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窮地と奇襲

 激突の余波、そしてテシリタの力が〈ラルカンの海〉と続けて衝突しながら生じる亀裂。それが結界の中に破壊をもたらした。


 そしてその破壊と空間の亀裂がある範囲を超えた瞬間、テシリタが舌打ちをしてから手のひらを下に向けた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈不滅宣言〉


 テシリタの魔力が大地の奥深くまで広がった。大地がさらに強固になり、広がっていた亀裂と破壊が固くなった大地に阻まれた。


 私は破壊の力を維持し続けながら、一方で〈ラルカンの海〉の力を利用して上空から爆撃を浴びせた。テシリタだけでなくこの周辺全体を破壊する形で。


 テシリタは大地をさらに固く強化して爆撃に耐えさせた。


「露骨に下を狙うというのか」


 テシリタの声にイライラが滲んでいた。


 やはり地中にある何かを守らなければならない立場だということは確実なようだ。しかも今私たちが戦っているこの一帯は過去トリアが参戦したという襲撃事件の時に安息領が占拠していた範囲内だ。


〈ラルカンの海〉の範囲を縮小させた。都市全域を覆う規模から今戦っている一帯に集中する形で。同じ力をより狭い範囲に圧縮して強化し、特に地面を中心に空間の揺らぎと破壊を起こした。


 テシリタは一瞬足をビクッとしながら少し悩む様子だったが、結局六歩目を諦めて手を代わりに動かした。三つの魔法陣が同時に展開された。


 ――神法〈魔法創造〉・〈守護の聖地〉


 地面に展開された巨大な魔法陣が〈ラルカンの海〉の破壊を受け止め耐える力を大地に与えた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈破滅啓示の門〉


 続いてテシリタの前に巨大な魔法陣が描かれた。ただならぬ魔力が魔法陣の中で渦巻いていた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈滅尽の藍陽〉


 最後の三つ目は既に先ほど見せていた藍色の太陽の砲撃。


 しかし太陽がテシリタの前の巨大な魔法陣を通過した瞬間、大きさと魔力が何倍にも増幅された。


 私は騎士たちと協力して守護の防壁を張り巡らせた。防壁に太陽が着弾し、巨大な太陽の大きさすら超える炎が猛烈に燃え上がった。


 今の〈ラルカンの海〉は範囲を狭めたとはいえ並の結界より広く、小さな村ならば丸ごと包み込んでもなお釣りが来る大きさだった。その巨大な結界全体を焼き尽くすかのような勢いで藍色の炎が燃え上がり、結界の力と魔力が激しく揺らいだ。


 魔力そのものが燃えて灰が舞う光景の中で、テシリタの鋭い視線が私を貫いた。


「なかなか面白い遊びだったが、そろそろ終わらせる時間だぞ」


 また別の魔法陣が描かれた。今度は明確に照準を私の方に向けたまま。


 どんな魔法かはわからないが、藍色の炎が結界を焼き尽くしていて〈ラルカンの海〉の力が弱まっていた。この状態で先ほどの増幅魔法陣の力まで加わった一撃が飛んでくれば、騎士たちと協力しても耐えられないだろう。


 テシリタもそれをよく知って狙っているのだった。


 ――神法〈道具創造〉・〈天火の聖槍〉


 発射されたのは巨大で神聖な魔力を秘めた槍。


 それが増幅魔法陣を通過すると力を何倍にも膨らませ、その力に引き寄せられるように藍色の炎が槍に吸い込まれていった。前進するほどに炎を吸い込み、ついには巨大な火の尖塔となった。


〈ラルカンの海〉が無事だったら別だが、今の状態では防ぐことはできない。


 テシリタはそれを知っていた――そう判断するだろうと、私もまた既に考えていた。


 切り札は最後まで取っておくものだ。


 ――トリア式融合技〈傀儡の渦〉


 巨大な炎風が何の前触れもなく華々しく燃え上がった。


 地面から。


 渦巻く炎風が巨大な槍の藍色の炎に絡みついた。炎風と炎の渦が混ざり合い、瞬く間に炎の制御を奪い取り飲み込んだ。


 奪ったのは炎だけではなかった。


「いい槍ね」


 ――『融合』専用技〈一時融合〉


 炎風の中から現れたトリアが槍を掴んだ。その瞬間手と槍が融合して一つになった。


 ――と思った直後には既にトリアがテシリタに飛びかかっていた。


「ふむ!」


 テシリタにもその強奪と速度は予想外だったようで対応が少し遅れた。それでも魔法陣の構築速度は十分に速く、強固な防御がトリアの一撃を受け止めた。


 しかしテシリタの力とトリアの力が融合した槍と炎風の暴風が防御を貫いた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈炎封の魔獣〉


 巨大な魔力の魔獣の頭が現れた。魔獣の口が炎風を食らいついた。しかしトリアの炎風が魔獣を侵食して操縦を弱め、トリアの槍が魔獣を地面に突き刺した。


 その間に後退したテシリタが地面の方をちらりと見た。


「今まで機会を窺っていたのか? ……いや、違うな。そういえば融合能力者だったか。『融合』の力で大地と融合して内部を捜索していたというわけか」


 やはり気づくか。


 ラスボス化の影響で強くなったトリアはテシリタを相手にするのに重要な戦力。それにも関わらず彼女が今まで現れなかったのは別の役割を担っていたからだった。


 地中に安息領が何をどこに隠したのか探り出し、可能ならばそのまま破壊すること。そして分析が終わった後にテシリタとの戦いを支援すること。それが彼女の任務だった。


 トリアは先頭で首だけ軽く回して私を見た。


「おおよその把握はできましたが、地面を強化する力のせいで『融合』で遠くから破壊することはできませんでした」


「そうか。だから今出てきたかね」


「それもありますが、こちらの状況が危なそうでしたので。一体なぜ一国の王子様がこんな無謀なことをなさるんですか?」


 おや、その部分は口がいくらあっても言い訳できないな。


 苦笑いが漏れたが、残念ながら今はのんびりと漫談を交わす状況ではなかった。


「まずは作戦の第一目標を達成しよう」


「御意のままに」


 トリアは返事と同時に魔力を展開した。


 地震が起きたかのように地面が揺れ始めた。

以前にもお伝えしましたが、連載周期と休載について簡単にお話しします。

基本的に本作は毎日1回更新です。ただし他の仕事を含めて忙しい時間を過ごしている最中なので、たまに連載ができない場合があるかもしれません。それでも最低でも1週間に6日程度は連載しようと思っており、6日を満たせない場合は埋め合わせの意味で週末に2回更新などを実施します。


1週間に1日程度休載する場合は、特にお知らせを書かないこともあります。通常、夕方7時30分までに更新されない場合は、その日は更新がないとお考えいただければと思います。

休載が1日を超える場合は、本日のように別途お知らせを書く場合もありますが、通常は活動報告を通してお知らせします。更新がない場合は活動報告をご確認ください。

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