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邪毒神との出会い

 見かけは何の変化もなかった。しかし魔力の流れが互いに共鳴するのが感じられた。邪毒神の結界と僕の〈虚像世界〉が。


 侵食技が結界を含む一帯を覆ったためだろうか?


 考えてみたけど、考えだけでは答えられない問題だった。そこでまずは結界に近づいてみた。距離はかなり遠かったけど、抵抗する帝国軍をすべて制圧した状況だったので問題はなかった。


 近づく前から結界の姿はよく見えた。いや、正直言って戦い盛りでも結界は視界の隅で堂々と存在感を発揮していた。帝国という強大国の巨大な首都をドーム型で丸ごと包んだだけに、よく見えるしかないだろうな。


 結界のドームは渦巻く真っ黒な邪毒でできていた。しかしそれだけなら強力な浄化能力者が突き抜けることができただろう。実際には邪毒以上に出入りを防ぐ強力な力があった。


 遠くからは具体的なことまではわからなかったけど、近くに行ってみたらはっきり分かった。


「……幻影の魔力?」


 結界の根源は幻影、それも僕の〈虚像世界〉に似た虚実操作の権能に近かった。直接的な進入の試みは物理的に防ぐが、攻撃を加える場合にはそれを虚像化して無効化する力だった。


 僕は手を伸ばした。邪毒神の結界が僕の力と似た能力を持っているのが不思議だった。おそらく結界と共鳴するのもそのためだろう。


 邪毒神の結界にむやみに接触してはいけないということは知っているけど……僕と似たような力だからだろうか。あまり拒否感がなかった。


 そのように不注意に結界に手を当てたのが間違いだった。


「うわあっ!?」


 急に僕を吸い込むものすごい力が感じられた。抵抗する方法を考える余裕さえなかった。


 突然結界に吸い込まれた僕は、そのまま初めて見る光景の中に投げ出された。




 ***




 突然目の前に広がるのが現実なのか夢なのか、最初は見分けがつかなかった。


 何もない空間。ただ闇だけのそこに私一人ぽつんと立っていた。照明などは何もなかったけれど、見下ろすと私の体は鮮明に見えた。


 邪毒神の魔弾が邪毒獣を撃滅した後。魔弾の魔力と共鳴して意識を失ったことまでは覚えている。ならこれは夢? でもこのような何もない光景が一体何を意味するのか分からない。


 でも幸いというか。待つ時間は長くなかった。


【こんなに直接話すのは初めてかな?】


 何の前兆もなく声が響いた瞬間、突然眩しい光源が現れた。


 その形は太陽のようだった……というか、ただの太陽そのものだった。いつか望遠鏡で怖がらず太陽を見た時の姿をさらに大きく拡大したようだった。今にも燃え尽きるような熱気が私を襲ったけれど、熱いだけで体が燃えはしなかった。ちょっと不思議な気分だね。


 本来なら直視する瞬間、目がくらんじゃいそうな光だったけれど、熱気と同様に何の問題もなかった。それで太陽をよく眺めると、内側に何かあるようなシルエットが見えた。太陽の光が強すぎて輪郭をまともに把握することはできなかったけれども。


【恐怖なくこの熱気と光を直視するなんて。そうして間違ったらどうするつもり?】


「あんたは『息づく滅亡の太陽』なの?」


【よくも分かったね】


「慣れた感じがしたから」


 前にテリアと一緒に燃える海を調べたとき。邪毒神の宝石に触れた時、私はこの邪毒神の強烈な魔力と感情を感じた。


 テリアとアルカには何か直接話しかけたようだけど、私には何も言わなかった。ただ感情だけが感じられただけ。


 けれどその時感じた魔力の気配は覚えていた。それが先ほど見た魔弾と今目の前にある魔力と一致した。


 太陽を睨む目に思わず力が入った。


「どういうつもり? どうして邪毒獣を射殺したの? 邪毒神の力まで使いながら」


【今あんたが死んだら困るよ】


「助けてくれなかったら死んでいたということ? 無礼だね」


【事実だから】


 私は眉をひそめて舌打ちをした。


 不快だけど否定はできない。冷静に私とシドの生存率は高くなかっただろう。私の命もそうだけど、シドを死なないようにしてくれたことだけは感謝したいほどだ。


 けれど邪毒神の行為を額面通り受け入れることはできない。


「リディアが死ぬのがどうして困るの?」


【悲しむ存在があるから】


「テリアのこと?」


【……】


 邪毒神の姿は見られなかった。けれどなぜか眉をひそめたような気がした。


【とにかくあんたが今のままでは困る。もっと強くなりなさい】


「それが言葉のように簡単なことだったらとっくに強くなっていたはずよ」


【もちろん簡単なことじゃないよ。だから手伝おうと呼んだんだ】


「何をどうやって手伝うってこと?」


 返事の代わりに指パッチンをする音が鳴った。巨大な太陽しかなかった空間にもう一つ、かすかな何かが現れた。


 何をしようとしているのか分からなくて警戒したけれど……はっきりしたのは一つの映像だった。それでも何を見せようとしているのか分からなくて魔力を発散する準備をしたら、邪毒神が面白いように笑った。


【あんたを殺すつもりだったらあんたに対抗なんてできると思うの? 無駄に力を抜かないで見てみなさい。見るだけでも大いに役立つだろうから】


「それをリディアに信じろって?」


 邪毒神は答えなかった。それだけの価値もないということなのか。


 なんだか腹が立って映像に向かって魔弾を撃った。だけどやっぱりというか、映像を破壊することはできなかった。


 仕方なく映像を見守っていると、ぼやけていたことがますます明らかになった。


 一番最初に現れたのは――。


「……リディア?」


【あんたが強くなるための参考資料だから。何を見せるかは当然決まってるでしょ】


 一体何を見せるというんだ……とかは言わなかった。それが何なのか……私自身でありながら、今の私とは微妙に違うその姿が何を意味するのか、私も理解したから。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!


そして新作を始めました。本作とは雰囲気が結構違いますが、興味があればぜひご覧ください。

https://ncode.syosetu.com/n4192in/

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