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トリアの変化

「行くよ」


 魔力を高めながら突進。サリオンは私の進撃を正面から受け止めたけど、力に押されて後ろへずっと押し戻された。


「ほう」


 その直後何かを悟ったような声とともに、サリオンの脚にさらに力が入った。突進が阻止され、逆にサリオンが体格と力で押し潰す構図となった。


 しかし私が手足にさらに力を込めて押し返すと、サリオンの体が後ろに反った。


「そうかのぅ」


 サリオンは体が反る力を逆に利用して足を蹴り上げた。そして私がその足を掴んで下へ押さえ込むと、それを利用して姿勢を前へ戻しながら拳を繰り出した。


 ――極拳流〈頂点正拳突き〉


 サリオンの『獄炎』が凝縮された一撃は先ほどよりはるかに強力だった。少し前までの私へならこれでダメージを与えられるという判断だったのだろう。


 しかし私は五本の腕でその拳を受け止め、サリオンの足を押さえ込んでいた手で拳を握った。


 ――極拳流奥義〈深遠の拳〉


「ぬおおっ!」


 雄渾な魔力が宿った拳を放つとサリオンは防御姿勢を取った。その腕の上に拳が炸裂した。彼の防御を崩すことはできなかったが、遠くへ吹き飛ばすことはできた。


 サリオンの腕に残ったダメージは……拳の跡が刻まれた程度ね。内部の筋肉と骨にもある程度ダメージがあるだろうけど、腕を動かせないほどではなかった。あの程度なら魔力ですぐに再生するだろう。


 肉体も極度に硬いうえに、防御の瞬間に当たる点を正確に判断し魔力を集中する戦闘センスが非常に優れている。単純に攻撃手段を増やすだけでは通用しないね。


〈魔原阿修羅〉の腕を消した。その代わりにその腕を成していた因子と魔力を全て本来の両腕に注ぎ込んだ。甲殻がより硬く鋭くなり、その中の筋肉が甲殻を破裂させそうに膨らみ魔力をより濃く蓄えた。


 突進して再び攻撃を浴びせる。何度も拳がぶつかり合い、時には蹴りや他の攻撃が交わる中、サリオンは微笑みを崩さずに口を開いた。


「お主に残されたキメラの因子から予想したところじゃ、これより弱かったはずじゃ。何をしたのじゃ? 短時間でこれほど急激に強くなるほどの修練を積んじゃったか?」


「前に私を見たこともないくせによく言うね」


「キメラの因子が注入される前のお主を見たことはあるがのぅ。その程度の力の底を見抜くことくらいは容易いことじゃ。そしてお主の暴走を解くにはキメラの因子を抉り取るしかなかったはずじゃ。やむを得ず体内に残った部分もあったはずじゃが、その程度の量ではこれほど強くなれん」


 一瞬でそれを見抜くとは。さすが『教育者』と呼ばれる値打ちはあるというわけかな。


 サリオンの言う通りだった。正確には少し前まで戦っていた時はラスボス化が解除された直後と同等のレベルの力を使っていた。キメラの力だけを言えば今こそが全力を発揮しているというわけだ。


「もし本当にそうだとしても、素直に教えてくれると思う?」


「それじゃつまらんではないか。ただの老人の戯言じゃよ」


 サリオンは言いながら突然拳を加速させた。


「っ!?」


 予想以上の速度に少し動揺しながら体を反らせた。直撃は避けたが、瞬間的にバランスが崩れた姿勢では強烈な風圧に耐えられなかった。


 風圧に押し飛ばされた私をサリオンが追撃し、空中で拳と拳がぶつかり合った。


「ふあっ!」


 サリオンが回転しながら足を振り回した。大きく硬い脚が上から私を叩き落とす形だった。


 それを後ろへ飛んで避け、〈炎風の魔人〉の炎風を両手に集中した。


 ――トリア式融合技〈斬滅の炎風〉


 敵を八つ裂きする炎風の暴風を放った。


 サリオンは自身の『獄炎』を全身から噴き出しながら炎風の暴風に飛び込んだ。彼の炎が私の炎風の威力を減衰させたが、炎を突破した炎風が彼の体のあちこちに傷を負わせた。しかし軽い擦り傷に過ぎない程度だった。


 もちろんこの程度の技で大きなダメージを与えられるとは思っていない。ただ魔力を無理やり突破するせいで突進の速度が落ちるのを狙っただけだ。


 ――トリア式極拳流奥義〈炎源灼霊極進〉


 炎風の魔力を右手に凝縮して繰り出した。


 見た目には普通の極拳流の拳に過ぎない一撃。サリオンもそう判断し、対抗するための極拳流の奥義を放った。


 しかし拳と拳が衝突した瞬間、彼の表情が変わった。


「ふむ?」


 触れた瞬間から拳の表面で猛る炎風が暴れ出した。触れたものだけを正確に焼き尽くそうとするかのように。


 力が漏れ出ないよう極度に圧縮し制御して、正確に触れたものだけを抹殺する奥義――それを瞬時に見抜き、サリオンは反対側の手で私の手首を掴んだ。〈炎風の魔人〉の炎風が彼の体から噴き出す炎と拮抗したが、〈炎源灼霊極進〉の力が手首から発現することはなかった。


「悪くない判断だけど」


 その瞬間、私は右拳に集中した魔力を体内に解放した。


 魔力が体内を循環しながら全身に〈炎源灼霊極進〉の灼熱を纏わせた。焼けた鉄のように全身が明るく輝き、〈炎風の魔人〉以上の力がサリオンの手のひらを焼き尽くした。


 そのまま彼の手を振り払い、再び拳を繰り出すとサリオンも只事ではない魔力を拳に集中させた。


 ――サリオン式極拳流奥義〈炸滅山川〉


 拳と拳が衝突し、サリオンの雄渾な魔力が瞬間的に広がった。


〈炎源灼霊極進〉とは正反対の思想の力が広く爆発しながら私の全身を荒らした。〈炎源灼霊極進〉の力がほぼ消耗し、衝撃波が私たちを互いに反対方向へ吹き飛ばした。


 着地した私はすぐには突撃せず、両腕に魔力を集中させた。サリオンの動向を窺いながら次の一撃を準備するためだった。


 そんな私を見つめていたサリオンが口を開いた。


「やっとお主がどう強くなったのか分かったわい。良い方法じゃ」


「……私自身は狂った方法だと思っているけどね。それを良い方法だと言うのを見れば、やっぱりあんたの感性も安息領らしいね」

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