復讐者
空を見上げた直後。何が来るのかを悟り、私は部下を押しのけた。
「避難しろ。早速!」
「ピエリ様? 何が……」
「軌道爆撃が来る! 早く避難しろ!」
衛星魔道具の魔力反応。以前にラースグランデを襲ったそれだ。
ただ頭上に魔力を展開して防御を準備しながらも、いくつかの疑問が頭の中に浮かんだ。
一つはなぜ今さらかということ。軌道爆撃で私を攻撃するなら、力をまともに制御できずにいた三日間攻撃するのがはるかに効果的だっただろう。進化を終えて格の違う力を手に入れた今の私なら、軌道爆撃一発や二発くらいなら防ぐことは難しくない。
もう一つは、なぜこんなに遅いのか。私が覚えているオステノヴァ衛星魔道具の性能なら、魔力を感じた時はすでに爆撃が目に見えるほど迫ってきただろう。ところが今はいくら私が速くて強力だとしても、防御膜を堅固に展開するまで爆撃が来る気配が見えなかった。
ついに、進化と魔力の力で極限まで強化された視力に軌道爆撃の投射体が映った。しかし疑問はさらに大きくなった。
「宝石?」
魔力を三重に張り巡らした宝石。何か強大な魔力が中に封印されたことが感じられるが、今の私を阻むような弾頭とは感じられない。
……いや、待って。
そういえばレースキメラを封印した宝石に似た感じが――。
その瞬間、突然宝石が急加速した。あっという間に空を垂直に突破した宝石がまっすぐ私の方へと飛んできた。
何なのか分からないので、まず後ろに大きく下がって避けた。宝石は巨大な風圧と音の暴力を振りまきながらクレーターの底に着弾した。
衛星からもう一発発射される気配はないな――と思った直後。宝石から雄大な魔力が湧き出た。
さっき感じた強大な魔力でさえ、何重にも封印されてほんの少し漏れ出したに過ぎない片鱗だった。それを自然に悟るほど巨大で圧倒的な魔力だった。
だが私が言葉を失ったのは、その力がただ巨大だったからではない。
あまりにも慣れていて、私が決して勘違いするはずがない魔力だった。
「……は」
その時になって私はすべてを理解した。私が進化する間、騎士団が防ごうとしなかったのも、微妙な威力の軌道爆撃をたった一発しか発射しなかったのも。
そもそも爆撃ではなく、配達に過ぎなかったのだ。
「くくっ。ははははは……! テリアさん、貴方は本当に賢くて残酷な人ですね」
術策だ。あまりにも分かりやすくて分かりやすくて、単純な術策。
しかし知っていながらもやられるしかないというのが、非常に悪質で賢い計略だ。
クレーターの下で膨らませていた魔力は、やがて一人の巨大な男になった。
人間というものが信じがたいほど大きな体格と、その体格にも巨大に見える重剣。そして何よりも――今の私ですら勝利を確信できない、底知らずの極大の魔力。
……私が安息領に身を投じたきっかけ。私の家族の死と、それを誘発した者たちへの糾弾さえ黙殺され隠蔽されたこと。それらを直接行った者は別にいるが、そのすべてを上から総括した者は別にいた。
テシリタに話した私の目標そのものは本気だ。しかしその底に存在することが復讐心だということを否定することはできない。その目標自体が本来の復讐を遂げることができないから設定された副次的な目標というのも。
月光騎士団長パロム・フュリアス・フィリスノヴァ公爵。
私の根本的な仇敵が、目の前に現れたのだ。
騎士団は私を止めなかったのではない。
止めてはいけなかったのだ。敵と敵をぶつけて両方とも大きな被害を受けらせるためには、その敵たちの力が互いに拮抗しなければならないから。
フィリスノヴァ公爵が封印されたということは聞いた。しかしその封印が永遠であるはずがないということも知っていた。フィリスノヴァ公爵ほどの大物ならその魔力を封印することさえ大変だし、たとえ成功したとしても封印が長続きしないだろうから。
結局、封印が解ければ公爵は困難の存在になる。それにどう対応するか、その質問に対するテリアさんの答えがこれだ。今の私自身の力を測ったからもっと確信した。
フィリスノヴァ公爵は進化した私と比べても拮抗する化け物。なので私と公爵が戦わせることこそ、テリアさんの狙いだったのだ。
「ここはどこ……うむ?」
フィリスノヴァ公爵側もクレーターの上の私に気づいた。彼は「ほぉ」と微笑み、言葉を交わしてもいないのに何かを感じたように重剣を抜いた。
理性的に判断するなら、ここでは退くのが得策。フィリスノヴァ公爵は安息領や私の味方ではないが、だからといってバルメリア王国の味方というにも曖昧だ。少なくとも今の我々の主敵であるテリアさんとオステノヴァ公爵には明確な敵だろう。
しかし――そうはいかない。
私の行動原理。私が安息領に加担した理由。そのすべての根源が目の前にあるし、今の私には奴を倒せる可能性がある。むしろ公爵であり騎士団長である奴をここで逃したら、今後二度と奴が一人でいる機会が来ないかもしれない。
このような状況で復讐に挑戦しなければ、一体いつ奴の首に手が届くというのか。
「いいです。貴方の策略に乗って差し上げましょう」
この場にいないテリアさんにそう言い、剣を抜いてフィリスノヴァ公爵を睨んだ。奴は私の敵意に満ちた視線を傲慢な眼差しで返した。
クレーターの下にいる奴に向かうのがまるで地獄に向かう道のように感じられたが――構わない。
私の家族が亡くなったその日から、私はいつも地獄にいたから。
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