ラースグランデの進撃
――『空間操作』専用技〈七刃の王冠〉
空間の刃がラースグランデを閉じ込めた〈粛清の刑場〉をめった切りした。それだけでなく騎士団の部隊にまで攻撃の余波が届いた。部隊が放った攻性魔力まで丸ごと。
「慌てるな! 魔力が霧散しただけだ!」
――ケイン式結界術〈血壁の刑場〉
今度はラースグランデを私と共に閉じ込める血色の結界を展開した。〈粛清の刑場〉に結界魔獣の力を融合して遥かに強化させた自信作だ。もちろん結界が押さえつける対象はラースグランデだけで、外から入ってくる支援射撃も影響を受けない。
しかし、ラースグランデは依然として満足できない表情だった。
「まさかこれが殿下の戦力ではないでしょう?」
ラースグランデは平たく押さえつけられて死んでもおかしくない圧力の中を平然と歩き回った。
……いや、動きが少し遅くなったのを見ると、影響を全く受けないわけではない。しかし肌の下で激しく沸き立つ魔力が感じられた。〈血壁の刑場〉に愚直な力で抵抗しているのだ。
「ふぅっ!」
空間の刃が荒々しく暴れた。私は〈遍在分身〉が作り出した十数人の〝私〟と共に対抗したが、空間を切り裂く剣撃を相手には退かずに耐えることさえ難しかった。
空間能力に対処する方法を知っているとはいえ、それ自体が難度が高く繊細な手段であるため、すべての分身がそれを同じように遂行することは不可能である。結局私が取れる最善の手段は分身が切り裂かれる速度に負けないように、新しい分身を作り続けること程度だった。
するとラースグランデは小さな〈空間振動〉を分身それぞれにピンポイントで殴って吹き飛ばした。あっという間に私自身が脅威にさらされた。後退しようとしたが背中の方から爆発した〈空間振動〉の衝撃が私をむしろ前に送った。
吹き飛ばされた私の首をラースグランデが強く握ると同時に、空間の刃が腹部を貫通した。
「がはぁ……!」
「『無限遍在』は対象を理論上無限に複製できる強力な特性。ですが無限というのはあくまで理論の話だけで、実際には技量と魔力量によって上限が異なります。特に、一度に生成して制御できる分身の数には明確な限界があります」
「それで……分身を消滅させずに……飛ばしてばかりだったのか」
「もちろんその程度の弱点くらいはすでに対処法を考案しておいたのでしょうね」
――『空間操作』専用技〈断界隔離〉
ラースグランデは手を離して数歩後退し、空間を遮断する壁で私を狭く閉じ込めた。魔力を外に発散することも不可能で、閉じ込められた空間自体が狭くて〈遍在分身〉で大量の分身を作ることも不可能だった。外の状況を認知することもできなかったが、ラースグランデが何を狙っても危険だろう。
しかし私をあまりにも見下したな。
結界魔獣は私の魂と繋がっている存在。結界魔獣とのつながりは次元を超えており、空間を隔離する程度では妨害できない。
――『無限遍在』専用技〈現象複製〉
結界魔獣とのリンクで私の魔力を外に送った。そして『無限遍在』の力で結界と結界魔獣を複製した。
「くっ!?」
ラースグランデは何か準備していたようだが、複製されて重なった〈血壁の刑場〉の力が彼女を押さえつけた。さすがのラースグランデも今度の攻撃には耐えられず片足が崩れた。
その間、私は〈血壁の刑場〉の力の一部と複製された結界魔獣一匹の力で〈断界隔離〉の壁にぶつかり、中でも私自身の結界の力を直接打ち込んだ。空間を操作する結界の力で壁を何度も攻撃すると結局壁が崩れた。
「くっ、はぁっ……!」
口から血があふれ出た。
……ち、やはり無理なことをした反動が来るんだね。平凡な術式を複製するなら数十数百個もできるけど、結界魔獣はあまりにも強大だ。複製体を一つ作っただけで体に無理がかかるほど。しかも空間の刃に腹部を貫かれたのもまだ治っていない。
「予想以上の底力ですね。褒めてあげましょう」
私の体調が崩れて力が不安定になった瞬間、ラースグランデは結界魔獣の複製体を引き裂いた。重なっていた〈血壁の刑場〉が消滅し、ラースグランデを押さえつけていた力が弱くなった。その瞬間、彼女は小さな〈空間振動〉を何度か爆発させ〈血壁の刑場〉に穴を開けた。結界の防壁の一部が損傷し、出力が弱くなった。
――バルメリア式結界術〈王国の進軍〉
「進撃せよ! もう少しだけでいいぞ!」
事前にこの一帯に設置しておいた結界の中でも最も強力なものを発動した。味方の力を大きく強化し、結界の強力な力が込められた武器を支給する結界だ。その武器は結界の中であれば相当な力の差も克服できる。
しかし、ラースグランデは鼻で笑った。
「もう少し、ですか。何か狙うものが別にあるようですね」
ラースグランデはすべての攻撃を余裕を持って避けた。そして騎士たちに近づき、手足で攻撃を放った。打撃が届くたびに小さな〈空間振動〉が騎士たちを正確に倒した。
ラースグランデのターゲットは――私だった。
「さて、どうだろうかな?」
〈遍在分身〉を限界まで生み出した。重傷を負った今の私を複製しても重傷者が増えるだけだが、『覇王の鎧』と各分身に支給された結界兵器の力で分身の体を無理やり動かした。どうせ分身だから、体が壊れる覚悟で無理をさせても構わない。
しかし、ラースグランデはそのすべてを簡単に突破して私に到達した。彼女の手のひらが怪我をした腹部を強打した。
「がはぁっ!?」
「他者の体内で直接魔力の技を発動するのは本来なら魔力の抵抗力のため不可能です。ですが魔力が乱れていて、身体に直接触れた状態なら抵抗を突破できます。そう――」
私が動くより先に、ラースグランデの手が強烈な魔力を放った。
「――このように」
――『空間操作』専用技〈空間振動〉
私の体内で空間の振動が爆発した。
「か……はぁ……」
規模は小さかったが、十分致命的なダメージだった。傷と口から大量の血があふれた。
倒れる私をラースグランデの冷たい眼差しが見下ろした。
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