リディアの乱入
シドが言った座標には大きな建物があった。
外観は平凡だったけれど、内側に強力な魔力が流れているのが明らかに見えた。具体的なことを調べるほどの目はないけど、空間系ということだけは分かるね。
魔力の飛行で建物に近づいた私は、目で建物の耐久性と魔力の堅牢さを判別した。
――『結火』専用奥義〈破滅の歯〉・砲弾型
『黄色い虎』の出力を最大まで上げ、最適化された形の砲弾を装填した。照準は建物の出入り口に。
照準よし。魔力よし――発射!
トゥカァンと大きな音が響いた。砲弾が着弾した位置から建物にクモの巣のように複雑できめ細かい赤い亀裂が生じ、爆発を起こしたのだ。対象に魔力を浸透させて対象を直接爆破する魔弾だ。
その一撃で建物の三割がぶっ飛ばされた。中に流れていた空間の魔力も大きく乱れた。おかげで内部構造がめちゃくちゃに入り混じって破壊されたのが見えた。
けれど中心部の巨大な部屋だけは大丈夫だった。
「……空間の迷路が展開された建物を一発でこれだけ吹き飛ばすとは思わなかったよ」
中のシドは唖然と呟いた。
状態を見ると大きな問題はなさそうね。細かい傷はあったけど致命傷と呼べるものはなかった。でも強い敵がかなり多いようだし、ハセインノヴァの後継者である彼に不利な状況だけに大変だっただろう。
一方、何か偉そうな奴が私を睨んだ。
「情報にあったアルケンノヴァの小娘だな」
「リディアはあんたなんか知らない。知る必要もないけど」
『黄色い虎』を発砲した。あいつは砲撃を避けて後退した。でも爆発がシドの周辺を広く襲った。シドだけ正確に避けて。
そのように余裕のできた空間に着地した。
シドをまた見たら、やっぱり致命傷はないけどそれなりに苦労した様子だった。一つ一つは擦り傷レベルの傷だったけどそれが全身を覆っていて、魔力もかなり消耗したようだった。私に支援を要請する前からこうだったのか、それともその後私が来る短い時間の間にこうなったのかは分からないけど――ムッカつく。
「シド。本気で行くわよ」
「補助する余裕はくれッ……!?」
シドが何か言っているようだったけど、無視して最大出力で『黄色い虎』の砲撃を放った。砲弾が飛ぶ衝撃波と着弾の爆発が前方を襲った。
「おい! 全部殺したらダメだって! 捕まえて情報を尋問する奴らは残しておかないと!」
「この程度で死ぬ奴らだったらあんたがそんなに苦労もしなかったはずよ」
予想通り爆炎の中から飛びかかる奴らがいた。絶命したのは相対的に弱い魔物数匹だけ。その上、安息領の奴らは死ぬどころか重傷を負った奴さえいなかった。
近づいてくる魔物を銃撃で射殺し、遠距離攻撃を迎撃しながら奴らの動態をもう少し調べた。
「どうやら魔物を前面に出す作戦のようだね。安息領の奴ら、ローレースオメガの力を発動したくせに後ろから援護射撃ばっかしているじゃない」
「さっきからそうだったんだ。そもそも異界の魔物以上に強い奴はここの指揮官ぐらいしかいないようで、人員消耗を避けようとしているようだよ」
「ふぅん。シド、魔物がなくて安息領の奴らだけいれば相手にできる?」
シドは一瞬戸惑う顔をしていたけれど、すぐ私の意図に気づいて微笑んだ。
「もちろん。時間はかかるけど、お前が合流してくれるなら問題ないんだ」
「よし」
話はそれで終わり。私とシドは同時に動いた。
シドは特有の移動術で安息領の男たちに直行した。魔物の一部が彼に反応して動いたけれど、その時すでに私は左手の『赤いゾウ』に大量殺傷の魔弾を装填した状態だった。
――『赤いゾウ』専用射撃術〈巨足の行進〉
拳銃が連続で火を噴いた。魔弾自体の力と広域殲滅に特化した『赤いゾウ』の力が結合し、一発一発の直撃と衝撃波が多数の魔物を吹き飛ばす虐殺の弾幕が完成した。異界の魔物の中で比較的弱い個体とローレースアルファは弾幕に耐えられず体が爆発した。強い個体も数発の弾丸が直撃すると体が粉砕された。
「グオオオオオ!」
大きな魔物が飛びかかった。『赤いゾウ』の射撃を弾くほど丈夫な奴だった。
――『黄色い虎』専用射撃術〈虎王の猛威〉
衝撃波と爆炎を撒く砲撃が魔物の上半身を吹き飛ばした。しかし奴の身体が堅固すぎて砲撃の威力がすべて消尽し、その隙に他の魔物三匹が三方向から一斉に私を襲った。
「ふん!」
足元を爆発させて奴らを牽制しながら同時に上に跳躍した。そして下に『黄色い虎』の砲撃を一発撃って奴らを撃殺し、上から戦場の状況を一度見回してみた。それで配置をすべて把握した後、『赤いゾウ』の速射で多数の魔物の頭を吹き飛ばした。
「ち。やっぱり多いわね」
今の私たちにはザコに過ぎないローレースアルファは大丈夫だけど、異界の魔物の方は一匹一匹が強いのに数も多かった。一匹を殺すのは瞬殺だけど、本来なら一度に数匹を撃殺したはずの射撃でも一匹二匹しか始末できなかった。そのせいで奴らが接近する余裕ができていた。
シドの方は奮発していた。私の火力に対処するために魔物のほとんどが私の方に集中している状況であるだけに、あちらはそれでも楽だろう。だけどシドは『地伸』の力で広域能力を補完したとはいえ本質的には対人戦のスペシャリストであるハセインノヴァだけど、安息領の奴らは緊密な連係と個人の強い力でシドの長所に対処していた。戦況はシドがわずかに有利だったけれど膠着状態に近い。
状況を確認し、『赤いゾウ』の弾倉を開いた。装填するのは戦術魔弾〈地獄の門〉。そして照準するのは――安息領の指揮官。
――『赤いゾウ』専用射撃術奥義〈地獄門の炎〉
魔弾が飛ぶにつれて莫大な熱気が沸き立った。周囲の熱を数千倍にまで増幅する力が大量の魔物を粉砕し、床を溶かした。
まっすぐ飛んでいった魔弾が正確に指揮官の腹部に吸い込まれた――。
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