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潜入突破

 ルアルーム基地警備隊長。俺、ルバル・エフィトンがこの職に赴任して以来、疑問のようなものを抱いたことは一度もなかった。国境地帯の要衝地であるここの守備を指揮する役割とは、すなわち国境守備の責任を負うということだからだ。負担を感じたがそれ以上の自負心があった。


 しかし、今日だけは心が揺れるしかなかった。


「何が起こったのか!? 早く報告しろ!」


「ほ、砲撃です! 奇襲砲撃が城壁を打撃しました!」


「それは俺も見ているから知っているぞ! そうじゃない、なぜ国内方向から攻撃されているのかということだ!!」


 警備システムが突然の襲撃合図を送った。高火力の砲撃が我らムアルタ公国の内側方向から浴びせられたのだ。外ならともかく、内側から俺らを敵対する兵力なんてないはずなのに!


 まだ受けたのは一撃だけだが、城壁の魔力障壁の一階がその一撃で破壊された。破壊範囲は狭く、城壁の防御が最大出力ではないが、そもそもこの国には一撃でこの基地の魔力障壁を破壊する兵器が存在しない。


 未知の戦力は恐ろしい。でも少なくとも外部から流入した力であることは確かだ。純粋な祖国の兵力ではないから気楽に敵対できる。


「砲撃位置と敵の規模は? そろそろシステムの魔道具が把握したはずだ!」


「はい! ……一人!? 一人です! 距離が遠すぎて詳しい様子を把握することはできませんが、一人しかいません! 大規模の砲撃装備は観測されません!」


「一人だとぅ!? そして観測装備で詳しい様子が把握できない距離? その距離で魔力障壁の一階を一撃で破る砲撃を放つ個人ということか!? ……いや、待って」


 我らムアルタ公国にそのような人間はいない。そして周辺国と呼べる国は三ヵ国、その中でその程度の力を持った個人を輩出する国は一ヵ国だけ。バルメリア王国だ。


「相手はバルメリア王国の人間かもしれないぞ」


 ルードサム卿が推進していることがバレたのか。それならこのように奇襲をかけてくるのも納得できる。いや、たとえそうでなくても、これを口実に我ら独立派の立場をさらに高めることができる。


 そう考えるとかえって笑いが出た。


「城壁の防御性能を最大出力に上げろ! 次の砲撃が続かない理由は知らないが、一撃で終わるわけがない! 次の砲撃が放たれる前に急げ、早く!」


「イエッサー! ですが防御性能を最大出力に設定すれば他の機能が弱体化します。どう対応しましょうか?」


「目の前の脅威にまず対応することが重要だ。性能の限界は仕方ない」


 これまでの城壁のスペックは、強化された城壁本体の前に三重の魔力障壁が展開された形。しかし防御性能を最大化すれば城壁の本体もさらに強化され、障壁は六重に増える。破壊された部分の修復は遅いだろうが、新たに展開される障壁で耐えながら修復すればいいだろう。


 そう思ったが、出力最大化が終わる前に異変が起きた。


「け、警備隊長! 城壁に異変が……!」




 ***




「よし、リディアはやっぱりすごいね。射程距離に魔力を消耗するために威力を犠牲にしたのに、あれほどの破壊力なんて」


 ルアルーム基地の城壁の前で魔力障壁を観察する。壁は三枚展開されていたけど、真っ先の一つに大きな穴が開いていた。二つ目の障壁にも傷がついているね。


 次の砲撃で突破できるけど、リディアは撃っていなかった。もちろん作戦通りだ。


「基地の警備隊が押し寄せる前に進入する。全員準備」


 指揮下の部隊に指示を出し、『地伸』で作った短剣を握った。その間に部隊員たちが鋭く圧縮された魔力の刃で魔力障壁に穴を開けた。完全な障壁ならともかく、最初の砲撃で壊れて不安定になった障壁に穴を開ける程度は難しくない。


 最後に城壁の本体。これは俺の出番だ。


 ――『地伸』専用技〈岩切り〉


 石を操る力で石を切り裂く。城壁はきれいに切断され、俺たちが通る穴ができた。


「進入」


 今回の作戦に同行した部下は二十人。俺と一緒に全員が基地内に入るのはあっという間だった。


 俺たちは進入するやいなや散開した。ムラヒム国壁を変質させようとする魔道具の正確な位置を探すためだ。候補になるほどのポイントは事前に共有しておき、誰でも発見次第全員に知らせる予定だ。時間はあまり必要ないだろう。


「ふむ。追撃隊かな?」


 追い付く気配が感じられた。


 やっぱり警備隊もバカじゃないらしいけど、人数が少ない。俺たちが進入した後にリディアが再び砲撃を再開したようで、人員のほとんどがそちらに必要だからこちらに割く人員は少ないようだね。


 まぁ、多くても少なくても同じだけど。


 魔力で姿と気配を隠し、指定されたポイントへの近道を素早く探して前進する。ムアルタの追撃隊をはぐらかすほどのスピードに隠密性まで加えて自由に捜索する。基地内はそれなりにいい都市だったけど、構造自体は丸見えだから活動しやすいね。


 そのように探し回っているうちに、明らかに怪しい場所を見つけた。いや、怪しい気配を感じたというか。ちょうど部下の二人が俺より先にそちらに向かっていた。


[怪しいポイントを見つけた。先行している二人、まず見て報告するように]


 例のポイントはかなり大きな建物だった。俺の目にもそれが見える頃、先行要員の報告が入ってきた。


[内部は空間の魔道具で拡張されています。構造が複雑なのが迷路化も兼ねているようです]


[内部に何があるか?]


[まだ平凡な建物の姿しか見えません。ですが警備どころか通り過ぎる人が一人もいません。感覚から見て、空間自体の迷路化で侵入者を永遠に迷わせる罠かもしれません]


[空間の拡張と迷路化か。空間能力の安息八賢人であるラースグランデがあるかもしれない。万が一、ラースグランデと遭遇したら逃げることさえできない。いつも魔力の気配を心がけるように]


 指示を出す頃に建物のドアに着いた。出入りを阻む魔力や罠は特に見えないね。


 速やかに判断し、直ちに突入した。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

一個だけでもいいから、☆とブックマークをくだされば嬉しいです! 力になります!


そして新作を始めました。本作とは雰囲気が結構違いますが、興味があればぜひご覧ください。

https://ncode.syosetu.com/n4192in/

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