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テシリタの強さ

 最初の一瞬のときは変化が見られなかった。


 場所は依然として地下、テシリタがあった場所。けれど二瞬きの後に飛び回る薬缶が現れ、三瞬きすると頭だけ大きい不思議なウサギがその薬缶を食べた。


 一貫性も蓋然性もない幻想が次々と現れ、その最後に地下の風景まで歪んで変形した。


「幻影系の世界権能か。だが幻影にて実体に干渉する権能を備えている」


 テシリタはあっという間にそう分析した。やっぱりいい目をしているね。


〈万象歪曲自在乱場〉の術式を一瞬にして破棄するほどに。


 世界権能の侵食技は自分の世界と法則を本当の世界にかぶせ、強制する技。世界権能ではない力で干渉することはほとんど不可能だ。その絶対法則はテシリタにとっても例外ではなかったようね。


 もちろん、これだけで勝利を確信できるほど簡単な相手ではない。


「今度こそ勝ちます!」


 ――アルカ式射撃術奥義〈七色極連の虹〉


 アルカの弓が七色の強力な矢たちを放った。同時にイシリンが何なのかよく分からない魔法の爪にて攻撃して入った。


 ――『虚像世界』侵食技〈虚像世界〉法則発現〈虚実反転〉


 二人の攻撃にロベルの権能が加わった。届く防御の一部を虚像に変えて弱化させる力だった。


 また、目と感覚を乱すあらゆる幻想がテシリタの目を覆い、テシリタを直接攻撃したりもした。


「こんな無茶苦茶な戦術が通じると思ったか?」


 ――神法〈道具創造〉・〈不動神剣テブメデス〉


 テシリタは神剣一本を床に突き刺した。展開された魔力場が〈虚像世界〉の力を弱めた。


 同時に展開されたもう一つの魔法陣は攻撃だった。


 ――神法〈魔法創造〉・〈拒絶の雷鳴〉


 雷鳴が轟いた。


 音に呼応するように雷電が溢れ出た。アルカの七色の虹も、イシリンの不思議な爪も雷に触れると粉々になった。


 ロベルの幻影に隠れて近くまで接近した私まで雷に攻撃されたけれど、〈雷鳴顕現〉で雷そのものになった私には効果が少なかった。


 ――天空流終結奥義〈月食〉


 異次元に隠れてすべてを切り裂く絶対的な暗殺の剣。


 イシリンとアルカの攻撃とロベルの幻影が視線を奪った隙を突く攻撃だったけれど、テシリタの反応は速かった。


 ――神法〈魔法創造〉・〈暴君の戒厳令〉


 空間を支配する強力な魔法だった。


 けれど、ロベルの〈虚像世界〉の中ではその力を完全に発揮できなかった。


〈暴君の戒厳令〉の空間支配のため威力が大きく減ったけれど、それでも進んだ〈月食〉の刃がテシリタの胸元を大きく切り裂いた。同時にロベルの〈虚実反転〉が治癒の術法を妨害した。


 しかし、テシリタの顔には依然として余裕があった。


「いいぞ。一度雌雄を争おう」


 ――神法〈道具創造〉・〈神域の鎖〉


 ――神法〈魔法創造〉・〈虚像神の祭壇〉


 魔法の鎖が広く張り巡らされ、強力な魔力が戦場を支配し始めた。


「擬似神域を作った。人間の世界権能と偽神の神域、面白い対決になりそうだな」


 ロベルの〈虚像世界〉の権能が大きく弱まるのが感じられた。


 虚像を扱う擬似神を創造して作り上げた神域。人間のテシリタが作ったものなので、〈虚像世界〉を完全に相殺することはできなかった。


 でも魔法一つで〈虚像世界〉をほぼ無力化に近く封鎖しただけでも規格外の偉業だろう。


 その上、その間もイシリンとアルカは攻撃を続けていた。それでもテシリタには余裕があった。


 イシリンはそれが気に入らない表情だった。


「余裕が過ぎるわね」


 ――第七世界魔法〈竜具創造〉・〈赤天鱗剣イシラオス〉


 イシリンの手に赤い鱗で覆われた魔剣が現れた瞬間、テシリタの鋭い視線がそっちに向かった。


 ――神法〈道具創造〉・〈赤天封剣〉


 テシリタが作り出したのは、まるで赤天鱗剣イシラオスを反転したような聖剣だった。


 それはイシラオスの力を封じるための剣だったけれど、瞬時に分析して作り出した力なので及ばなかったのだろうか。それとも純粋にイシリンの魔剣が対抗できないほど強いのか。テシリタの聖剣が劣勢だった。


 それに私、アルカ、ロベルが同時に動いた。


 ――天空流奥義〈五行陣・木〉


 ――アルカ式射撃術奥義〈天国の虹〉


 ――ロベル式極拳流奥義〈虚像突き〉


 私の斬撃が正面からテシリタを襲い。


 アルカがあらゆる特性の力が入り混じって凝縮された強力な一発を撃ち。


 ロベルの拳が実体の防御を全部虚像に変えて突破する力をつけて放たれた。


「確かに脅威的だが――」


 テシリタはそのすべてに対処した。


 魔法で操っていた赤天封剣をわざと引いてイシリンを引き込んだ。イシリンは自分が〈五行陣・木〉の範囲に引きずられてきたことに気づき、舌打ちをしながら赤天鱗剣イシラオスを防御に回した。


 その間、目に見えない手の魔法がアルカの矢を防ぎ、激しい魔力の火花を散らした。


 そして目の前まで迫ってきたロベルの拳を、テシリタは魔法が与えられた手で握った。


「打撃を与えるためには結局触れた途端虚像の力を止めるしかない。ならば打撃を受けるべき体の実体そのものを強化すればいいだけだぞ」


 テシリタが言ったけれど、ロベルは一言半句もなく後ろに身を引いた。その直後、〈五行陣・木〉の斬撃がテシリタを襲った。イシリンが剣で〈五行陣・木〉を受け流したのだ。


「ふぅっ!」


 テシリタは気合を吐きながら何か強力な力が感じられる術法で〈五行陣・木〉をいなした。


 直後、彼女の背後に巨大な魔法陣が現れた。


 ――神法〈魔法創造〉・〈暴君の意志〉


 前に見た並列魔法の術式だった。


 テシリタにはそれなりに傷が積もったけれど、彼女は依然として余裕と好戦性があふれる笑みを見せた。


「前よりずっと面白くなったのではないか。もっともっとかかってくるがいい!」

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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