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呪われた森へ(お知らせあり)

 私はすぐ父上の魔道具を通して呪われた森へ転移した。


 安息領が出たとはいえ、まだ暴れているわけではない。そして呪われた森にある基地は父上の強力な魔道具で保護されている。安息領が最初から基地を破壊する目的で決って飛びかかってこない限り、基地が陥落することはない。


 たとえ陥落したとしても対策はあるものの。


 転移してみると予想通り基地は無事だった。そもそも安息領の目的が基地ではなかったのか、彼らの姿が見えもしなかった。


「本当にこの人数で大丈夫なんでしょうか?」


 エリエラさんは不安そうに尋ねた。


 今度私と同行したのはエリエラさんと、彼女を護衛するための我が家の護衛兵数人だけ。私の友人はみんな別の場所に配置した。さらに、イシリンまでも今度は竜人の姿で個別行動中だ。


 安息領はバルメリア全域で活動を始めただけでなく、バルメリア国外でまで蠢動している。正直みんな散開した今でも手が足りないくらいだ。被害を完全に防ぐことは不可能だろう。


 ……何よりも避けられない不吉さと絶望が近づくことが肌で感じられるけれど、それは今重要なことではない。


「大丈夫ですわ。安息領も大きな戦力をここに投入することはできなかったでしょうから。たとえ万が一があっても脱出する手段はありますので、心配しなくてもいいですの」


 平然と答え、精神を集中する。森全体の魔力を探知するために。


 その場しのぎの嘘ではない。実際に安息領がここに投入できる戦力には限界があるはずだから。


 安息領は『バルセイ』での事件をまとめて一度に起こそうとしている。でもそれはすなわち、安息領の方も仕事をするために全力を投入しなければならないという意味。特に『バルセイ』の事件の中には安息八賢人が直接乗り出したものもいくつかある。


 安息八賢人は安息領の最高幹部であり最高戦力。そのような者たちが多数投入される状況であるだけに、指揮下の幹部たちもほとんど出陣する。


 エリエラさんはまだ不安そうだったので少し付け加えた。


「心配しないでください。安息領の主要戦力は大半が他の所で暴れているはずですもの。安息八賢人のうち、今居場所が不明な者は三人ほどいますが、一人は動かないでしょう」


『バルセイ』になかった事件は一旦除いて、あった事件だけを考慮した時、今配置されたはずの安息八賢人は五人。筆頭、テシリタ、ラースグランデの三人は居場所が不明だけど、ここに現れても対策はある。


 筆頭はそもそも動くことがほとんどない。前に一度やられたことがあるけれど、筆頭と『隠された島の主人』の関係を考えると下手に出ることはできないだろう。


 テシリタは『バルセイ』本編での活躍は微弱だ。彼女の真骨頂が現れるのは本編以降の物語を扱うDLCから。しかし今のところ安息領がDLCの事件まで繰り上げる気配はない。


 おそらくこの森に来る可能性のある安息八賢人はラースグランデぐらい。彼女だけなら部下として誰を連れてこようが、私一人で十分勝てる。もしテシリタが同行するなら、さすがの私でも一人で倒すことはできないだろう。けれどもエリエラさんを連れて逃げる程度なら今の私には難しくない。


 そんな判断を振り返りながら森全体の気配を探索していたところ、記憶にある魔力を発見した。


「見つけましたわ。エリエラさんも一緒に行きましょう」


「そうしてもいいでしょうか?」


「むしろこの基地に残った方が危険ですの。私が他の所に行った間に安息領が基地を狙うかもしれませんから。基地の防御技能と護衛があるとしても、その程度を突破するには安息八賢人の力なんていらないんですもの。むしろ私の目と手の届く所にいていただいた方が守りやすいですわ」


 もちろん守ることができるという確信もあったから提案したのだ。


 エリエラさんは決心した顔で頷いた。


「わかりました。できれば直接見守りたいです。我が神様のために」


 何か私に言わなかった神託や似たようなものがあったのかしら。


 よく分からないけど、今は関係ない。


「それでは行きます。みんな気を引き締めてください。ちょっと大変なはずですから」


「え? 一体……」


 ――紫光技〈巨人のポケット〉


 私はエリエラさんと護衛たちを魔力で丸ごと包んだ。そして彼女たちを連れて森の上空に飛び立った。


 手にはすでに始祖武装『天上の鍵』と父上の剣である栄光の剣。二本を固く握りしめたまま、気配が感じられた方向に体を向けた。


 ――天空流〈彗星描き〉


 そして今の私の最速で突進した。


「きゃああああああああ!?」


 エリエラさんの悲鳴を背景音にして飛行するのを、およそ一秒。いや、一秒以下の時間だったのだろう。


 このくらいの距離を飛行するなら、今の私なら瞬間移動と変わらない速さだ。


 ドゴォォンッと森へ()()した。魔力と物理的な衝撃が爆発し周囲を荒らした。森の歪んだ土壌と動植物がすべて吹き飛ばされ、広い空き地が作られた。


 けれどその衝撃を平気で耐える者がいた。


「安食八賢人序列七位、『万華鏡』のラースグランデ。久しぶりだね」


 空間の壁で衝撃波を防ぎ、一人で堂々と立っている女。ディオスの脱獄の時、一度戦ったラースグランデだった。


 安息八賢人が彼女だけであることは予想したけれど、部下が一人もいないというのは少し意外だね。


「貴方一人の力では私を倒せないってこの前証明したはずよ。何のつもりで一人で来たの?」


 たとえ私が来ないと思っていたとしても、このような状況なら私自身に匹敵する戦力を投入しただろう。


 他の者ならともかく、筆頭なら私のそのような性向を予測することができたはずだけど。


 ラースグランデの表情は硬かったけれど、絶望や不利が感じられる顔ではなかった。


「傲慢ですね。いつまですべてが貴方の思い通りになると思いますか?」


「私の思い通りに事が進んだ記憶はそんなに多くないのにね。誰のおかげだろう」


 長い言葉は要らない。


 私とラースグランデは同時に戦闘態勢を取った。


 ――紫光技〈選別者〉


 ――『空間操作』専用奥義〈万華鏡〉

今後の更新周期について、お知らせがあります。

結論から先に申し上げますと、本作はこれから毎日更新されます。


このところ2つの拙作を並行連載していたのですが、会社の仕事や個人的な事情などが次々と重なることで、2つを同時に連載するのが大変でした。

そのため時間の不足で本来の連載周期を守れないことが多く、読者の皆さんにとても良くない姿をお見せしました。


そこでいろいろ悩んだ結果、並行連載をやめて一つに集中することにしました。

もう一方を連載終了というわけではなく、一つを休載し一つに集中して先に完結した後、休載の方の更新を再開したいと思います。


2つの拙作のうち、どちらを先に完結するか悩んだのですが、本作を先に完結することにしました。

正直、現在のプロット上では本作ではない他の方が完結までの道のりはもっと近いのですが、本作が私の最初の連載作ですので愛着が深いです。

それにまだまだ先は長いといっても、どんどんクライマックスに向かって走っていたりしますしね。

この勢いを完結までそのまま続けていきたいと思います。


そして連載作を一つに減らすだけに、その一つに完全に集中できるという判断と、休載の方の連載再開時期を早めるため、毎日更新することに日程を変更することにしました。


今年に入って良くない姿を繰り返してお見せしましたが、連載作が1つになると1日に1話ずつだけ更新する予定ですので、2つを同時に連載する時より時間的余裕がかなり生じる方です。

事情があって更新できない場合もたまにあるかもしれませんが、その場合は別途お知らせします。


では、明日からもよろしくお願いします。

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