奮闘の結果
終結奥義と最終奥義は似たような名前だけど実は意味は全く違う。
終結奥義は目の前の状況をこれで終結するという意味。雄大だけど本質的にはただ奥義の中でももっと強い技に過ぎない。
反面、最終奥義は一つの流派にとって究極の到達点。すなわち極の修練と研磨の末に到達する一つの完成形を意味する。
天空流の最終奥義は私さえも知識だけで知っているだけだ。今の私はもちろんのこと、『主人公』の潜在力の極に達した『バルセイ』のアルカさえも最後の最後まで習得できなかったから。
ついに迎えた実物は……圧倒的だった。圧倒的としか形容できなかった。
たった三度の流麗な斬撃。それが大地に巨大な傷痕を刻んだ。もちろんこれまでの戦いの余波だけでも平原全体を破壊してもお釣りが来る規模だったので、あれほどの傷痕は特別ではない。
しかし見える範囲がそうだといって、その力が特別ではないという意味ではなかった。
「……む」
公爵は眉をひそめて自分の体を見下ろした。
血塗れの体を。
彼の体に刻まれた三本の長い深い線。切断には至らなかったけれど、平騎士なら死に至るほどの致命傷だった。
公爵は仁王立ちしたまま眉をひそめる姿と同じくらい余裕があったけれど、いくら化け物のような者でもあれほどの傷なら万全とは程遠い。
さらに公爵の剣である固有武装の剣身がきれいに切断された。始祖武装さえ破壊が極めて難しく、固有武装は物理的な破壊が不可能だというのがこの世界の常識なのに。
もちろん戦闘が終わったと言うほどではない。
「くッ」
状況は同時多発的に動いた。
母上が血を吐いてふらつき、それを予想した私が公爵に向かって跳躍し、公爵が母上を見てワンテンポ遅れて動いた。
〈五行陣・人〉については私も知らない部分が多いけれど、母上ほどの剣士にさえ莫大な負担になるということは私も知っている。
だから私は母上が最終奥義を放つ時点ですでに動いていた反面、公爵は母上が血を吐いた後に行動を開始した。
いくらフィリスノヴァ公爵がすごくても、出発自体が遅れたら私に追いつくことができない。
――紫光技奥義〈滅亡を閉じ込める巨人の手〉
私が駆使できる最強の拘束力場が公爵を押しつけた。
それでも公爵の動きが少し遅くなっただけ。けれどそのおかげで公爵が剣を振り回すより先に私の奥義が炸裂した。
――天空流奥義〈二つの月〉
大量の魔力が凝縮した双剣で公爵の折れた剣を押さえた。
公爵は大きな負傷を負って〈滅亡を閉じ込める巨人の手〉に押しつけられる状態にも関わらず余裕をもって私の斬撃を防いだ。けれど力比べから抜け出すことはできなかった。
つまり、少しの間でも止まっている。
――オステノヴァ魔道兵団式軍勢術式〈悪しき獣を殺す鎖〉
トリアを拘束した軍勢術式が公爵を束縛した。
「何か狙っているな」
公爵は眉をひそめて腕に力を入れた。でも強力な拘束技二つの重畳に私の奥義との力比べまで重なった状態では、さすがの公爵も動けない。
彼の言う通り、私たちが狙っている何かが襲ってきても。
――オステノヴァ魔道兵団式軍勢術式〈平和呼び〉
上空へ開かれた巨大な空間の門から光が降り注いだ。
魔力量だけを考えると今までの中で最大。すなわち、さっき公爵が私と母上の〈真 太極〉を相殺した奥義以上だった。
二つの拘束技のせいで体も魔力も動きが抑えられ、抑えられた魔力さえ私の〈二つの月〉を活用した力比べで封じ込められた状況。それでも公爵は抵抗しようとしたけれど、今の状態であの莫大な魔力に抵抗する方法はなかった。
まるで雪が積もるように魔力の光が公爵の体に重ねられていき――少しずつ彼の姿が小さくなっていった。
「なるほど。殺せないなら封印するということか」
〈平和呼び〉はオステノヴァ魔道兵団が誇る最強の封印術式。正面でやられば万全のラスボスでさえ封印できる。政治的な意味でも、物理的な意味でも殺せない存在である公爵を制圧できる唯一の切り札。
もちろん、公爵が大人しくやられるはずがない。だから彼が抵抗できないように動きを抑え、その間に〈平和呼び〉を成功させること。それが私が考案した作戦であり、母上と私のすべての奮闘は〈平和呼び〉の術式を完成させるための時間稼ぎであり公爵の動きを少しでも封じるためのものに過ぎなかった。
そしてここまで来た以上、さすがの公爵にももう方法はない。
「面白い選択だ。まぁ良い。しばらくはこの中でゆっくり見物でもするようにしよう」
光に包まれ、次第に小さくなっていった公爵はやがて光そのものとなった。そして最後は私の拳よりも大きくて不吉に光る紫色の宝石となった。
……最後は抵抗ができたことをあえて諦めてくれたような気もするけど、とにかく終わったね。
「母上!」
宝石を一度突き、出てくる気配がないということだけを確認してからすぐに母上の状態を確認した。
「母上、大丈夫ですか?」
「少し大変ではあるけれど、大げさに言うほどじゃないわ」
母上はきっぱりと言った。
けれども母上のお体の具合はなかなかよくなかった。筋がいくつか切れて、骨も折れる寸前のような……いや、折れたのを魔力で無理やりつなぎ合わせた部分もあった。見た目には特別な傷がないけれど内部がめちゃくちゃだ。
これが敵の攻撃による負傷じゃなく、最終奥義を使った反動だなんて。
「これが最終奥義を使ったせいの……ですか?」
「私が未熟だからだけよ」
「剣聖の母上に未熟という言葉は似合いません」
「ふふ、どうでしょうね」
母上は少しふらつきながら『再生』の魔力を体に浴びせた。極光技の強力な魔力でも再生が遅かった。
それでも母上は直接歩いて公爵が封印された宝石を拾った。
「苦労したわね。帰ろうよ」
「はい」
本当に満身創痍だけど、トリアの暴走を防ぎ公爵を封じ込めるという目標はすべて達成した。犠牲なしで。
……戦場になったラグナス平原はどうしても見たくないほどの格好になってしまったけれど、人が死ななかったので幸いなことにしよう。
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