魔道兵団の戦闘
私はそのような心構えで堅固な態勢を築く一方、軽い砲撃で奴らを継続的に攻撃した。奴らの行動を制約し我々に誘導するための牽制の砲撃であった。
安息領の奴らはすぐに姿を現した。
身体のあちこちに角や触手のようなものが生えた奴もいれば、皮膚が変質していたり、あるいは甲殻のようなもので覆われた奴らもいた。魔物を相手にした経験も多い我々には、かなり馴染みのある特徴であった。
「隊長。魔物弱化結界が本来の力を発揮できておりません」
「予想通りだ。奴らも自分たちの弱点くらいは知っているだろうからな。それに対する対策も当然しておいただろう。予定通り動け」
「はっ」
部下たちは事前に配置しておいた魔道具を即座に起動した。
――魔道兵団制式結界〈魔性集中弱化場〉
魔物弱化の力を指定した個体に集中させる結界。魔物弱化結界の効果を中和する手段を持っていても、それを突き破って強力な力を発揮する。
これで奴らの中でも特に強いと把握される個体を弱化させ、迅速な射撃で倒す。これを素早く繰り返して着実に数を減らしていった。
すると安息領の奴らも作戦を変えた。ローレースオメガの中で比較的魔力の弱い奴らがミッドレースアルファの盾となる位置に移動したのだ。
ローレースオメガも元々持っていた力によってはミッドレースアルファ以上の力を発揮する。しかし元々一般人レベルの力しかなかった者であればミッドレースアルファよりは弱く、我々の〈魔性集中弱化場〉のターゲットからも外れる。
それを利用して、相対的に優先順位の低い者たちがミッドレースアルファの盾となったのだ。
「愚かなテロリストらしい浅はかな手だな。〈天空爆撃雷〉射撃準備」
〈魔性集中弱化場〉の力が三体のミッドレースアルファに集中された。
動きが遅くなり力が弱くなった奴らに向かって、空から強力な砲撃が降り注いだ。
「クルァァッ!?」
〈天空爆撃雷〉は事前に空に設置しておいた魔道具から強力な爆撃を降り注がせる攻撃。敵が速ければ当てるのが容易ではないが、〈魔性集中弱化場〉で大きく減速された奴らは良い的にすぎん。
しかしミッドレースアルファを始末している間に奴らの先頭が我が部隊に近づいてきた。
「第一線着剣。要撃せよ」
命令を下しながら私もまた剣を抜いた。
まるで魔物の爪を研いで作ったかのような大剣が私を狙った。それを右手の剣で軽く受け流し、左手で拳銃を抜いて隙だらけの体に向けて撃った。魔道具である拳銃の力で精製された魔弾が奴の腹部を貫いた。
だが奴は下卑た笑みを浮かべながら剣を振り上げた。
「ヒヒッ! そんなんじゃ効かねえぞ!」
「承知している」
奴が剣を振り下ろすよりも、私が剣を引いて再び振るうほうが遥かに速かった。奴の体が頭頂部から股下まで一直線に切断された。
それでも絶命しない奴の両肘を切断して剣を落とし、二つに裂けて倒れる奴に爆裂の魔弾を浴びせた。奴は死体すら残さずこの世から消滅した。
横目で確認すると、部下たちも単独あるいは協攻で軽く奴らを始末していた。そして第一線が先頭を受け止めている間に容赦ない砲撃が奴らを薙ぎ倒していた。
……妙だな。
順調だが、予想に比べて容易すぎる。
衛星の撮影を通じて把握した敵の規模と数。測定した魔力。それらを基に想定した戦力に比べ、今の奴らは弱くどこか拙かった。しかも当初に観測した数に比べて明らかに人数が足りない。
しかし森を包囲している他の部隊が安息領と遭遇したという連絡もなかったし、衛星の監視や索敵魔道具にも反応がない。
「遠距離索敵を森の奥に集中させ。そして近距離探知魔道具は地下を監視しろ。奴らが隠しているものを見つけ出せ」
引き続き剣で敵を斬り伏せながら部下に指示を出した直後。
目の前に小さな水滴が浮かんだ。
「ふむ?」
何の魔力も感じられない小さな水滴だったため反応が遅れた。
気づいてみれば目の前にあった――その程度の存在。しかし何の力も感じられず、どんな魔力の影響も受けていない水滴が宙に静止しているというのは、それ自体が異常現象だ。
「第一線! 第二線の後方へ後退する! 第二線は先頭防御線に転換せよ!」
命令を下し第一線と共に後退する一方、魔力の斬撃を放って水滴を斬った。
瞬時に水滴が爆発した。
何の力も感じられなかったとは信じられないほどの威力だった。しかも単純な爆発ではなく空間を歪める力があった。巻き込まれれば我々の部隊が備えた防御手段程度では防げまい。
「隊長! 見つけました! 奴らが最初に集まっていた場所に人員がいます!」
「奴らは何をしている?」
「巨大な魔道具を中心に魔力を集中しています。何か術式を起動しているようですが、術式の分析までは――」
部下が報告を続けている途中、私と彼の視線の間に小さな水滴が現れた。
「離れろ!」
即座に後ろに飛び退きながら爆発に備えた。
しかしその水滴は爆発しなかった。再び至る所に水滴が現れたが、どれ一つとして直接爆発しなかった。
ふむ。試してみる価値はありそうだな。
「全隊、二百歩後退」
後退しながら石ころを一つ拾って水滴に投げつけた。それが触れるや否や水滴がまた魔力の爆発を起こした。駆け寄ってきたローレースオメガ数名が巻き込まれた。
後退した我々の目の前にも水滴が幾つか現れた。だがその位置は我が部隊の防御結界の外だった。
さっきは私と部下が結界の外に突出していたな。
「正体不明の水滴は結界内には生成されないようだ。だが触れれば我々の防御を突破する爆発を起こす」
分析を伝えながらも小さく舌打ちした。
触れなければ爆発しないということはまだ確信できない。しかも水滴が我々の前に継続的に生成されるのであれば、軽々しく攻撃を浴びせられない。
もちろん為す術がないわけではないが、厄介な要素だ――と判断した瞬間。再び状況に変化が生じた。
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