推論と解明
「他にあるって……どういう意味ですか?」
尋ねながらも、私は突然気づいた。お姉様はすでに二つ目の方法を一人で実行すると以前から決めていたということを。
それ自体には疑問も異議もない。お姉様はいつも『バルセイ』の情報に従って事前に判断し、計画し、行動していたのだから。
問題はお姉様が一人でそれをするつもりなら、私に『浄潔世界』を習得させた理由が他にあるはずだということだった。
まだ『浄潔世界』を完全に会得したわけではない。けれど直感的にわかった。もう少しで習得できるということを。望めばお姉様が言った二つ目の方法を実際に行うときにも参加できるだろう。
それなのに私の助けを求めないということは私を気遣ってのことではないはずだ。むしろ……その仕事に劣らず重要な用途が他にあるという意味かもしれない。
「前に渡した資料に書いておいたわ。時が来れば見られるようになるの」
やっぱり。
お姉様のことだ。良くないことじゃないだろうけど、お姉様のためになることとは言えない。お姉様は元々最も危険なことを一人で引き受けようとする傾向が強かったのだから。最近は少しマシになったけれど、完全に直ったわけではないもん。
そんなことを考えながらお姉様をじっと見つめていたら、お姉様は視線が痛いとでも言うように苦笑いしながら目をそらした。
それでも追及してもお姉様が簡単に答えてくれるわけでもないし、追及するような言葉も見つからなかったので黙っていた。まぁ今はお姉様を信じよう、というような気楽な考えをしながら。
しかし父上は甘くなかった。
「ところでテリア。気になることがあるんだけど」
父上の態度は穏やかだったけれど、その瞬間お姉様は背筋をピンと張った。
研究と謀略の大家。この国最高の知性。普段はそんな異名が似合わないほど素朴で飾り気のない御方なのだけれど、父上は確かにこの国で最も優れた頭脳を持っているのだから。
父上はあくまでも大したことではないかのように穏やかに微笑んだ。
「時空亀裂が活性化して様々な出来事を経た後に、隠しルートのラスボスが登場するって言ったよね? そして『バルセイ』で試みられた二つの方法の一つ目……人員を配置して各地の時空亀裂を抑制する方法は失敗したって言っていたよね」
「はい、そうです」
単純に情報を再確認するだけの質問。しかしそんな質問こそがお姉様を緊張させるのに十分だったようだ。
すでに聞いた情報を再確認するということはつまり武器を研ぐということ。より確実に攻撃を繰り出すための準備のようなものだから。
瞬間父上の眼差しが鋭くなった。
「その二つの方法のうち、ラスボスが出現したのはどちらなのかな?」
「……。どうしてそんなことを?」
お姉様の答えが明らかに遅れた。
父上が核心を突いたのかな?
「時空亀裂がラスボス登場の原因になったと君が言っていたじゃない。そして成功した方法と失敗した方法があったともね。それを聞いていたら疑問が湧いてきたんだ」
「どんな……ことでしょうか?」
「ラスボス登場はストーリーの正史で、バッドエンドではなかったよね。ところで対処に成功した方法と失敗した方法がある。もし失敗した後にラスボスが登場したのなら正史で失敗を選んだということになるけど、そうだとすればそれが正史だということが納得できなくてね。そして成功した方法がラスボスの登場につながるとすれば……さらに気になってしまうよ」
なるほど。
聞いてみれば私にも理解できた。
成功と失敗があるのに失敗を選んだ方が正史だというのは納得がいかない。しかし成功がラスボスの出現につながるのなら、どちらを選んでも結局問題があるということだ。
もし失敗が正史なら成功を選べなかった理由が存在するはずだし、成功がラスボスにつながるのなら結局ラスボスのための徹底的な備えが必要になる。
お姉様は目線を落としたまま唇を軽く噛んだ。
しかし再び顔を上げたときには平静な目に戻っていた。
「良い指摘ですね。結論から申し上げますと、二つ目の方法……つまり時空亀裂を『浄潔世界』の侵食技で浄化した後にラスボスが現れました」
「ふむ。安息領の陰謀かな?」
「……多分そうです。その部分は『バルセイ』では明確に描写されていませんでした」
父上は答えを聞いてしばらく何かを考えた後、再び話した。
「君はどうするつもりなのかな? 君が勧めた方法を使ってラスボスが現れるのなら、君が考えておいた対策があるはずだね」
「そうでなくてもその部分については助けを求めようと思っていました。私の友人たちとアルカの力だけじゃ足りませんから。父上と母上の助けが必要ですの」
「……」
父上が突然黙り込んだ。
意中を測りかねる眼差しでお姉様をただじっと見つめるだけ。何も言わずにそうしているのがかえって大きなプレッシャーだった。お姉様の首筋からも冷や汗が流れた。
父上は一分ほどそうしていた後、ようやく口を開いた。
「友人たちとアルカ、か。君は?」
「『浄潔世界』の侵食技を展開した後はしばらく動けなくなりますの。一人でも可能ですが、やっぱりバルメリア王国全域となれば簡単ではありませんから」
お姉様は即答した。すでに質問を予想していたかのように。
父上はしばらくまたお姉様をじっと見つめていたけれど、少なくともお姉様の言葉に表面的な問題はないためか、今回はそのまま通した。
しかし今度は私の方から言うことができた。
「そんなことならやっぱり私もお姉様と一緒にした方がいいのじゃないでしょうか?」
「貴方の力はラスボスと対峙するために必要よ。だから侵食技を展開するのは私一人で引き受けると言ったの。むしろ大変な役割を貴方に任せてしまうことになって申し訳ないくらいだもの」
「あ……」
そういうことだったのね。
それならなぜ事前に教えてくれなかったのだろう、という疑問が頭をよぎったけれど、今は深く考えなかった。
一方、お姉様は微笑みながらそっと手を叩いた。
「じゃあ私が考えたことをお話しします。私の提案をお聞きになった後で、父上のご意見をください。まずは……」
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