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本体

 そして倒れた。


「っ、オエェェ……!?」


 みっともないと自分自身を叱咤する余裕もなかった。両手で床をついたまま、自分で気づく前に中のものを全部吐き出してしまった。そんな中でも結界の維持だけは何とかやり遂げたが、周りを気にする余裕はなかった。


「ぐぅっ……こ、これは……」


 慌ただしい中、状況を分析するために必死に頭を動かした。


 じっと存在するだけで圧殺されるほど強大で圧倒的な魔力。それが私を苛酷に押さえつけたせいで体が耐えられなかったのだ。今も体が押さえつけられる圧力に耐えるために体が必死に魔力を噴き出していたが、その魔力が体の外に放出される暇さえなかった。


 しかも死なずに耐え抜いたことさえ私の力ではなかった。


【おや。ああなると思って自分自身を守れと言ったのに。助言が足りなかったか】


 歪んだ声を聞いて、やっと頭を上げた。


 真っ先に目に入ったのは結界の壁だった。私の結界の外に別の結界があった。


 目で見る前からすでに知っていた。あの結界こそ私が耐えられるように守ってくれた根源だということを。私の結界だけではきっと持ちこたえられなかっただろうと、巨大な魔力と結界の力を感じるやいなや気づいた。


 そして向こうの存在がどれほど巨大で、手に負えない者たちなのかも。


「あ、あんたたち……は……」


 見てはいけない。


 目が、手足が、全身がそう叫んでいたが、私は無理やり体を起こした。そして結界の向こうを睨んだ。


 ……何も見えなかった。


 いや、見えてる。姿勢や行動も認識できる。しかし、外見を認識することができなかった。場所も、そこにいる存在たちの姿も目に見えたが脳が誰なのかを認識するのも判断するのもできずにいた。見えるのに盲人になったようだ。


 でも存在を認識できないからといって、主観的な判断までできないわけではない。


「あんたたちは……邪毒神、か?」


 円卓をめぐる六人の存在。結界がなかったら私を一瞬にして圧殺したはずの魔力を持つ者たち。頭数も力も『隠された島の主人』の連中といえば納得できる。


 そのうちの一人が口を開いた。


【『軍団長』。どうして彼をここに?】


【こちらの方がお役に立ちそうで】


 禁止区域に結界を設置した邪毒神が『軍団長』か。おそらく『孤独な無数の軍団長』だろう。


 私の質問はそのまま無視されるのかと思ったが、彼らのうちの一人が私に視線を向けた。『軍団長』に質問を投げかけた者だった。


【そう。貴方たちの概念で邪毒神と呼ばれる存在だよね】


「分身を集めて会議でもするのか?」


【単なる分身だったら貴方を生かすために結界を広げておく必要はなかったでしょ】


「何?」


 ちょっと待って。今何て言った? あの言葉の意味はまさか……。


『軍団長』が笑い声をあげた。


【そうだ。ここにいる私たちは分身なんかじゃない。本体だよ。だから言ったんだよ、物理的に死ぬかもしれないと。人間は我々の魔力に耐えられないから】


 ……いろいろと驚愕する部分は多かったが、納得はできた。


 今私の体を押さえつけているのは魔力の圧迫。わざと魔力を放出して圧力を発するのではなく、ただ存在するだけで感じられる魔力の気配が強大すぎで体が持ちこたえられないのだ。


 人間はこれほどの魔力を持つことはできない。最強の人間と呼ばれ、邪毒獣よりも強い力を持つ存在である現フィリスノヴァ公爵でさえあの力には及ばない。邪毒神も世界のどこかに降臨させた分身程度では私をこんなに圧迫することはできない。


 だが力の大きさは理解したとしても、別の問題がある。


「どうして……どうやって私をここに?」


 邪毒神の本体が世界に降臨したなら無事には済まない。あの強力な結界の向こうからも感じられるほどの力が六人も降臨するなら世界が壊れてもおかしくない。


 つまり――私が彼らの本体があるどこかに来てしまったのだ。


『軍団長』が私に質問を投げかけた邪毒神を振り返った。


【『主人』。言ってもいいよね?】


 あの者が『隠された島の主人』か。


 彼、または彼女か。『主人』がため息をついた。


【どうせそんなつもりで連れてきたでしょね。どうしてあえて聞くんですか?】


【私たちが一番警戒しなければならないのは計画を台無しにする危険要素だから】


【それを知っているなら突発行動は控えてほしいのですが。……まぁ、いいでしょ。どうせいつかは知られることだと思ったから】


【ありがとう】


『軍団長』の顔が再び私に向かった。顔が目に見えるのに、その見た目が認識できないなんてものすごく奇妙な気分だね。それに、そのような変な状態を私の頭が明確に認識しているというのも不思議な話だ。


「まずこの認識阻害をなくしてほしいが」


【死にたければそれでいいよ】


「脅迫か?」


【いや、しょうがないってことだよ。その認識阻害は我々の魔力を阻んでくれた副産物だから。一言で言えば、認識阻害をなくすということは私たちの魔力を十分に感じられるようにしてくれるという意味だ。そんなことしたら死ぬよ】


 あの言葉が本当なのかは分からないが、たとえ嘘だとしても私の要請を受諾しないという意味だから仕方ない。


「なら早く本題に行こう」


【言わなくてもそうするつもりだった。どうやってここに連れてきたか、ね? 簡単だ。最初からそこに設置された結界はこことつながっていたから】


「邪毒神がいる所とつながっていたと? まさか本体に移ってくるという……」


【それは不可能だよ。我々が邪毒の影響をほとんど残さず世界に干渉していることを不思議に思っているだろうけど、いくら我々でも本体が行くのは事情が違う。それだけの〝門〟がなければ不可能なんだ】


「なら何のための?」


【逆に問う。『主人』が幅広く啓示夢を散らしたり、世界に頻繁に干渉することがなぜできると思う?】


『軍団長』の言葉を聞いて私は一瞬考え込んだ。


 結論を出すのは難しくなかった。


「……まさか」

読んでくださってありがとうございます!

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