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リディアの砲撃

「ここが本当に……って聞く必要もないようね」


「あいつ、よほどお前に恨みを抱いているようだけど。何かやらかしたんじゃないかよ?」


「ふん。あいつがクズ人間であるだけなのよ」


 シドの言葉を鼻で笑い飛ばし、私は目の前の山を睨みつけた。


 我がアルケンノヴァ公爵領の領都、トラヴァ・アルケン――の外にある山。私とシドはその山の前の小さな森で山の様子を眺めていた。


 領都市民がたまに散歩や登山を目的に訪問する所だけれど、今はそのようなゆったりとした足が途絶えてしまった。


 それもそうだろう。今の山では普通の人でさえ尋常ではないと感じるほど巨大な魔力が発散されているから。


 まだ目で一部始終を確認したわけじゃないけれど、おそらくあれがディオスのラスボス化だろう。


 まだ完了したわけじゃないだろうし……もちろん、私たちもただ見物ばかりしているわけじゃない。


「リディア。準備は?」


「ちょうど今終わったよ」


「いいよ」


 シドの『地伸』の魔力が地を操った。心強い壁が私の背中を支えてくれて、低くて巨大なテーブルのように私の前にそびえた土地が何かを置いておける台になってくれた。


 ――『アーマリーキット』実装兵器・戦略殲滅型最終武装『漆黒の獅子王』


 一度に複数の兵器を具現できる『アーマリーキット』のすべてのパーツを注ぎ込み、たった一つの兵器を作り出した。


 長くて巨大な砲身に数多くの小さな銃身がたてがみのように添えられている武具。私が使える最終武装の一つ、大規模殲滅に特化した砲火の猛威だ。


 今まで黙っていた理由は一つ。この兵器を最大出力で発射するための魔力を集めるためだった。


 巨大な魔力が山から噴き出しているとはいえ、あまりにも巨大なあまり正確な位置を特定することができなかった。樹木が鬱蒼とした山であの巨大な魔力の震源地を探すのは骨が折れる。いちいち探し回ってば発見する前にディオスのラスボス化が終わっちゃうだろう。


 大量の〈爆炎石〉の魔弾を『漆黒の獅子王』に注ぎ込み、最も巨大な主砲の照準を山に合わせる。たてがみのような無数の銃身がまるで毛が逆立つように立ち上がった。


「行くわよ」


 ――リディア式射撃術終結奥義〈燒界の咆哮〉


『漆黒の獅子王』の主砲と数多くの銃身が同時に火を放った。


「うぐッ……!」


 恐ろしい反動が襲ってきた。私はシドが作った壁を突き破って飛ばされた。『漆黒の獅子王』の下の台も衝撃波で粉になってしまった。


 しかし、その効力は確かだった。


 主砲から発射された圧倒的な火力の魔弾が山の半分を吹き飛ばした。そしてたてがみの銃身から噴き出した無数の弾幕が残った山の表面をすべて燃やして溶かした。火力が強すぎて山の裏側までぶっ飛ばしてしまったけれど、そっちは人が住まない領域ということを勘案した火力投射だった。


 山のどこに隠れていても、この火力を耐えることはできないよ。


 半分が消滅し、残りの半分も表面が溶岩になって流れ落ちる山の中から、ディオスの巨大な魔力がさらに膨らんだ。


 その中でも特に魔力の濃度が濃い地点があった。


「あっちあたりみたいだね。……戦えるかよ?」


「余計な心配よ」


 シドが私を見て心配そうに言ったけれど、私はそれを一言で一蹴した。


 まぁ……反動で飛ばされて地面に倒れているので心配になるのも理解できるけど。正直、物理魔力的反動のせいで全身がずきずきしてるし、魔力もかなり消耗したのは事実ではある。


 でも今心の中で沸き上がる怒りと闘志を折るほどじゃない。


「あいつを前にして逃げるつもりはないの。こんな状況になって、安息領なんかの力を借りてまであんなことをしているのを見たら、腹が立って我慢できないよ」


 トラヴァ・アルケン襲撃――それは『バルセイ』の私のルートでラスボスバトルのテーマでもあった。


 アルケンノヴァ公爵家の中でますます立地が押し出されたディオスは、次第に私だけでなく父上とアルケンノヴァ公爵家自体を恨むようになった。その道の先が領都トラバ・アルケンを襲うことであり、そんなディオスを阻むのが『バルセイ』でのストーリーだった。


 その話を聞いた時も腹が立ったけれど、それが現実になっていく姿を見るとさらに怒りが燃え上がった。


「行こう。今度こそあのクズをぶっ飛ばしてやるよ」


『アーマリーキット』を元のスーツケースの形に戻し、溶岩の流れる山に向かって大きく跳躍した。


 ――『結火』専用技〈ルビーの翼〉


 背中から〈爆炎石〉の翼が生えた。その翼が炎を放って強力な飛行能力を発揮した。シドは地で『地伸』の能力を利用した高速移動で私についてきた。


 砲撃の残滓と溶岩の熱気が肌で感じられる地点まで到達した頃、山の一角が爆発し溶岩が四方に飛んだ。


 その下から明らかになったのは鋼鉄のバケモノだった。


 全体的な形状は人間の肉体を七倍程度に大きくした感じだった。でも皮膚が鋼鉄でできており、所々に鋼鉄のとげが生えていた。顔は大まかな形が決まっているだけで、目立つ目鼻立ちがなくすべすべしていた。


 テリアから聞いたラスボスディオスの姿そのままだった。違いと言えば、鋼鉄の肌の一部が熱気に溶けており、強固なはずの魔力が揺れているってこと。


 すべすべした顔が私の方を向いた。


「来たか。はでなだけの花火だな」


 あのすべすべした顔のどこに口があるのかしら。ラスボス化の影響で少し変質したけれどディオスのものだって理解できる声が出た。


「言っている割にはなかなかダメージを受けたようだけど?」


 奴の前に着地しながらそう言い放った。


 熱い溶岩が足を濡らしたけど、『結火』の力を纏った私にこの程度の熱気は何でもない。


 シドは……『地伸』の力で地下に潜り込んだね。おそらく今のディオスなら気配を隠しているシドの存在にもすでに気づいているだろうけど。


 その予想は次の言葉で証明された。


「たった二人でこの俺の前に立つとは。死にたいということを遠回しに言うのか」

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