった。
それも当然だろう。根本的に〈五行陣〉は世界を理解し世界の力を借りる技術。そして今ここは他でもない私の内面世界。どの世界や侵食技よりも私自身と最も関連が深い。
自分自身の内面さえ百パーセント完璧に知っているとは言い難いけれども、だとしても五行の境地を活用する力は格が違った。最凶のラスボスとも渡り合えるほどに。
けれどそんなアドバンテージ程度で互角に戦えていたのなら、そもそも隠しルートのラスボスが最凶最悪と評価されはしなかっただろう。
【理解しているようですわね】
思いが表情に出た瞬間、『私』が気分悪く唇を舐めながら笑った。
その直後奴が人差し指を立てた。
――テリア式邪術〈驕慢の視線〉
『私』の眼光が怪しく輝いた瞬間だった。
「くっ!?」
今までのように振るったような斬撃。しかし私の全ての反撃と防御をまるで紙切れのように引き裂き、強力な威力が私の体を大きく切り裂いた。切断には至らなかったけれど大きなダメージだった。
「お姉様!?」
アルカが悲鳴を上げながら弓を構えた。私の内面世界さえも凶暴に食い尽くそうとするかのように『万魔掌握』の魔力が暴れた。
その瞬間『私』は妖しい微笑みと共にアルカを指さした。
【世界を理解することで世界の助力を得る絶技。それが五行の境地だけだと思っているのかしら?】
――テリア式邪術〈嫉妬の鎖〉
鎖の幻影が視界を掠めた直後、狂ったように暴れようとしていたアルカの魔力が突然静まった。
「えっ?」
アルカは戸惑いながら魔力を再び操作しようとした。
魔力を動かすことには問題がなかった。しかし『万魔掌握』の力を使おうとすると突然全ての制御を失って魔力が霧散した。
まるで『万魔掌握』を使うこと自体を禁止されたかのように。
「アルカ、とりあえず自分の魔力で白光技を使いなさい!」
指示を出しながら突進して剣を振るった。『私』は涼しい顔で私の一撃を受け止めた。
刃の向こうで奴を睨みつけながら、私はひとまず挑発するように笑った。
「『万魔掌握』を完全に遮断するなんて暴挙ね。いくらあなたでもそんな無理は堪えるでしょう?」
【むろん容易くはありませんわ。でも今の私ならあなたたち全員を殺すまでは持ちこたえられますの。それに――】
『私』の腕力が私の剣を弾き飛ばした。
その直後奴の剣が音を超えて走った。
【摂理を害さぬよう同時に複数の力を発揮できない五行の境地なんて、不便な足枷に過ぎませんもの】
――天空流奥義〈五行陣・金〉
『私』が言葉と共にまたしても眼光を輝かせるのと同時に、私も金色の眼光を放ちながら同じように立ち向かった。漆黒の眼光と黄金の眼光が空中で絡み合い魔力の火花が散った。
激突は引き分けだった。けれど確率を観測し望む可能性を実現した反動で私の目から血が流れ出た。
『私』はそれを嘲笑った。
【たった一度ぶつかっただけで早くも反動が来ているのかしら? 弱いですわね。それじゃあ持ちこたえられるかしら】
「……ふん。それでも勝つのは私よ」
【さぁね。勝利というのも定義次第ですもの】
『私』は顎を上げて上を見上げた。
露骨な隙だったけれど、それは非常に明白な誘惑。当然そんなことに騙されはしない。
ただ奴もとくに戦いのために見せた隙ではなかった。
【外の愚か者たち。さっきまでは私のこの秘奥を披露しませんでしたけど、そろそろ披露宴を開いてもよろしいかしら】
「……!」
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