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神VS神

【正気を失った奴の行動に意味を探すほど無意味なことはないけれど、一応聞いてみよう。今回は何が目的?】


 私は一応聞いてみたが、まともな答えは期待していなかった。


 安息八賢人の筆頭。私の宿敵にして、無限の叡智と権能を無駄なことに浪費する馬鹿者。この狂人が常識的な振る舞いをしたためしなど一度もない。


 だけど少なくとも自ら進んで無分別に暴れ回ったことはなかったのだけれど。


 予想通り、奴はイラつく態度で肩をすくめた。


「さぁね。どうせ言葉だけの問いなんて意味がないってことは分かってるだろうね? やるべきことをやりましょ」


 奴はそう言いながら両腕を広げた。魔力の嵐のせいで一時収まっていた蒼白い炎が再び激しく燃え上がった。


 安っぽい挑発だね。


【暴れること自体が目的というわけね】


「あれ、バレちゃった。でもそれが分かったところで、キミに何ができるかなぁ?」


 頭巾の影から少し覗いた口が挑発的に笑った。


 ちっ、腹立たしいけど正論だ。


 あえて暴れようとする理由はまだ分からないけど、そうしようという奴を容易に抑え込む方法は残念ながら存在しない。そんな方法があったなら、今まで泥沼の戦いを続けてはいなかっただろう。


 もちろん、手の施しようがないという意味ではない。


【何ができるかなって? 少なくとも叩きのめすくらいはできるよ】


 ――天空流奥義〈五行陣・火〉


 双剣を振るって極光の波を放つ。


 空間を支配する蒼白い炎を一撃で一掃し、開いた道をまっすぐに駆け抜けて突進した。


 瞬時に距離を詰めた私に、筆頭は少し見えた口で笑みを浮かべながら手を伸ばした。


「乱暴なのは昔も今も変わらないねぇ!」


 奴の掌から蒼白い炎が立ち上った。その炎が私の剣撃を受け止めた。しかし剣から爆発した極光が炎を消し去り、奴の掌に小さな傷を残した。


「私の分身体に傷をつけるなんて、自慢していいんだよ?」


【邪毒神同士の戦いで擦り傷程度が自慢になる?】


「邪毒神だからって皆同じ格じゃないよ。分かってると思うけど?」


 再び魔力が爆発し、私と奴は同時に距離を取った。


 奴の手振りに合わせて〈煉獄道発尽開顕〉の炎が再び噴き上がった。まるで無数の蛇の群れが襲いかかるような形相で炎が襲い掛かってきた。


【それが防御魔法だなんて、いつ見ても頭がおかしいね】


「攻撃してくるものすべてを消滅させてしまえば他の防御は必要ないじゃない」


【間違いじゃないね!】


 ――天空流奥義〈五行陣・水〉


 周囲の蒼白い炎を全て吸収して右の剣に集中させた。その剣を地面に突き刺して魔力を全て地面に流し込むと、蒼白い炎の力が大地に刻まれた〈煉獄道発尽開顕〉の魔法陣を破壊した。


 当然、筆頭の奴はその程度で動揺しなかった。


 ――神法〈地平線の証〉


 絢爛たる金色に輝く巨大な剣が四本現れた。


 剣というよりもまるで時計の針を巨大化させたような形状だった。そのうちの一本が地面に線を描くと、その線を基点に強力な力場が両側に展開された。


 私の側はさっきと似た蒼白い炎。そして奴の側は外部からの侵入を防ぐ絶対的な防御壁だった。


【ふん!!】


 大地を踏みしめる一歩で蒼白い炎を鎮火し、極光の剣閃で地面の線を上塗りした。


 けれど線に残された魔力は思いのほか頑強で、一度では消し去れなかった。


 奴は四本の黄金の剣を私の方へ飛ばしてきた。


【面白い力だけれど】


 神速で走る双剣がそのすべてを払い除けた。


 黄金の剣は強かった。単に魔力が強いというレベルじゃなく、何か正体不明の強制力が剣の動きを妨げられないようにする力だった。そして剣が横切った軌道に刻まれた魔力の線が空間を区分けし、両側に強力な力を発生させた。


 それに対し、私の反撃はシンプルだった。法則すら破壊するほどの力を愚直に押し付けて黄金の剣の強制力と魔力の線をすべて破壊したのだ。


 しかし剣本体を破壊することはできず、ただしばし遠くへ弾き飛ばしただけだった。


 もちろん、それもまた一つの隙であることは揺るぎない事実。


 ――権能『時間』専用技〈執行の輪廻〉


〈五行陣・木〉の至高の斬撃を放ちながら同時に神としての私の権能を発動する。




 * * *




『隠された島の主人』が〈五行陣・木〉を放った瞬間、魔力の前兆をまず感知し体を避けた。斬撃はワタシが避ける直前までいた場所を切り裂き外れた。


 しかし不可思議な魔力がワタシを包み込むように感じた直後、ワタシは再び元の位置に戻っていた。斬撃は再び目の前にあった。


「あれ?」


 もう一度避けた。でもその直後にはまた元の位置に戻っており、斬撃は再び目の前にあった。いや、少し近づいていた。


 今度は〈地平線の証〉の黄金の剣で斬撃を受け止めた。黄金の剣が〈五行陣・木〉の圧倒的な力に耐えきれず砕けたが、黄金の剣一本を犠牲にすることで相殺できた。


 次の瞬間、斬撃は再び目の前にあった。


「へえ」


 もう一度避けながら黄金の剣をチェックした。四本だった。相殺して砕けた剣が元に戻ったのだ。


 いや、〝戻った〟のではない。これは――。


「同じ時間を繰り返す牢獄ね。そういえばキミが権能を簒奪した神は『時間』の権能を持っていたね」


 続けて避けたり防御したり受け止めたりしたけど、そのたびに状況全体がその直前に戻った。しかしそのたびに斬撃が少しずつ近づいてきた。


 いや、時間が少しずつ進んだのだ。戻ったのはワタシが行動を開始する直前の瞬間だけど、毎回状況を認識して行動を再開する分だけ時間がごくわずかながら遅延するから。


 望む結果が出なければ時間を戻してやり直す。それを無限に繰り返して必ず望む結果を導き出すのがまさに『時間』の権能が持つ術法〈執行の輪廻〉。古すぎて忘れていた。


 無限に繰り返される時間の中で斬撃に対応し続けながら、自信に満ちた笑みを浮かべる。


「既に知っている術法にやられてくれると思った?」

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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