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権能と権能

 ――権能『創造』専用技〈正しさの楔〉


 ワタシの権能で細長い黄金色の杭を作り出した。


 杭というよりも槍に近いだろうか。手で握れる長い棒の形態で先端だけが角のように尖った形だった。


 それを地面に突き刺した瞬間、奴が展開した時間の術法が粉々に砕け散った。


 砕け散る術式の魔力が消え去り――瞬間ワタシの胸元で光った極光の煌めきが胸を深く切り裂いた。


「……ふむ」


 血が噴き出す胸を見下ろし眉をひそめた。


〈執行の輪廻〉自体は確かに破壊した。しかし術式が砕けた直後に何か別のものが作用し、斬撃が空間を飛び越えて直撃したのだ。


 直後に突進してきた奴の剣を黄金色の杭で防いだ。


 漆黒と黄金が力比べをする中、奴がその向こうから口を開いた。


【既に知っている術法を見え見えで使ってくれると思った?】




 * * *




 嘲笑うような挑発を放ちながら、奴の傷を冷静に分析した。


〈執行の輪廻〉を攻略されるのは既に予想していた。だがら術式が破壊される瞬間斬撃がすぐさま転移して奴の体に直撃するよう罠の術式を仕掛けておいた。


 それが的中したのは良いことだけれど、想定していたよりもダメージが少ない。


 奴の防御力が強いからではない。斬撃の威力が突如として減衰したのだ。


「そんな甘い考えをするはずがないじゃない」


 即座に振るった剣は今回も奴の黄金色の杭に阻まれた。


 普通の斬撃ではなく〈五行陣〉の力を注ぎ込んだ奥義だったのに……いや、待てよ。


「あれ、気づいた?」


 奴が黄金の剣を動かした。自由自在に飛び回る四つの剣があらゆる方向から絶え間なく私を狙った。


 全て破壊する勢いで剣を繰り返し振るったけれど、ただ黄金の剣を弾き飛ばすだけだった。結局猛攻の勢いに押されて数歩後退せざるを得なかった。


 これもやっぱり相手が急激に強くなったわけではない。私の剣の威力が落ちたのだ。


 魔眼を輝かせて全てを観察した結果、原因はすぐに分かった。


【その杭。世界の干渉を無効化するヤツなのね】


「すぐに気づいたねぇ。さすがだよ。神の権能をちゃんと発揮しちゃえば、いくらワタシでもやっぱ権能で受け止めるしかないよね」


 世界への干渉を防ぐ神器。


 正確には世界の正しい姿に楔を打ち込んで固定する。〈執行の輪廻〉が壊れたのも正しくない時間の流れを強制的に正常に戻したのであり、斬撃が弱くなったのは世界の法則を操る〈五行陣〉をあの杭が無効化したからだ。


 確かに強力な力だけど、正体が分かれば幾らでも対応できる。


 足を踏み出す。


 周囲一帯の魔力全てが踏み出した足先に集まった。まるで世界が私の味方をしてくれるかのような感覚。同時にその世界に打ち込まれた異物の存在を明確に感知する。


 集まった魔力全てを剣に集中し、その異物に向かって振るった。


 黄金色の楔が持つ力、世界を強制的に本来の姿に固定する能力。楔の物理的な実体だけでなく、今世界に打ち込まれている無形の本質ごと斬り伏せた。


 ガキィィンと金属がぶつかる音が軽快に響き、筆頭の黄金色の楔が真っ二つに折れた。


「えっ!?」


 奴は片手で口を覆いながら愕然とした。


 今私を煽っている?


【イラつく演技はやめてくれない?】


「えぃ、この程度はやってあげないとキミもやりがいがないじゃない」


【いらないよ!】


 イラついた思いを込めてさらに強く剣を振るうと、奴は後ろにひょいと飛んで退きながら避けた。


 しかし伸びていった魔力は巨大な斬撃となって奴を襲い、防御しようと前に出た黄金の剣一本を破壊した。


 その次には私と奴が同時に魔力を発散させた。


 ――権能『時間』専用技〈終わりの槍〉


 ――権能『創造』専用技〈無限の一〉


 私の手に現れたのは長く古びた槍一本。かつてこの権能の本来の主であった神が扱っていた神器。


 奴が手に握ったのは剣のようでもあり槍のようでもある曖昧な何かだった。


 二つの神器が激突し、魔力とは異なる異質な何かを放った。


〈終わりの槍〉はあらゆる存在の時間の先から訪れる〝終わり〟を今この瞬間に引き寄せる神器。真の意味で不滅の存在や神器には通じないけど、そんな〝本物の神器〟は単なる分身体で使えるものではない。


 しかし奴の〈無限の一〉は〈終わりの槍〉と直接衝突しても耐え抜いた。


「驚いたよ。こいつの存在をこれほど早く削り取るなんて」


【底の見えない無限で〝終わり〟に耐える発想ね。なかなかやるじゃない】


 互いの神器を高く評価しながらも、油断せずに隙を探って数百数千回の攻撃を繰り出した。


 分析して推し量ったところでは、奴の〈無限の一〉は創造の力が集約された神器。一つだけでも神器と呼ぶに足りる権能を一本に無限に詰め込んだ物だ。言わば神器の群集というべきか。


〈終わりの槍〉の力が発揮されるたびにその群集の一部が消滅したけど、群集の無限の数で拮抗していた。


 そうして戦いを続けていく中で奴がふと笑った。


「やっぱり分身体の力じゃ神器の最終形態である〈終末の槍〉までは取り出せないようね。でも〈終わりの槍〉ですら本来なら分身体なんかで扱えるはずのない物なのに。やっぱりキミには才能があるよ」


【いつまで上からの目線で喋るつもり?】


 数え切れないほど攻撃を交わす中、槍を大きく振るって奴の神器を弾き飛ばした。そして〈終わりの槍〉を私に馴染みのある剣の形に変形させた。


 片手には私と長らく共にあった聖剣、もう片方の手には奪ったけれど今や馴染んだ神器。


 二つの武器に数多の力を込めて振るい、奴の〈無限の一〉を破壊した。斬撃の余波は奴の体にも深い傷を残した。


 それでも奴は相変わらず笑みを浮かべながら『創造』の力で新たな神器を作り出した。


「上からの目線をやめさせたいなら、まずはキミがここまで上がってこなきゃね」


【貴様の優位なんてとっくに消えた。それを見せてあげる】

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