決着をつけるための作戦
自信を持って言ったけど、もちろん無謀に挑発したわけじゃない。
過程は全然違うとしても結局テシリタとの戦いという本質は一緒。結局発端と過程が違うだけで、『バルセイ』のテシリタボス戦を戦うのと同じだ。
だからこそ何をすべきかも見えている。
――神法〈魔法創造〉・〈巨神の偶像〉
テシリタの体から魔力が爆発した。その衝撃が私以外の三人を押し返した。私はその場で踏ん張ろうとしたけど、直接的な魔力の暴力に襲われて仕方なく後退した。
魔力と光が収まり、私の視界に映ったのは……魔力で作られた巨大なテシリタの上半身の像だった。
テシリタの工場を襲撃した時、撤退しようとする私たちを遠くから攻撃するためにテシリタが使ったあれだ。近くで戦うせいか大きさはあの時より小さかったけれど、魔力の密度はむしろ強かった。
テシリタが腕を伸ばすのと同時に私は三人に念話を送った。
――神法〈魔法創造〉・〈星の海〉
テシリタの像の表面に無数の光が宿った。それは光弾の弾幕となって四方に降り注いだ。一発一発が〈神の懲罰〉以上の破壊力を持つ魔法だった。
その攻撃に対抗したのはロベルの〈虚実反転〉。
〈虚像世界〉の魔力が沸き立ち、テシリタの光弾のほとんどが虚像化された。〈虚像世界〉の力でもテシリタの圧倒的な魔力へ全て干渉するのは無理だったけれど、効果は十分にあった。
そして残りの光弾に向かって飛んでいく矢の群れがあった。
――アルカ式射撃術〈決意の矢雨〉
アルカの矢が光弾を撃墜した。
ロベルの力がほとんどを無力化したとしても、依然として光弾は多かったうえに速くて強力だった。それでも狙い自体の正確さと神妙に軌道を変える矢でそのすべてを射落とすアルカの弓術は今や芸術の域だった。
魔力と魔力が激突して爆発し、光と暴風が前を覆った。
でもその程度の余波では私たちを止められないわ。
「はああああっ!」
私とイシリンが同時に突撃した。
テシリタの魔力の怒濤が私たちを阻もうとするかのように噴き出した。でも私たちは鋭く精錬された魔力で道を切り開き、瞬時にテシリタの〈巨神の偶像〉に間合いが届く距離まで接近した。
――神法〈魔法創造〉・〈歴史の雨〉
テシリタの魔法が無数の破壊の魔兵器を吐き出した。
その瞬間ロベルの力がイシリンを動かした。
――『虚像世界』専用技〈位相自在の蜃気楼〉
イシリンが私の目の前に移動した。
「ふんっ!」
イシリンの一閃が私の方に降り注ぐ〈歴史の雨〉を払い除けた。でもそうして開かれた道を駆け抜けようとした瞬間テシリタの次の魔法が炸裂した。
これを斬り開いても直ぐに後続攻撃が来るでしょうね。〈巨神の偶像〉を発動したテシリタは魔法の出力も連射力も格段に上昇するから。
もちろん私もそれを知っていて前もって指示を出しておいた。
「お姉様!」
今まで弓を使った遠距離攻撃にのみ集中していたアルカが私の傍らに来た。
アルカは前に剣を突き出しながら魔力を展開した。
――『万魔掌握』浸食技〈万魔掌握〉
テシリタの魔法も、テシリタを包み守る〈巨神の偶像〉の下部も、〈虚像世界〉の魔力と時空間も。その全てをアルカの力が暴力的に支配した。
アルカはその力ですべてを吸い込んで道を開いた。
今のアルカの力ではすべてを完璧に制御することはできない。だからこそ制御なんて投げ捨てて、全力を尽くして強奪にのみ集中した。それによって一部とはいえテシリタの〈巨神の偶像〉さえ解体して吸収した。
テシリタを守る下部を。
〈巨神の偶像〉は攻防一体の強力な魔法だけれど、魔法自体を解除しないと動けない。テシリタの最も強力な攻撃回避手段である〈幻影化〉も使用不可能。かといって今更〈巨神の偶像〉を解除して回避するのは間に合わない。
だからテシリタは退かなかった。
――神法〈魔法創造〉・〈神滅の聖槍〉
〈巨神の偶像〉の巨大な手に巨大な魔法の槍が握られた。ターゲットはもちろん私。
当然予想通りだった。
イシリンの体が光り、その光が私の手に集まって邪毒の剣となった。
イシリンとアルカが道を開いてくれる間、ずっと溜めていた魔力を邪毒の剣に込めた。
――テリア式天空流『邪毒の剣』専用技〈赤月の影〉
イシリンの力が充満した斬撃が〈神滅の聖槍〉を斬り裂いた。そのまま進んだ斬撃がテシリタまで狙った。
テシリタは斬撃を防ごうとするかのように手を広げた。
――神法〈魔法創造〉・〈巨神の恩寵〉
その瞬間、残っていた〈巨神の偶像〉がテシリタの手に吸い込まれた。巨大な右手の形象が〈赤月の影〉を受け止めて相殺され消滅した。
その間にロベルとアルカが別の角度から攻撃を試みたけれど、テシリタは目もくれずに魔法で弾き返した。
テシリタの視線はただ私にのみ集中していた。
「実に興味深いぞ。貴様の底を見させてもらおう!」
テシリタが雄大な魔力と威圧を発すると、それだけで空気が震え大地が揺れた。その気勢に押されたかのようにロベルの〈虚像世界〉が消え元の光景が戻った。
もちろん本当にテシリタの力に押されて消えたわけじゃないけれど――そう思いながらこっそり笑った。
テシリタをラスボス化する術式はすぐ近くに刻まれている。でもその術式はとても複雑で繊細で……近くで大きな力が爆発するのに耐えられない。
でもテシリタはそれを知らない。
『バルセイ』でも無知に近くで戦いを繰り広げて術式が壊れる展開があった。結局後で復旧はしたけれど、それは復旧可能なほどの損傷だったからに過ぎない。
つまり、より大きな力を誘導することで確実に壊すことができる。
テシリタを完全に制圧できなくても術式だけ確実に破壊すればラスボスの可能性を遠ざけることができる。
そんな作戦だったけれど――。
「むっ!?」
テシリタが突然何かに気付いたかのようにぎくりと体を震わせた。
その直後すべてを拒絶する魔力場が目の前に展開された。
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