戦いと確信
では、まずどのように出るか探ってみようか。
――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の爪〉
探りとはいえ、中途半端なことしかできないならこの一撃で終わらせる。そんな覚悟で放った一撃だった。
もちろんベルトラムをこれで仕留められるとは思っていなかったし、実際そうなった。
――ベルトラム式『冬天』専用技〈冬将軍〉
急速に生えた氷がベルトラムの全身を覆った。まるで氷の全身鎧を纏ったような姿だった。
ベルトラムは渾身の拳で〈神竜の爪〉を打ち砕いた。彼の氷の鎧も大きく破損したが、魔力が供給されると瞬時に修復された。
「このボクを相手に肉弾戦をするつもりか? 面白いぞ」
ベルトラムは近接戦闘が得意なタイプではないと聞いていたが、意外とそうでもなかったのかもしれないな。
ベルトラムは答えずボクに向かって一直線に走ってきた。
「ふぅっ!!」
突き出した拳と振るった剣の衝突。激突の結果はボクの一方的な勝利だった。『冬天覇剣』が鎧を破壊し、その下の拳まで深く切り裂いた。
「くっ!?」
ベルトラムは素早く手を引き、魔力を展開した。
――ベルトラム式『冬天』専用技〈眷属進撃〉
ベルトラムの氷が分身三体を作り出した。まるで奴が纏っている鎧が生きて動いているかのような形相だった。
感じられる魔力と威容はベルトラムと同等。恐らくベルトラムが纏った鎧とあの分身鎧たちの力は同等のレベルだろう。
「悪くない選択だが――」
――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の爪〉
今回も放つのは神竜の斬撃。ただし今回は原本の〈竜の爪〉のように複数の刃が多重斬撃を放つ形だった。
それだけで分身二体が完全に破壊され、残り一体とベルトラム本体の鎧が半壊した。
「くっ、この破壊力は……!」
ベルトラムは少し慌てながらも、鎧の下の体が攻撃を受ける前に素早く引いた。彼の鎧と分身たちが瞬時に修復された。
……ふむ。
奴の鎧と分身たちもなかなか強いな。〈暴君の座〉のおかげで一方的に破壊してはいるが、普通に戦えばなかなか苦戦したかもしれない。それに破壊は容易だが修復が早い。
「修復能力が良いのは立派だが、そのペースで魔力を消耗すればすぐに疲れ果てて倒れるぞ」
「力はあっても未だ小僧だな。安息領の力を侮るなよ」
ベルトラムの拳とボクの剣がもう一度ぶつかり合った。
今回は一方的に押し込む図にはならなかった。相変わらずベルトラムの氷の鎧は瞬時に砕け散ったが、今回は破壊を圧倒しようとする勢いで修復が続き、破壊に耐え抜いたのだ。
その間に氷の鎧の分身たちが左右と上からボクを攻撃してきた。奴らが具現化した氷の槍と剣が一斉に殺到した。
「貴様こそボクを侮っているのか?」
――『冬天世界』専用技〈押し潰す冬神の歩み〉
今回はボクの周囲に限定した範囲で、もう一度足取りの圧力で大地と空間を押し潰した。
ベルトラムの鎧と分身が同時に粉砕された。今回はベルトラム本体にも容赦なく攻撃を加えた。奴の鎧が持つ強力な守護の力が少しは耐えてくれたが、〈暴君の座〉の権能が一方的に守護を引き裂き、ベルトラムの全身を叩いた。
「くっ、これは……破壊を強制する力か?」
「まだボクの力を正しく知らないのだとすれば、この場で死んでも文句を言う資格はないぞ」
悠長な言葉とは逆に、即座に奴を追撃して剣を振るった。
一見すると性急に見える一撃。実際にベルトラムの術式は表面上見える鎧と術式はすべて破壊されたが、ボクが奴の領域に足を踏み入れた瞬間魔力が急激に湧き上がり、氷雪の刃と巨大な腕が無数に生まれてボクに襲いかかった。
しかしボクは神竜の嵐を纏ったまま突進するだけでそれをすべて振り払った。
邪魔をすべて突破した剣がベルトラムの胸を切り裂いた。奴が急いで後退したせいでごく浅い傷に過ぎなかったが、その傷を起点に氷が急激に成長し、奴の体を覆った。
「くっ!?」
――ベルトラム式『冬天』専用技〈冬神の支配〉
ベルトラムの魔力が自身を覆った氷の制御権を奪った。世界権能の力に干渉して奪うのは彼にも容易なことではなかったが、ボクがあえて主導権争いをしなかったためそれなりに難度は低かっただろう。
その間、追撃の代わりにベルトラムの領域を魔力で潰すことに集中していたボクに、ベルトラムが少し余裕を取り戻した声で言った。
「そうか。爾の世界権能は破壊そのものにのみ特化されているようだな?」
「さぁな。そうかもしれぬぞ」
ボクの〈暴君の座〉の力はボク自身が行う凍結、破壊、停止の力を極端に強制するもの。破壊だけではないが、今はわざと破壊以外のものは見せなかった。
敵に与える情報は少ないほどいいからな。
「どちらにせよ、貴様がここで死に絶えれば何の意味もないがな」
――ジェリア式狂竜剣流『冬天世界』専用技〈神竜の守護〉
剣を大きく一回転させた。噴き出した斬撃の魔力が神竜の嵐に混ざると、嵐そのものがさらに大きく猛烈になった。
ただ立っているだけでも周囲のすべてを圧倒し破壊する力。攻撃こそ最大の防御であることを証明する形でもある。
ベルトラムは眉をひそめると手を合わせた。さっき罠のように現れた氷雪の術式が彼の体に集まり、氷の鎧と分身が氷雪とともに蘇った。さっきよりもさらに強く集中した魔力を発散していた。
「ボクの破壊を耐久力で耐え抜こうというのか? 悪くない判断だな。だが――」
『冬天覇剣』でベルトラムを狙いながら、神竜の嵐を剣に纏う。
ベルトラムが見せる全力を十分に把握したボクはこの戦いの結末を確信した。
「あらかじめ貴様の仲間たちに伝えておけ。今日安息八賢人が一人減るとな」
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