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浄化と結果

 アルカだった。


 しばらく遠距離砲撃にのみ集中していた彼女だったが、『テリア』が大技を放った瞬間、一気に突撃し始めたのだ。


 しかし『テリア』の目はすでに彼女を捕捉していた。


【たかがこの程度の奇襲も察知できないとお思いになったのですの?】


『テリア』は嘲笑いながら剣を振るった。


 邪毒が一切混じっていない純粋な魔力だった。邪毒が混じれば『浄潔世界』の力に浄化されることを知っているからだろう。


 しかし純粋な魔力なら魔力量と精製技術の戦いになり、アルカには万が一の勝算もない。


 というのが『テリア』の予想だっただろうが。


 ――『万魔掌握』特性複製『浄化神剣』


 アルカが振るった魔力剣に宿った魔力は平凡な浄化の魔力でも、『浄潔世界』ですらなかった。


 邪毒だけでなく邪毒の影響を受けたものや魔力までも残らず粉砕する暴力的な浄化の力。


『テリア』の純粋な魔力とはいえ、今は彼女自身が邪毒に染まって暴走している状態。つまり彼女が放つすべてのものは『浄化神剣』の破壊対象だ。それを証明するかのようにアルカの魔力剣が『テリア』の魔力を引き裂いた。


 もちろん神剣と呼ばれるほどの武具を何の代償もなく真似できるわけではなかった。


「ぐぅっ、あ……!」


 たった一度振るっただけの魔力剣が限界を迎えて消滅し、アルカの腕と口から血が噴き出した。


 しかしアルカは激痛が歴然と表れた顔で歯を食いしばって突進した。奇襲で作り出した一度きりの隙を逃さないために。


【このッ……!】


 いくら『テリア』でも『浄化神剣』までは予測できなかっただろう。しかもすでにアルカの位置はかなり近かった。『テリア』が余裕を見せたせいだったが、その余裕が見事に毒となったわけだ。


 奴が再び剣を振るおうとしたが、その時すでにアルカは手を伸ばせば届く寸前まで接近していた。


 ――『万魔掌握』特性複製『浄潔世界』


 ――『浄潔世界』専用技〈浄純領域〉


 アルカは腕を失うことを覚悟で手を伸ばし『浄潔世界』の魔力を注ぎ込んだ。


 その魔力がテリアに触れ――眩い光が視界を完全に覆った。


「っ……! 成功したのか!?」


 魔力で強化された視力でも貫けないほど光が強烈で魔力まで激しく暴れていたため中の状況がわからなかった。


 幸い光はすぐに収まり、現れた光景は……そのままだった。


 直前の状況、つまり『テリア』が剣を振るおうとしてアルカが手を伸ばしている状態そのまま。ただ時間が止まったかのように二人の動きだけが完全に固まっていた。


 そして数秒後、アルカの体から力が抜けると、そのまま地面に倒れた。


「アルカ!?」


 四肢の再生はまだ終わっていなかったが、欠損部分を氷で代替して走り寄って彼女を回収しようとした。


 しかし次の瞬間には『テリア』が動いた。


【あ、あ……あああああああああーー!!】


 奴は突然両手で頭を抱えると、悲鳴とともに魔力を爆発させた。


 まさに恐ろしい魔力。しかしボクたちを攻撃しようとする意思は見えなかった。ただ苦痛、あるいは他の何かによって暴走する魔力だった。


 しかし威力的なのは変わりなく、最も近くにいたアルカは正しく抵抗できないまま弾き飛ばされてしまった。


「っ!?」


 偶然にもボクの方向だったためアルカを受け止めた。


 急いで手早く確認した。『テリア』の魔力放出に巻き込まれたわりには体の状態は無事だ。ただ意識を失っているだけか。


 ただなぜ突然意識を失ったのかはわからない。もしやと思って少し魔力を注入して起こそうとしたが反応もない。


 いや、それより……異常なほど魔力反応が乏しい。


 アルカの魔力がこれほど弱く感じられたのは初めてだ。テリアとは違う方法で無限の魔力を扱う彼女の魔力はいつも膨大だったから。


 意識を失った状態だからか。まるで何かが抜け出たように感じられた。


【くっ……あああああ!】


『テリア』は相変わらず苦しんで魔力を噴き出していた。


 せめて無意識的な暴走に近かったため、ケインが浄化魔道具を動員した結界で防いでいた。とはいえ完全に防ぎきることは不可能で上空へと受け流すのがせいぜいだったが、今はそれでもありがたいだろう。


 しかしアルカが『浄潔世界』の魔力を注ぎ込んだわりには浄化された様子はない。相変わらず魔力には濃い邪毒が混じっており、変貌した外見もそのままだった。


 ただ魔力が極度に不安定に揺れているのが唯一の反応だった。


「あれは……なんだ?」


「さぁね。とりあえず私たちには態勢を立て直すチャンスだ」


 ケインが治癒の魔力が込められた魔道具を取り出した。それと『バルメリア覇軍旗槍』の力まで加えた治癒結界が皆を包んだ。そこにベティスティア様が紫光技で模倣した治癒の魔力まで加わると傷が速やかに回復された。このペースなら欠損した四肢もすぐに再生されるだろう。


「ジェリア嬢。アルカは?」


 ベティスティア様はもう完全に回復した様子でボクの方に来た。


「意識を失いました。幸い、あいつの魔力を正面から浴びたわりには身体の状態は大丈夫そうですが、魔力が異常に弱くなっていたのです」


「困ったものね。これがテリアの意図かどうか分からないという点が特に気になるわ」


「……同感です」


『浄潔世界』で『テリア』を攻撃すること自体はテリアの意図通りだ。


 ならばその結果としてアルカが意識を失ったことまでもテリアが予想していたのかどうかも重要だが、肝心なことを聞く場所がない。


 アルカが持っていた資料は戦闘の余波に巻き込まれて破損されたのかどこかへ飛んでいってしまったのかもわからない状態。しかも当事者であるテリアが理性をある程度維持して会話が通じるのも彼女の予想と違う状況だ。


 少なくとも確実な指針があれば行動しやすいのだが。


【くっ……よくも】


 そのとき『テリア』の気配が変わった。


 狂ったように噴き出していた魔力が収まった。まだ左手で頭を抱えたまま苦しんでいたが、こちらを睨みつけながら怒りに満ちた声を漏らす余裕はあるようだった。


【……いいですわ。今度こそ本当に本気で参りますの】

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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