強敵に立ち向かう
シドが不審者を制圧している間、私は邪毒獣に全力の火力を浴びせた。
――〈進軍宣言〉武具作成『赤いゾウ』十丁
十本の『赤いゾウ』全部に戦術魔弾〈地獄の門〉を装填した。そのすべての照準を邪毒獣に合わせた。
――『赤いゾウ』専用射撃術奥義〈地獄門隙間からの視線〉
今度は周辺の熱気を魔弾が吸収し、数千倍に増幅して魔弾自体に集中する射撃だった。それが十発重なり、射線周辺のすべてが凍りついて壊れた。
邪毒獣は莫大な熱が凝縮された十発の魔弾を三本の右腕で全部受け止めた。凝縮された熱と暴圧が邪毒獣の皮膚を少し破壊した。けれど大きな傷ではなかった。
「バァァァァァァァァ!!」
突進してきた邪毒獣の拳を、上に高く跳躍して避けた。そして『黄色い虎』と『赤いゾウ』の魔弾を浴びせた。邪毒獣にダメージを与えるよりも、爆発の余波でさらに距離を広げるのが目的だった。
――〈進軍宣言〉武具作成『青のワニ』十丁・『灰色の猿』二本
装甲破壊用大型拳銃を十本具現し、近接炸裂型マチェテで双剣を構成する。都合二百二十本の火器で火力を構成する一方、マチェテ双剣で近接に備えた。
邪毒獣は大きなダメージを受けなかった。けれど、うるさく爆発し火炎を撒く『結火』が気になったのか、ヒステリーのように腕を振りまくっていた。おかげで私に近づいてくる気配がまだない。
その時シドが近づいてきた。
「あいつ、知能が低いみたいだね。テリアが討伐した奴は狂ってはいたが知能は高かったと聞いたけど」
「その代わり体はもっと丈夫そうだけどね。それよりシド、さっきのあいつは?」
「ルードサム卿だった。だまされたのではなく自発的に安息領に加担したバカだったんだ」
「じゃあ有用な情報を持っているかもしれないね」
それ以上は聞かなかった。どうせシドが自分でやったはずから。
それに今私たちには目の前の邪毒獣がもっと重要だ。
「本国に支援要請は?」
「やった。でも本国もいろいろ忙しいから迅速な支援は不可能だろう。いくら邪毒獣が最優先対処順位だとしても、すでに作戦行動中の部隊を帰還させて派遣するには時間がかかるだろうから」
「それまでここで耐えればリディアたちは死ぬはずよ。……でも逃げることはできない。ムアルタの罪のない人々が犠牲になるから」
「そう言うと思った。それでは俺たちも限界を越えるしかないね」
シドは短剣をつかんで前に立った。しかし私は彼の肩をつかんで引っ張った。
「リディアが前衛を務めるよ。あんたには力をできる限り集めてハセインノヴァの奥義を使ってほしいわよ」
「え? いや、お前は火力に集中しろよ。俺が奴の注意を引くから」
「ハセインノヴァは正面から力比べに長けた公爵家じゃないでしょ。大丈夫、リディアを……アルケンノヴァが築いてきた歴史を信じて」
右手をあげて見せた。握っているマチェテと指にはめている『武神の指輪』を誇示するように。
シドはその意味に気づき、歯を食いしばった。
「……気をつけてね。絶対に死ぬな」
「リディアのセリフよ」
今度は私が突進する。
もちろん無駄に意地を張っているわけではない。火力で邪毒獣を制圧できれば最高だ。けれど……その火力が無限じゃないというのが問題だ。
『無限の棺』は魔力効率が非常に良いけど、作り出すことができるのは物質的に武器と呼べるものだけ。でも私が使う弾丸は『結火』の魔力を束ねた塊に過ぎない。すなわち『無限の棺』でも〈爆炎石〉と『魔弾』を量産することはできないのだ。すでにある魔弾を精製して別のものに変えることはできるけれど。
まだ保存しておいた分量で持ちこたえているけど、そっちはもうすぐ底をつく。魔力で作ってもこのペースならすぐ枯渇するだろう。でもペースを下げれば邪毒獣を阻止できず、邪毒獣に通じるほど強力な一発を作ろうとしても時間がかかる。
だからむしろ大きなダメージを与える役割をシドに任せ、私は剣を使って効率的に邪毒獣の注意を引く。
「はああっ!」
『灰色の猿』の双剣を振り回しながら、内蔵された〈爆炎石〉で注意を引く。邪毒獣が振るう腕と足を剣で受け流したり避け、熱気と魔力が集中した刃で肌を切った。ダメージと呼ぶのも恥ずかしいレベルだけど、奴を挑発するには十分だった。
『武神の指輪』が率いる通りに剣術と〈爆炎石〉で攻防を繰り広げ、時々射撃で奴の動きを牽制する。その間、余裕分の魔弾の一部を『無限の棺』の中で一つにまとまり、再び精製した。私が使える最強の一撃のために。
その間にシドの準備が先に終わった。
――ハセインノヴァ式暗殺術終結奥義〈黒線一文字〉
邪毒獣の後ろに現れたシドが閃光のように動いた。彼の小剣に宿る漆黒の魔力が美しい線を描いた。
けれどそれが邪毒獣の体を切る直前、突然奴が体を回転させた。巨大な右腕がシドを狙った。
突然の奇襲、恐ろしいスピード。しかしシドは対応した。小剣の軌道を無理に変えて、邪毒獣の右腕一本を切り取ったのだ。奴の右腕がきれいに切断された。
けれど残りの二つの右腕がまたシドを狙った。強力な奥義を放って隙が生じた彼を。
「ダメ!!」
〈爆炎石〉の爆発と私の脚力を合わせて、私自身を砲弾のように発射した。そして『無限の棺』を再び一つの棺の形に戻して盾として使った。
始祖武装は非常に堅く強力な魔道具。この程度の大きさなら単純な盾や鈍器としても効果的だから。
「くっ!」
「わっ!?」
拳の直撃は防いだ。けれど力に押されて飛ばされてしまった。途中でシドとぶつかって彼も一緒に飛ばされた。『無限の棺』の向こうから伝わった衝撃と墜落して転がる感覚が痛みをもたらした。けれど邪毒獣に殴られるよりはマシだろう。
もちろん安心することはできない。腕一本を切られた邪毒獣が怒りに満ちた目で私たちを睨んでいたからだ。
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