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目的と結果

 テシリタの力が支配していた地と道。


 その全体がまるで激浪が起こる海のように揺らいだ。


 よく見るとトリアの炎風の一部がいまだに大地と同化していた。『融合』の力でテシリタの力を突破したのだ。


「我らから得た力で我らを攻撃するというのか。こうなると思ったからあの作戦には反対したかったのだ」


 テシリタは両腕を広げた。指先から流れ出た魔力が百を超える魔法陣を描き出し、その全てから紺碧の太陽が出現した。太陽が四方に着弾し、揺れていた大地が瞬く間に灰燼と化していった。


 トリアは魔手を地に突き立てていた槍を再び抜き取った。その槍を頭上で回転させると炎風が巨大な渦を作った。その渦が紺碧の炎を吸い込んだ。


 一方で大地が波打ち、巨大な地の手が無数に飛び出した。それらが一部は素手で、一部は巨大な武器を握りしめてテシリタに殺到した。


 するとテシリタは別の魔法陣を描いた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈滅尽の狂雷〉


 黄金色の雷電がテシリタの右手から溢れ出した。四方から襲いかかる地の手どもが爆雷に焼かれ灰燼と化し、紺碧の炎を吸い込んだ炎風の渦さえ外郭が攻撃を受けた。


 するとトリアは炎風を操って槍を中心に圧縮させた。


「殿下。お願いいたします」


「もちろんだ」


 ――ケイン式結界術〈血壁の刑場〉


 ぼろぼろになったがまだ壊れてはいない〈ラルカンの海〉の中に、結界魔獣の力を秘めた攻性結界を重ねて展開した。


 結界が浴びせる赤い閃光の破壊力がテシリタの金色の稲妻を押し留める間、トリアは炎風と炎を槍先の一点まで圧縮させた。


 ――トリア式極拳流〈一点極進・万象灰尽穿孔〉


 トリアは力が凝縮された槍先を先頭にして突進した。


 金色の雷電の領域に飛び込む瞬間〈傀儡の渦〉の炎風が再び展開された。金色の雷電さえも飲み込んだ炎風がさらに槍先に吸収され、雷電の半分ほどを強奪して凝縮したときトリアは高く跳躍してテシリタに槍が届く距離まで接近した。


 テシリタは何か気になるように眉をひそめながら後ろに跳んで退いた。魔力を集約した特別な足取りでなければ発動しないのか、足取りの術式の六歩目は発動しなかった。


 トリアの槍はテシリタがついさっきまで立っていた地を破壊しながら突き刺さった。


 テシリタは魔法陣を展開しながら反撃しようとした。しかしその時すでにトリアの足が地と同化していた。


 テシリタの目が変わった。


「貴様……!」


 だがテシリタが魔法陣を発動するよりも、トリアが地中に突き刺さった槍刃の力を解放するほうが早かった。


 槍先の一点に凝縮されていたすべての力が一時に解放された。その全てが地中へ向かう形で。一帯の地面全体が瞬間的に熱と閃光を発し、次の瞬間――爆炎と雷電が地をごっそりと吹き飛ばした。


 過去の襲撃事件の際に安息領が占拠したという領域。その範囲さえも超えるほど広い領域が瞬く間に溶け落ち蒸発した。広さだけでなく深さも途方もなく深い穴ができた。


 瞬時に熱と閃光以外何もなくなってしまった領域で、トリアとテシリタだけが元の位置にそのままいた。足場がなくなった今は空中に浮いている状態で。


 テシリタは怒りが露骨に表れた表情で魔法陣を変形させた。


「やってくれたな。覚悟はしてやったのだろうな?」


「さぁね。わざわざ覚悟なんてするほどの相手じゃないようだけど」


 トリアが挑発するとテシリタは獰猛に笑った。


 三重に積層された魔法陣の照準がトリアに合わせられ、トリアは融合を解除して槍を手放した。


 巨大な穴の底に溜まった溶岩に槍が落ちた瞬間、二人は同時に行動を開始した。


 ――神法〈魔法創造〉・〈疑似獄門開現〉


 三重魔法陣が回転しながら魔力を吐き出し、それが瞬時に巨大な門を作り上げた。その門が開き深い紺碧の炎の砲撃が発射された。


 迫り来る巨大な滅亡を前にして、トリアは――迅速かつ正確に逃げ出した。


「用は済みましたので退きましょう」


「いい考えだね」


 ――バルメリア式結界術〈王の率い・退却命令〉


 私はすでに準備していた結界を展開し、トリアの炎風が結界に融合して力を加えた。


 結界の機能は味方と規定された全ての存在を迅速に移動させること。


「なに!?」


 巨大な炎砲よりも速い速度で逃げ去る私たちを見てテシリタが驚愕の声を上げたが、振り返る理由などない。


 テシリタが他の手段を講じるよりも早く逃げ切った私たちは結局衛星都市を完全に離脱した。


 結界が私たちを送り届けた場所は事前に設定しておいた場所、タラス・メリア前に陣を張った騎士団の駐屯地だった。


「ふう。いろいろ危なかったな」


「殿下があまりに危険な綱渡りをなさらなければ、そこまで危険ではなかったでしょう」


「相手は安息領の実質的なトップだからね。この程度の無理もできなければ、そもそも防ぐことなどできやしないよ」


 トリアは呆れたように私を見つめたが、私の言葉には同意するかのように渋々ながらも頷いた。


 私たちの目的はテシリタの討伐ではなく衛星都市に隠された安息領の何かを見つけて破壊すること。もちろんテシリタを討伐できればこの上ない成果だっただろうが、私たちの本来の目的ではなかったのでそちらは達成できなくてもよい。


 私がテシリタを相手に持ちこたえている間にトリアが地と融合して構造と位置を把握し、地との融合でテシリタの魔法の影響を弱めた後に凝縮された力をドカン。それによってすべてを一気に解決するのが今回の作戦の骨子だった。


 トリアは当初は自身の力を中心にテシリタを討伐する案を主張したが、それよりはもう少しでも可能性が高い方を取ろうと説得した末に受け入れてくれた。都市に隠された何かがテリア嬢の指示と関係があるという点が最も大きかっただろう。


 トリアが後退を主張したのは目標を達成したという合図でもあった。それゆえに私はトリアの言葉を聞くやいなや後退のための術式を発動したのだ。

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