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テリアの態度

 尋問は順調だった。


 安息領の奴らは最後まで協力してくれなかったけれど、彼らには魔道具の力を防ぐ方法がなかった。結局私が必要な情報をすべて得るまで、有意義な妨害など全くなかった。


 安息領の内部事情や何をしようとしているのかもかなり分かった。でも最高の成果はトリアについてだった。特に筆頭がトリアを連れていることと、今どこにいるのかまで知っているのは意外だった。


 けれど筆頭がトリアを拉致し、これまで連れている理由だけは解明できなかった。やっぱりそれだけは簡単に共有されてないみたいね。いくつか予想していることはあるけど明確な情報がないため、それを確信に変えることはできない。


 まぁ、それでも十分有意義な情報だったからいいのよ。


「そろそろあんたの番だね」


「……ふん」


 ディオスを見ながら話すと、彼は気に入らないように鼻を鳴らした。


「どうせその魔道具で頭の中を勝手に覗くだろう? 勝手にしろよ」


「まぁそれはそうだけど、あんたの口から直接聞きたいこともあるのよ」


「余計なことをするな。どうせ魔道具で頭の中をのぞき込むくせに、どうして俺の口から聞くってことかよ?」


「あんた自身が何をどれだけ考えているのか、あんたの口で聞くのも結構意味があるの」


 この魔道具はあくまでも記憶を情報として発掘するだけ。感情と心を知るには限界があるから。


『バルセイ』のディオスはリディアの座を奪うために安息領と協力し、結局はリディアのルートでラスボスになった。性格も言動も明確な奴だったけれど……安息領と協力するという手段を選んだ理由だけはまともに扱われなかった。


 もちろん、地位を獲得するために勢力を作るのは当然のことだ。けど、なぜその対象がよりによって安息領だったのかは『バルセイ』でも曖昧に出てくるだけだった。バルメリア王国の四大公爵家は安息領にとっては最大の敵であり、四大公爵家側も安息領を大きく敵対しているから。特に、それぞれ一つの騎士団を統率するフィリスノヴァとアルケンノヴァは安息領とお互いへ歯を食いしばる関係だ。


 安息領の方はディオスと協力し、彼を公爵にさせるとアルケンノヴァ公爵家を掌握できると期待できるだろう。でもディオスの方のメリットがあまりない。リディアを排除することは可能かもしれないけれど、安息領と結託したことが知られれば他の公爵家や王家がじっとしているはずがない。あれこれ言うまでもなく王国法で重刑を免れない重罪だ。


 しかしディオスはそのような者たちと結託した割には、行動が秘密ではなかった。あからさまにさらけ出すほどじゃなかったけれど、『バルセイ』でもこの現実でも簡単にバレてしまったから。


「ディオス。安息領とはどのくらい長い間交流したの?」


「さぁな、結構前だったぜ。意味がなくて思い出せないんだ」


「あんたを安息領に紹介したのはピエリなの?」


「彼はアカデミーの教師で、俺は生徒として彼と交流があった。簡単に想像できる問題だろうが」


「ピエリや安息領から何をもらったの?」


「安息領の奴らが扱うのは明らかだぜ」


 ディオスの答えは大体こんな感じだった。やっぱり協力してくれないね。すでに予想していたことなのでイライラはしないけど、ディオスの本音を彼の口で直接聞きたかったので少し残念だ。


 才能あるし父親の寵愛を受ける妹を嫉妬し憎んだ男。その憎しみが間違った道に進んでしまい、ついに自分自身の破滅を招いた。『バルセイ』でディオスの叙事はそれだけだった。


 ……彼の本心を知りたがるこの気持ちが同情だったら。彼を救いたい気持ちだったらよかったのだろうか。


 思わず失笑がこぼれた。さっき容赦なくエヴァンドスの頭をテーブルに打ち込んだのもそうだし、時々私自身が見せる冷酷さにもう完全に適応してしまった。むしろそれをおかしいと思ったのが前世の感性のせいだろう。


 別にディオスを同情する気持ちも、救うつもりもない。ただ、彼の動機と内面をもっとよく理解すれば、安息領の意図をより簡単に壊すことができるから――そのような心だけがあった。ディオスのラスボス化を防ぐつもりなどなく、ただいつどの程度のレベルになるかを突き止め、より簡単に対処しようとする考えしかない。


 正直、ディオスは破滅しても自業自得だしね。


「まぁ、情報はそれなりに得たからいいわ」


「ち、やっぱり魔道具で頭の中を探しながら何のために返事を求めたのかよ?」


「私の勝手よ。それより次に進むわよ」


「何を……」


 私はディオスの頭を手でつかんだ。ディオスは突然の行動に不快な声を上げたけれど、拘束された彼は私の手を振り払うことができない。まぁ……拘束されていなくても不可能だったと思うけど。


 問答無用でディオスの体に魔力を注ぎ込んだ。


「かなり安息領のものをたくさん受け入れたようね」


「何をする……」


「人間として生きたいなら黙って受け入れなさい」


 ディオスの体に浸透させた魔力を通じて体の状態を検査する。『浄潔世界』の特性を持つ私は他のことはともかく、邪毒と関連したことだけはこの世界の誰よりも精密にできる。その能力でディオスが邪毒の影響をどれだけ受けたかを確認した。


 安息領の魔道具は何であれ、結局邪毒と関連がある。けれど魔道具ごとに影響を及ぼす身体範囲と方式が少しずつ違う。それを知っていれば逆に体の状態を通じてどんな魔道具を使ったのか逆算することができる。


 もちろん厳密に分割して確認するのじゃないだけに限界はある。でもディオスの状況なら大体予想はできる。


「やっぱり危ないものを使っているわね。あんたバカなの?」


「どういうことかわからないな」


「人間として死にたければ知らんぷりしない方がいいわよ。まぁ、そこまで言っておくわ」


 ディオスの体内に残っている邪毒を『浄潔世界』で浄化しておいた。もちろん彼のためじゃなく、彼のラスボス化をできるだけ遅らせるために。


 ディオスの状況がどうなのか大体わかってからイライラしたけれど、わかったという事実自体は悪くない。

読んでくださってありがとうございます!

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