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長年の憎しみの戦い

「ふん。借りた力で偉そうに言うのは相変わらずだわ」


「……何だと?」


 ディオスの魔力が怒りで震えるのが感じられた。


 特に挑発するつもりはないけれど、思わず口が嘲笑を描き出していた。


「そうでしょ? 以前リディアと決闘した時もそうだったじゃない。自力では勝つ自信がなくて、極穿槍ダウセニスという宝具と外から魔力を借りる魔道具を使ってた。あんたが自分の力だけでリディアと戦ったことがあったの? ないじゃない。今も自力ではリディア一人も勝てなくて安息領の力なんて借りたくせに」


『アーマリーキット』を開放し、右手の人差し指に始祖武装『武神の指輪』をはめた。


 開幕の〈焼界の咆哮〉はおそらくラスボス化が進行中のときに炸裂したのだろう。おかげでディオスにかなり大きなダメージが入ったのが感じられた。でもそれにしても、ハイレースガンマに進化した今のディオスは圧倒的だ。


 ガンマはオメガの失敗作だけど、人間としての記憶と自我を失ってはいない姿……と言ったね。でも失敗作にしてはかなりきれいな見た目だった。


 そういえばあいつはハイレースガンマに進化する時、自分の特性である『鋼鉄』で外見を強制的に固定したとも言っていた。確かに失敗作というには整った姿だった。


 とにかくあれくらいのダメージは軽微というほど、今感じる魔力は圧倒的だった。正直、私一人でラスボスディオスに飛びかかるのは自殺行為だ。シドがあると言っても大差はないだろう。


 無論、何の勝算もなくこのような無謀な作戦を提案したわけではない。


「かかってきなさい。その直せない腐った根性を、今度こそこの世から焼き払ってやるから」


「大きく出るんだな。力の差も理解できないタワケが」


 今は自分が圧倒的に強いということを自覚しているのだろう。昔の傲慢な余裕が戻ってきた。


 違いがあるとすれば、今はあの時のような油断はないということ。


 ――『鋼鉄』伝竜奥義〈無欠の魔器〉


 ディオスの手のひらの鋼鉄が急速に成長し、鋼鉄の槍になった。鋼鉄の巨人になった今のディオスの体にも長くて太いほど巨大な槍だった。槍というより、まるで尖塔を抜いて振り回すことに近いほど。


「いく――」


 ディオスが一歩を踏み出した瞬間、その地点の地面が消えた。


 シドが『地伸』の力で穴を作ったのだ。ディオスの足がそこに落ち、溶岩しぶきが飛んだ。


 ――『アーマリーキット』実装兵器・装甲破壊用大型拳銃『青のワニ』


 その間に私は『青いワニ』に魔弾を装填した。装甲破壊とジャイアントキリングに特化した戦術魔弾〈乱暴なヤンキー〉だった。


 下半身が溶岩に埋もれたディオスを狙って発砲した。凝縮した魔力が大気を震動させた。


 よほどのバケモノも対応できない速度と威力だったけれど、ディオスはそれ以上の速度で鋼鉄の槍を振り回した。巨大な槍の刃が魔弾と衝突した。


 ドカアァァンと、魔力が解放され山全体が揺れるほどの爆音がした。衝撃波だけで周辺の溶岩が全部吹き飛ばされた。


 けれど魔弾は直接衝突した槍の刃を破壊しただけ。ディオスには何のダメージも与えられなかった。


「なさけないぞ」


 ディオスは穴から飛び出し、槍の刃を一瞬で修復した。尖塔のような槍が私に向かってまっすぐ繰り出された。


 ――『アーマリーキット』実装兵器・近接炸裂型マチェテ『灰色のサル』


 右手の『青いワニ』はそのままにして、左手に『灰色の猿』を握った。それを絶妙な軌道で振り回し、衝突瞬間の〈爆炎石〉爆発の力で槍を受け流した。


「うぐぅっ……!」


 直撃は防いだけれど、槍と衝突した衝撃で左腕がしびれた。


 槍撃の衝撃波が私の小さな体を吹き飛ばしたけれど、今のディオスの速度と巨大な歩幅があっという間に私に追いついた。大きく振り回された槍が今度は上から私を狙った。


 その瞬間――私の後ろから飛んできた溶岩がディオスの腹部を強打した。有意義なダメージを与えることはできなかったけど、思ってなかっていたディオスを物理力で後ろに押し出した。


「ふむ?」


 ディオスが不快な声を出した直後。四方から突然集まった溶岩が彼を襲った。灼熱する熱気と魔力で固くなった溶岩の力がディオスの四肢を拘束した。


 ディオスは鼻を鳴らし、力ずくでそれを振り払おうとした。しかしその直前に溶岩の中から人影が飛び出した。その人影はディオスの後ろから首を狙った。


 シドだった。


 ――シド式暗殺術〈熱岩の刃〉


 魔力で物理的な限界を超えて凝縮された溶岩の刃がディオスの首に刺さった。


 熱く溶けた溶岩も本質的には大地の要素。そのため『地伸』の力で制御することができる。事前にその情報を共有してもらって協議した作戦だった。


 もちろん、その程度でディオスの首を切ることができたら、ラスボスとは呼ばれなかっただろう。


「つまらない!」


 溶岩の刃は鋼鉄の皮膚の表面をほんの少し溶かしただけだった。そしてディオスが魔力を放出して四肢に力を入れると、溶岩の拘束は簡単に破壊された。


 ディオスは大きな槍を振り回した。強力な風圧が私とシドを前後に吹き飛ばした。


 ディオスはシドなど眼中にも置かないかのように、まっすぐ私に向かって突撃してきた。巨大な槍の刃があっという間に目の前まで迫ってきた。


 まだ飛ばされていた私は空中で体を回し、マチェテで槍の刃の横を殴った。同時に最適なタイミングで〈爆炎石〉を炸裂させた。槍の刃をそらすというよりも、自分自身を爆発の反動で横に飛ばすための防御だった。


 危うく直撃は避けたけど、私の体より巨大な槍の刃が空間を切る衝撃波だけでも私は再び飛ばされた。


 しかし、今度は空中での爆発でブレーキをかけた。そして連続した爆発でディオスに向かって突撃した。最初にディオスと決闘した時のように。


 ディオスはすべすべした顔でわたしを睨みつけながら『鋼鉄』の魔力を展開した。


「そのつまらない力を今度こそ全部打ち砕いてやるぜ!」


 ディオスが槍を強く握りしめると同時に、私は『青いワニ』の照準を彼の頭に合わせた。

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