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【仲間か。気持ちいい響きだ】


 邪毒神はそう言ってから真ん中の魔力の塊に手を出した。


 特に目立った変化はなかった。しかしかすかな魔力の流れを詳しく感じてみると、邪毒神の魔力と共鳴しているのが見えた。


 いや、共鳴というより……同調か。もともと邪毒神の魔力だったのだろう。何の目的かは分からないが、そこまで安定している魔力なら今さら私があれを解体することはできない。


 邪毒神は再び私に首を向けた。最初からシルエットしか見えない形状である上、邪毒の霧がそのシルエットまで半分隠していて顔が見えない。でもなぜか笑っているような気がした。


【少し違うが、そちらの概念で表現すればそう言えるだろう。それで? その質問の意図は何だ?】


「邪毒神といっても、『隠された島の主人』の仲間なら考慮することが多くなるから」


 隠す必要はないだろう。すでにテリアさんからが邪毒神たちを区別して接している状況で、あいつらも知っているはずだから。むしろこちらが友好的かもしれないという印象を与えれば情報を得ることができるかもしれない。


 それが通じたのかは分からないが、邪毒神は満足そうな笑い声を上げた。


【百点ではないが、悪くない答えだな】


「最初の質問に答え。なぜ私をここに連れてきたんだ?」


【無駄な道具を改良する時が来たから】


 邪毒神はそう言うと指パッチンをした。すると禁書庫の真ん中の魔力の塊が変化した。


 それが何のためのものなのか見守りながら判断しようとしたが、突然邪毒神の結界が私の足元に現れた。


「なっ!?」


【百聞一見にしかず。余計な説明はいらないだろう】


 邪毒神の力を壊そうと魔力を高めたが、術式を完成する前に邪毒神の力が私の体を吹き飛ばした。


 中央の魔力の塊に向かって。




 ***




「ようこそ、ジェリア・フュリアス・フィリスノヴァ公女」


「ご歓待に感謝いたします」


 ボクはボクを迎えてくれた人々と笑いながら握手した。


 テリアと来たことのあった北方の大陸。邪毒神『凍りついた深淵の暴君』の力によって大陸全体が酷寒の地になってしまったここに、ボクは付き添いと護衛の人員だけを連れて訪問した。テリアをはじめとする友人たちは一人も同行しなかった。


「ここは相変わらずですね」


「もっと大変にならなかっただけでもよかったのです」


 北方の人は本当に大したことではないかのように微笑んだ。


 ここは依然として厳しい寒さと吹雪が地を脅かしている。この環境がもっと過酷になったら耐えられないだろう。しかしここの温度と環境はテリアと一緒に来た時と比べればほとんどそのままだった。


 厳しい寒さの中でも運行が可能な魔道車に搭乗したまま、私は案内員とつまらない雑談を交わした。


「ところでフィリスノヴァ公女様がなぜここを訪れたのですか?」


「確認したいことがありました。ボクが邪魔になりましたか?」


「いいえ、大丈夫です。バルメリア王国の方々は私たちにたくさん助けてくださっていますので、むしろもっと代価を要求しても良いほどです」


 認識が良いのは幸いだが、案内人の言葉にボクは苦笑いせざるを得なかった。


 先日、テリアが北方の大陸を訪問した後、彼女はオステノヴァ家の力で少しでも北方の大陸を助けていた。客観的に言えば支援のレベルが高い方ではないが、その程度の支援だけでも北方の大陸にはかなり大きいのだろう。


 その支援はオステノヴァ公爵家だけのものではない。他の貴族も少しだが加えており、王家すら助力の意志を実践している。しかしそんな中でも我がフィリスノヴァ公爵家だけは全く参加していない。


 どうせ貴族たちも純粋な善意ではない。やや恩着せがましい程度の支援でも良いイメージを構築できるという打算的な考えに過ぎない。しかし偽善といっても結果を出すのと、文字通り何もしないのとでは格が違う。


 もちろんフィリスノヴァ公爵家がそんなバカであるのはクソ親父のせいだ。でもとにかくボクもフィリスノヴァの一員であるためにあんな感謝の目を受けるのは恥ずかしいことだ。


「心配がありますか?」


 案内人がボクに話しかけた。おっと、ちょっと考えるのに余計な心配をかけたな。


「いいえ、何でもありません。それより『凍りついた深淵の暴君』の方はいかがですか?」


「天気と同じです。私たちの昔の王城を占拠しています。テリア様が氷の城壁を切り開いていたことすらそのままです」


 何の脅威も感じないということか。邪毒神だから当然のことであり、そもそもあの時のボクたちの目的は脅威ではなかったが。


 とにかくそこがその時のままならボクにも都合がいい。ボクが護衛と付き添いを除けば事実上一人のまま来たのはその邪毒神と関連したあることを確認するためだし、聞いた通りなら確認するには問題がないだろうから。


 やがて魔道車は邪毒神の片鱗が降臨した場所、ベルフロストの旧王城に到着した。力の中心点であるだけに、近づくほど寒気が強くなった。でも『冬天世界』の能力者であるボクにとってこれほどの寒さは何でもない。


 ……大陸全体は不可能だが、ある程度の範囲なら自分の力で直接こんな天気を再現できそうだな。


「内部にはボク一人で行きます。他の方々はここでお待ちください」


「でも……」


「王城内部は冷気の魔力が非常に強力です。ボク一人で行った方がむしろ安全です」


 ここの住民も、ボクについてきた随行員たちも、あの冷気に耐えることができない。彼らを守るためにボクの魔力を割くのがむしろ危険だ。端的に換言すれば邪魔だ。


 適当な言葉で人々を説得した後、ボクは一人で王城に入った。

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