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エリエラの話

「相反する神託……ですか?」


「はい。我々は五大神を同等に仕えます。つまり五神に仕えることですから、神託を下してくださるのも一人だけではないのです。時には相反する神託が下されることもあります。ただ……今回のように正面から反対の神託がくだされたのは初めてです」


「突然私を訪ねてこられたということは、その相反する神託が私と関連があるという意味でしょう?」


 エリエラさんは難しそうな顔で「はい」と答えた。


 どんな神託なのか気になるし、私に不利な内容なら警戒する必要もあるだろう。でも五大神教についてよく知らない私としては、あまり意味のある推測ができない。


 こんな時は直接聞いてみるのが最善だろう。


「どんな神託ですの?」


「……そもそも神託は万人に公表すべき性質のもの以外は外部の人に公表すべきではないのですが……この神託については、テリア様を部外者と言うことはできないでしょう」


 エリエラさんは持参した小さなかばんから二枚の書類を取り出した。書かれた文字は両方とも一文ずつだけだったけれど、もらって読んでみた私はなぜあえて二枚に分けたのか理解した。


『テリア・マイティ・オステノヴァの悲願を叶え』


『テリア・マイティ・オステノヴァと『隠された島の主人』の目的を阻止せよ』


 ……一つ目はそれでも少し抽象的だけど、二つ目はとても露骨だね。もともと神託ってこういうものなのかしら?


 眉をひそめているとエリエラさんは苦笑いした。


「そもそも神託とは曖昧で抽象的です。このように具体的で明確な神託がくだされたケースは我々五大神教の長い歴史の中でも十回にも満たないのです」


「解釈……の余地はないようですわね。どっちが貴方方の方針ですの?」


「このように明確で具体的な神託は、それだけ神様が強い意志で望んでいられるというのが我々の普遍的な見解です。その部分は宗派を問わず一致します。……しかし、どちらの神託に従うかという問題で争いがあるそうです」


 私は唇に指を当てたまま、しばらく考えた。


「ふむ。五大神教は各神に仕える宗派が分かれていることをちらっと聞いたことがあります。今回の神託についても宗派によって違いますの?」


「よくご存じですね。正しいです。ちなみに、テリア様の悲願を叶えという神託は『光』がくださったもので、止めろという神託は『境界』のお言葉です」


『光』と『境界』はそれぞれ五大神の名前だ。五大神の正式名称は邪毒神と同じく少し長いけれど、普通はキーワードだけを取った略称が使われる。仕える五大神教でも略称を使ったのは少し意外だったけれども。


 ……ふむ。少し絵が見えそうだね。


「『光』の宗派は私を支持し『境界』の宗派は私を阻もうとするようですね。残りの宗派がどっちにつくか迷っていたり、あるいは各自の判断で内紛が起きていたり。大体そんな感じのようですわ」


「ご聡明な御方だと聞きましたが、さすがにその通りですね。正確です」


 五大神教の内部事情についてはよくわかった。


 問題はエリエラさんがどちらの宗派かということと、なぜ私を訪ねてきたのかということ。


 私を訪ねてくる理由がそれでもある方は私を支持する『光』の方のようだけど、無条件にそうだと断言することはできないだろう。


 エリエラさんは私の表情を見て少し思い当たるように苦笑いした。


「私は『光』に仕える宗派です。ただ……こちらも意見が統一されていませんので」


「あれ? そうですの?」


「はい。どうやら『境界』のくだされた神託によれば、テリア様が邪毒神と関係があるかもしれませんから。だからといって私たちが一番仕える神の言葉にむやみに逆らうというほどではありませんが、もう少し詳しい内幕を調べてみようと考える人たちがいます」


 ふむ。理解できない話ではないね。


 エリエラさんはどちらか一方の立場を支持する人なのだろうか。それとも中立の立場でまず正確な状況を調べに来たのだろうか。


 どちらかによって、エリエラさんも私もお互いへの対応が違ってくるだろう。


 わざと目を小さくして貴方を探索していますっての気配を露にした。するとエリエラさんの顔も真剣になった。


 単なる真剣さよりも緊張に近いかも。


「……一応私はテリアさんが良くない意図を持っていらっしゃるとは思いません」


 他の人たちは違う考えを持っているという意味が含蓄された言葉だね。


 でもいずれにせよ、エリエラさん自身は敵対的な感じではなかった。


「実は『隠された島の主人』については、我が教団でもいろいろと注視しています。その邪毒神と信奉者たちは他の邪毒神や安息領とは違いますからね。だからといって邪毒神を肯定的に見ることはできませんが……テリアさんが関われば、私たちの見方も変わります」


「どうしてですの?」


「テリアさんはオステノヴァの令嬢さんですから」


 エリエラさんは微笑みながら私の後ろの方に視線を向けた。そっちにあるものと言っても本と書類だけなのに。


 しかし、エリエラさんはそこで何を見たのか、ふふふっと笑い声を流した。


「五大神教の信徒としてではなく、個人的にはオステノヴァ公爵家にとても憧れていました。オステノヴァはこの国で最も賢い公爵家ですから。そこでもテリアさんは文武を兼ね備えた賢者であり騎士の御方として有名ですし」


「……私は初めて聞く話ですが」


 訳もなく恥ずかしくて頬を掻いた。本当にあんな話は初めて聞いたけど。


 でもエリエラさんは穏やかに笑いながら自分の胸に手を置いた。


「私も五大神教の信徒として、邪毒神というと基本的に良い印象は持っていません。ですが邪毒神の中で、せめて他の者とは評価が少し違う邪毒神を、他の人でもないテリア様が近づけるのであれば……理由があると思います」

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