確認と結論
「え、おい、リディア?」
私が口を開くとシドは慌てて小さな声で私を制止し、父上は当惑の視線を私に投げかけた。
でもすでに言葉を発した以上、止まるつもりなんて毛頭ない。
幸いなのか、あるいはより大きな不幸の嵐の前の静けさなのか。再び目を開けた陛下が私を見つめる眼差しは穏やかだった。
「許可する」
「陛下は今、テリアに途方もない嫌疑をかけていらっしゃることをご自覚なさっているのでしょうか?」
「おい!?」
シドは我慢できずに私の腕を掴んで叫んだ。
しかし私はその手を振り払い、真っ直ぐに陛下を睨みつけた。
席の重圧感なんて知ったことか。相手が王だからどうだってんのよ。
私だって名が通った四大公爵家の一員、しかも今はアルケンノヴァの最有力な後継者。実質的には一国の王女同然の立場だ。
私の立場と権限を濫用してでも、言うべきことは言わなければ!
「ふむ。誤解があるようだな。言わなかったか? テリア嬢の情報のおかげで安息領に莫大な被害を与えていると。むしろ感謝すべきことだ」
陛下は穏やかに微笑みながらそう言った。
私の無礼を指摘しないのはありがたいけれど、これからもっと大きな無礼を犯すかもしれない。だから今の態度に意味はない。
父上、申し訳ありません。心の中だけでそう謝罪し、今後の行動を頭の片隅で計算しながら、いつの間にか震えが止まった体で陛下の視線に向き合った。
「でも、まんざら肯定的にだけお考えなのでもないですよね?」
「ふむ。なぜそう思うのだ?」
「陛下がテリアの名前を出されたのは、オステノヴァ公爵閣下のアピールが終わった後でしたよね。会話の主題とも合わず、とても唐突なタイミングだった上に、到底褒めて奨励するニュアンスではありませんでした。陛下がどのような意図で仰ったにせよ、肯定的なものじゃないと思われても仕方ないのではないでしょうか?」
「感情的な発言にしては、なかなか論理的だな」
陛下は相変わらず笑っていた。
しかし、私を見つめる鋭い眼差しから感じられた。フォーカスが私に移ったということを。
「話が出たついでに君にも聞いておこう。君はテリア嬢と大変仲が良いと聞いたが、テリア嬢の情報源について知っていることはあるか?」
「えっ!? そ、それは……」
もちろん知っている。
でもそんな軽々しく答えられるはずがないじゃない。前世がどうのこうの、『バルセイ』がどうのこうのってことを言ったところで信じてもらえるはずもないし。戯言を言うなと引きずり出されないだけでもいいほうよ。
私が答えられずに躊躇していると、私を見つめる陛下の眼差しがどんどん鋭くなっていった。
まずい、私のせいでさらに疑いを受けているのかも……!?
私が何か話さなければと考え始めた頃、突然深いため息が聞こえてきた。今まで一言も発しなかったケイン王子殿下だった。
「父上、冗談はそのくらいにしておきましょう。父上もオステノヴァ公爵の力を使う方が最も確実で効率的だということくらいはご存知でしょう?」
「冗談ではないぞ」
陛下はそう言い返しながらも、体から力を抜いた。そっと体を締め付けていた魔力の圧迫感が嘘のように消えた。
陛下はそのまま溜め息をついた。
「申し訳ない。どうやら敏感な問題があってな。テリア嬢に特別に嫌疑をかけたいわけではなかった。……だが何も確認せずに見過ごすこともできぬことでな」
「何か良くないことでもあったかい?」
ルスタン様が尋ねると、陛下は重々しく頷いた。
「すべてを詳らかにすることはできぬが、これだけは言える。邪毒神……『隠された島の主人』の輩についてだ」
『隠された島の主人』。
その名前を聞いた瞬間、ルスタン様が小さく鼻で笑った。
「その邪毒神が僕の娘を助けようとしているということかい?」
「正確に言えば、その邪毒神の輩をどう捉えるべきかまだ決めかねているのだ。現在までは概ね他の邪毒神よりはましだが、邪毒神というものはその名前だけでも警戒すべきだろう。……邪毒神だけだったらまだしも簡単だったのだが」
「五大神が問題だね」
今度はルスタン様が溜め息をついた。
五大神……そういえば『隠された島の主人』に対する五大神たちの立場が相反すると言ってたね。
五大神教が『隠された島の主人』に友好的であれ敵対的であれ、スタンスが一貫していれば参考にできただろう。しかし邪毒神を敵対するはずだった五大神教でさえ、派閥によって立場が異なる。
その部分についてはテリアも頭を悩ませている問題だけに、ルスタン様も深い溜め息をついた。
「その邪毒神が引き続き関与を試みているのは事実だよ。でも僕の娘が持っている情報の大半は邪毒神とは関係ない。少し……特殊な経路ではあるけどね」
「その特殊な経路とは何だ?」
「言っても信じがたいだろう。どうしても聞きたいなら、王家がなぜその邪毒神一党に注目しているのか理由をすべて明かしてみろ」
ルスタン様がそう切り返すと陛下は沈黙した。
何かはわからないけれど、何か言いづらいものがあるようだね。
一方、ルスタン様は雰囲気を一新するように一度手を叩いた。
「さて、不分明な話はこのくらいにして、元の話題に戻ろうか。整理すると、僕の提案はこうだ。まずは総団長の方式と似たように進める。ただし、打撃地点については我がオステノヴァの技術を総動員して情報提供と迅速な殲滅に協力しよう。その後、すべての戦力を一時に展開して安息領を殲滅する」
「情報量と討伐の迅速さについて確言できるか?」
パロム様が確認するように尋ねると、ルスタン様はにやりと笑った。
「お前が体で直接感じた軌道爆撃の威力を考えてくれればいいことだね」
「……ふむ」
パロム様はそれを最後に口を閉ざし、総団長は黙って頷いて同意を示した。父上とメノード様、そして騎士団長たちも異論はないようだった。
それを確認した陛下が整理しようと口を開いた。
「よかろう。では……」
しかし陛下が言葉を締めくくる前に、突然会議室のドアが勢いよく開いた。慌てた様子が明らかな騎士が飛び込んできた。
「緊急伝令でございます!」
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