対軍制圧
膨大な魔力が一帯に広がり、しばらくして。
……何も起こらなかった。
「何だ?」
帝国の兵士たちは僕の動きを注視した。
目に見える変化がなくても、莫大な魔力が発散されたのは事実。何もないはずがない――そう思っているだろう。
もちろんそれは事実だが、警戒しても意味がないことを彼らは理解していなかった。
「とりあえず出よう。狭くて息苦しいから」
――極拳流〈一点極進〉
天に向かって拳を突く。
本来の僕の拳ではせいぜいテントの天井と共に周辺の軍人たちを吹き飛ばすほどの威力だったのだろう。しかし今は違った。圧倒的な拳圧が周辺のテントまで丸ごとバラバラに引き裂く嵐に変わった。
「うおっ!?」
でもやっぱりエリート軍人だった。迅速に防御の魔道具を展開して風圧を受け止めたのだ。しかもそのまま風圧に乗って距離を広げて武器を再び狙ってきた。
「奴は肉弾戦タイプだ! 遠距離の射撃で相手せよ!」
魔力の斬撃。魔弾。帝国軍の遠距離攻撃のほとんどが僕に浴びせられた。
昔の僕なら手に負えない火力だっただろうが、今は違う。
――『虚像世界』侵食技〈虚像世界〉法則発現〈虚実反転〉
すべての攻撃が僕をただ通過した。まるで実体のない幻想であるかのように。
返礼に巨大な雷電を放った。実体のない幻の雷電が敵の防御を通過した。しかしそれが敵に触れた瞬間、突然実体を得て奴らの装備を燃やした。
「なっ!?」
「げ、幻影です! 〈幻影実体化〉のようです!」
「幻影系能力か。しかし我らの攻撃が通じないのはなぜだ?」
そう叫びながら僕を睨む者がいたが、もちろん口軽く教えてあげるつもりはない。むしろ突進して奴と周りをあっという間に殴り倒した。そして腕を大きく振り回して風圧を起こした。周辺の敵が全滅し、魔道戦車が五台破壊された。
「ふっ!」
軽く地面を踏みにじる。それだけで半径数百メートルに達する大地が壊れ、帝国軍は巨大なクレーターに落ちた。クレーターの外の敵が攻撃を浴びせたけど一つも僕には当たらなかった。
いつの間にか遠くに避難していた司令官がハッと悟りを開いたような顔をした。
「まさか……『虚像世界』か!?」
「幻影系の世界権能のことですか?」
「そうだ。『虚像世界』の権能は――」
その瞬間、僕の魔弾が司令官の口を貫いた。物理的な破壊力ではなく、身体を麻痺させる制圧用魔弾だった。
「特に言ってもあんたらには方法がないから構わないけど、僕の前でのんびり騒ぐ余裕を見せるのはイライラするからな」
一瞬にして司令官の後ろに移動した僕が言った言葉だ。帝国軍は突然移動した僕を驚愕の目で眺めた。
――『虚像世界』専用技〈夢幻の牢獄〉
帝国の首都近隣一帯、帝国軍が展開されている領域全体がすでに僕の〈虚像世界〉の中だ。その全体を脱出できない監獄にすると同時に、無数の幻想が絶えず溢れ出した。
実在しない架空の美しい動物。触れられる虹。そのような幻想的な光景の片隅には、火を噴き出す溶岩や氷を生む雷のような奇妙な現象が溢れていた。そしてそのすべてが帝国軍を……正確には彼らの魔道具を襲った。
彼らはすぐに僕の目的に気づいた。
「奴の目的は魔道具だ! 我らの兵器を破壊しようとしているのだ! 全力で止めろ!!」
「やってみろ。できればな」
乱舞する幻想が実体を得て帝国軍を無力化する。逆に、彼らの攻撃は実体を失った幻影に転落して現実への影響力を失った。
これが〈虚実反転〉の権能。幻想を実体化し、実体を虚像化して戦場を支配する。それだけでなく幻影実体化を応用して自分自身の身体能力と拳の力まで極大化した。
侵食技である〈虚像世界〉が世界の外観を変化させないのも、実際には侵食された領域全体を自由に反転させる侵食技であるからだ。外観が変わらないのではなく目に見えるすべてが真実であることを保証できない世界だから。
……もちろん実際には魔力量の限界もあるし、人間を虚像化することはできない。しかも実体を虚像化することはできるけど、虚像化したからといってそれに干渉して変形させることは不可能だ。今の僕の力では帝国軍を全滅させることはできない。できるとしてもそんな忌まわしいことはしないだろうけど。
しかし、帝国軍は魔道具のスペシャリスト。言い換えれば、魔道具さえ全部壊せば奴らは事実上戦闘不能になる。
「と、止められません!」
「どう対処すれば――ッ!?」
帝国軍の装備を虚像化すれば、もう持って移動することができない。だから虚像化された装備だけが虚空にぽつんと残る。それを再び実体化させると共に、破壊の幻影を実体化して装備を破壊する。
その過程を繰り返すだけで帝国軍は順調に無力化された。
「わかった! 『虚像世界』の力で物質を虚像化させているのだ! 幻影の魔力に対処する魔道具が必要だぞ!」
結局何人かの奴らが僕の力に気づいた。でも魔道具などでは一般的な幻影能力ならともかく『虚像世界』には対応できない。しかもその程度の魔道具すらすでに僕がほとんど壊した。
帝国軍のすべての装備が破壊され、魔道戦車のような兵器まですべて破壊されるのにそれほど時間はかからなかった。
「ば、化け物……」
「バルメリア王国には僕なんかよりずっと強い強者も多いんだ。あんたらが本当に侵攻したら虐殺されただけだっただろう。むしろ慈悲を施してくれたから感謝しろ」
念のため侵食技の中の敵がすべて無力化したかを確認した。幸い、見逃したものはないね。たとえ見逃したことがあっても、この程度ならすでにバルメリアに侵攻する考えはできないだろう。自慢の武器をほとんど失ったから。
確認まで終えた後はバルメリアに帰るつもりだったが……突然妙な魔力の鼓動が感じられた。
「うむ?」
帝国の首都の方だった。
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そして新作を始めました。本作とは雰囲気が結構違いますが、興味があればぜひご覧ください。
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