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圧倒と対処

「この応用技に余裕を持って対処するなんて。貴方は化け物なのですか?」


「安息八賢人にそんなこと言われたくないもの」


「二十歳にもならない年齢でそれほど強くなった者はわたくしの知る限りありませんよ」


 大げさに言っているけれど、ラースグランデもイライラしているだけだ。余裕は十分あるように見えるわね。


 数多くの欠片が万を越えて億に達する衝突回数を達成した瞬間、ラースグランデが先に変化を起こした。ラースグランデの欠片が私の欠片を弾き出してしばらく暇を作る形の動きだった。


 もちろん、この程度で私を攻撃するほどの隙を作り出すことはできない。けれど……ふむ、〝あのパターン〟だね。


 ラースグランデの狙いを破るのは難しくない。でも私はわざとその意図に合わせてあげることにした。


 ラースグランデの刃片が一つに集まって巨大な剣を形成した。同時に私も刃片を集めて魔剣に復旧した。


 ラースグランデは私が自分の意図に従ったことに眉をひそめたけれど、予定通りに剣を振り回した。


 ――『空間操作』専用奥義〈断界描線〉


 ――天空流奥義〈五行陣・木〉


 斬撃と斬撃が激突し、魔力が爆発した。余波が空間を揺るがし――そのすべてを私の斬撃が切り裂いた。


「どうやって……!」


「〈五行陣〉は世界を利用する剣術だから。空間能力といってもある程度切れるのよ」


〈空に輝くたった一つの星〉のすべての力を〈五行陣・木〉に込めて解放した。圧倒的な斬撃が〈断界描線〉の空間切断を突破してさらに進んだ。ラースグランデを斬るために――じゃない。


 ラースグランデはすぐに私の意図に気づいた。


「しまっ……!」


 でも遅れたわよ。


 ラースグランデが慌てて後ろを確認した瞬間。伸びた斬撃が〈万華鏡〉に大きな傷を残した。


〈万華鏡〉のように複雑な空間術式くらいになれば〈五行陣・木〉でも一撃で破ることはできない。けれど結界の半分ほどを吹き飛ばした。これだけ術式が破壊されたら、時間が経てば自滅するだろう。さらに万全の〈万華鏡〉は結界外の空間にも自由自在に干渉できるため、これまで戦闘に活用されてきた。けれどあんなに壊れるとそれも不可能だ。


 ラースグランデの顔に焦りが漂っていた。


 今までラースグランデは私だけでなく父上とケイン殿下の方まで一度に相手にしていた。いや、相手にしたというよりも〈万華鏡〉の力で父上とケイン殿下の方を牽制しながら私を制圧することに集中していた。けれど〈万華鏡〉の外部干渉が無力化されれば、間もなく父上とケイン殿下の方がこっちに加勢するだろう。そうなればいくらラースグランデでも無事には終わらない。


「ぐっ!?」


 すぐに飛びかかって剣を振り回した。刹那の瞬間に数十、数百回の斬撃をラースグランデに浴びせた。ラースグランデは空間の防壁を次々と展開して防御したけれど、空間制御の質も展開速度も一段階落ちた状態だった。〈万華鏡〉が壊れたから当然だろう。


 でもラースグランデの目は諦めた人のそれではなかった。


 ――『空間操作』専用奥義〈アルキアの九つの城壁〉


 空間を遮断する九つの巨大な防壁が展開された。二枚は〈万華鏡〉を完全に包み、残りの七枚はすべて私を阻む形だった。


 自由自在に動きながら空間を遮断できる強力な防御技。たとえ私がこれを迂回しようとしても、防壁が動いて私を止めようとし続ける。これを突破するには力で壊すしかない。


 それ自体はできる。けれどラースグランデの目的は私を完全に封鎖することではない。


「ふぅ……せいやぁっ!」


 ――天空流奥義〈五行陣・木〉


 しばらく集中して魔力を集めた後、〈空間中和〉の力が込められた究極の斬撃を放った。私を阻む七枚の防壁すべてを一撃で破壊し、〈万華鏡〉を守る防壁までも一枚破壊された。でもそこで斬撃の力がすべて消耗した。


 最後の一枚の向こうから強力な魔力が感じられた。


[貴方は強いです。わたくしよりももっと。それは認めます。ですが……]


『空間操作』の力で空間を越えた思念通信が来た。


[そもそも私の目的は同志たちを連れてここから離脱すること。形は構いません]


 ――『空間操作』専用技〈空間置換〉


 最後の防壁を壊すより〈万華鏡〉の内側から巨大な技が発動する方が早かった。少し遅れて〈アルキアの九つの城壁〉の最後の壁と消えていった〈万華鏡〉が突然一斉に消滅した。


 その場には誰もいなかった。安息領の兵士たちも、ラースグランデも。


「これはどういうことですか?」


 ケイン殿下が近づいてきた。でも私が答える前に、反対側から近づいてきた父上が先に口を開いた。


「〈空間置換〉です。選択された二つの空間を置き換える技です。本来遠くに逃げるための技ではありませんが、大量の魔力を注ぎ込んで無理矢理実現したようですね。〈万華鏡〉は最初からそれを準備するための時間稼ぎの目的だったのでしょう」


 父上が私を見た。その目が何を言おうとしているのか気づき、私は頷いた。ケイン殿下は首をかしげた。


「逃した割にはのんびりしていますね。対応法がありますか?」


「〈空間置換〉はもともと隣接の空間を変える程度の技です。それを長い時間と大量の魔力を使って無理矢理遠方への転移を実現しただけです。ですが無理な使用なので跡が濃く残ります。最初からその手段を使わなかったのもそのためでしょう」


 父上が空を見上げた。父上の目から魔力が輝いた。何を見ているのか、何と共鳴しているのか知っているので、私は静かに待った。


 待つ時間は長くなかった。


「見つけました」


「どうやって……?」


「衛星軌道に乗せた衛星魔道具があってですね。本来狭いエリアをピンポイントで探すにはあまり向いていませんが、移動した座標を知っていればそこを中心に探すのは簡単なことです。一度見つけたら移動中でも追跡し続けることができます」


 ふと父上が微笑んだ。父上の視線がまた私に向けられた。


「テリア。追撃するつもりだろう?」

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