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内部捜索

 建物の中はすでにめちゃくちゃだった。


 そもそも私とジェリアが安息八賢人たちを相手にしたのは敵の最大戦力を外に縛っておくためだ。これまで私たち二人を除いた皆が支部を騒がせて敵を無力化し救出対象を探す。それが私たちの作戦だった。もちろん救出対象を以前と同じ方法で移動させないように事前に広範囲な結界も設置した。


 建物の中はあちこち壊れ、戦闘不能になった安息領の奴らが散らばっていた。そして今も支部のどこかで他の人たちが戦っている気配が感じられた。ここには安息八賢人以外にも幹部が多いけれど、私の友人たちの力なら八賢人のいない兵力には負けないだろう。


 八賢人の直属の部下くらいの高位幹部がいたら事情は違うだろう。でもタールマメインの部下たちは『水源世界』の支援を受けながら集団戦を繰り広げることに特化した軍勢の性向が強いし、個人の戦闘力は劣る。この程度の奴らに負ける人は私たちの中にはいない。


 それはそうだけど……。


「本当に華やかにも壊しておいたわね」


「うぅ……ごめんなさい」


「いや、むしろ近道ができていいもの」


 壁や天井とかがめちゃくちゃに壊れていた。他の人の痕跡もあったけれど、一番露骨に感じられるのはやっぱりアルカの魔力だった。総合的な実力とは別に、単純な力の大きさだけならアルカは私とジェリアとも肩を並べるほどだから。


 進みながらトリアの気配を注視し続けた。かすかだけど確かに彼女の気配が感じられた。深い所にあるものの、動いてはいなかった。四方から私たちが接近しているから動きにくいだろう。


「止まれ!」


 たまに現れる安息領の兵力を簡単に制圧しながら進んだ。遅く入ってきた方だけどむしろ私たちが一番早かった。私とアルカが協力して最短距離で進めているからだろう。


「でもちょっとおかしいわね」


 竜人の姿で横で一緒に走っていたイシリンが眉をひそめた。


「何が?」


「トリアの気配が微動だにしないのがね。私たちがここを襲撃した目的は奴らも知っているはずなのに」


「逃げ場がないからじゃないでしょうか?」


 アルカはそう言ったけれど、私とイシリンは同時に首を横に振った。


「奴らが、少なくとも筆頭が『バルセイ』について知っているのは確かでしょ。けれどそう考えると変な部分があるの。せいぜい貴方とトリアを拉致した割には守備も対処もあまりにもずさんよ」


「このまま進めるなら私たちがトリアを奪還するのも時間の問題でしょ。だけど『隠された島の主人』が乗り出して異空間を解体したのが奴らの不本意だったとしても、その後私たちがここに来るまで少しでも時間があったじゃない。でも実質的な備えをほとんどしてないみたいわよ」


 ここはもともとタールマメインの本拠地。そんな所にボロスがいたのは十分に大きな準備ではあるけれど、筆頭は『バルセイ』についても知っている。そして私がベルトラムにほとんど勝つところだったのも見た。それならこの支部にボロス一人を追加した程度では私たちを止められないということくらいは知っているはずなのに。


 もちろん私たちとしても攻略対象者のほとんどの戦力をここに投入していなかったら、このような迅速な突破は不可能だっただろう。例えば私とジェリアだけここに来たらボロスの方も安息領の兵力と協力しただろうし、タールマメインを相手にした私はさっき戦った人数以上の大兵力と立ち向かって戦っただろう。でも私たちの総戦力を投入すれば八賢人の支部一つくらいは損なく討伐できる。


 さらにアルカは内部から自力で脱出してしまった。私たちの襲撃のおかげで安息領側が慌ただしくなったおかげではあるけれど、それにしても自力で大規模破壊をやらかして外に抜け出す能力を持った彼女を閉じ込めた割にはあまりにも粗末だ。


「ちょっと、もしかしたら……」


 結論が出ない推測を続けている間、トリアの気配が感じられる所の近くに到着した。


 大きな部屋だった。正確な位置はこの部屋の下にある地下みたいだね。床の材質や魔力処理のレベルが他の所よりはるかに優秀だった。この支部でも重要な場所のようね。


「下り口はどこにあるのでしょうか?」


「そんなのいらないわ」


 目に魔力を込めて床の弱い部分を見極めた後、正確な軌道で切った。大きくて四角い穴ができ、切られた床が下に落ちた。もちろんトリアの気配を避けて。


 下りてみると大きな地下室だった。何かに使われるような実験や拷問の道具のようなものがむやみに捨てられていた。


「トリアはどこにありますか?」


「……見えないわね」


 思わず眉をひそめた。


 トリアの気配は確かに感じられる。きっとここにいるはず。けれどトリアの姿が見えなかった。


「罠かしら?」


「ちょっと待って」


 まるで体で罠を確認しようとするかのように前に出るイシリンを制止した。


 魔力の感覚にかすかな違和感が感じられた。それが何なのかは分からなかったけれど、どこからそれが感じられるかは明確にわかった。近づいて床を見ると、小さな宝石がちりばめられた魔道具があった。イシリンとアルカがついてきてそれを見た。


「お姉様、これは何ですか?」


「どうやらトリアはずいぶん前に別の場所に移されたようね」


 魔力を注入すれば気配を偽装できる餌の魔道具だった。見たところ、この魔道具にトリアの魔力を限界まで注入してトリアがここにいるように騙したようだ。


 それ自体はムカつくけれど、周りを見るとトリアの魔力がかすかに残っていた。トリアがこの支部にいたのは間違いない。ならここから彼女をどこへどのように移動させたかは分かられる。


 問題はあえてトリアを餌に使ったという事実そのものだ。


「私たちの戦力をほとんど投入すればこの支部を制圧することはできる。けれど言い換えれば私たちの力がここに集中するという意味よ。あえてそんなことをしたというのは……」


「私たちを誘引するのが目的だったということ?」


「多分ね」


 問題は私たちを誘引した間に何をするのかということだけど――と思った瞬間、連絡の魔道具を通じて思念通信が入ってきた。


 これは……。

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