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暴挙と公開

 間違った言葉じゃないね。


 ここは厳然と王族が主催した宴会。一般的な貴族の宴会だったとしてもこのような暴挙は大きな問題になる。まして王族の宴会で暴れるのは王族の威信への挑戦と見なされることもある。四大公爵家の娘である私なら、ややもすると王家と公爵家の争いにまで広がりかねない。


 でもそれは兄様に何の問題もなかった時の話に過ぎない。


「できないと思うの?」


 私は堂々と魔力を解放した。周りに広がって迷惑をかけることはないように、でも私の周りに『結火』の宝石が生えるほど。


 兄様の言葉は結局、実際に兄様が安息領と関連があるということだけを立証すれば問題にならない。そして私は兄様が安息領と関連があると確信しているからこのような行動をしているのだ。


 テリアがそう言ったからだけではない。兄様がまだアカデミーにいた時の情況やいろいろなことを考えた時、今の時点ですでに安息領と関連があると確信したためだ。


 それに()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 私はまた兄様に手を伸ばした。今回は『結火』の魔力まで纏った本気だった。兄様も反射的に魔力を高めたけれど、兄様の『鋼鉄』は私の『結火』の熱気に溶けてしまった。


 手は兄様の体には届かなかった。直前に兄様が手首を掴んで止まったから。でも熱い熱気が兄様の手のひらを燃やした。苦しいのか兄様が眉をひそめた。


「……これは何のつもりだ?」


「いくらでもやってみろって言ったじゃない? まさかリディアが強硬な手段までは使わないと思ったの? 何の考えでここに現れたのかは分からないけど、ここに来たこと自体が間違いだよ」


 手首から尖った〈爆炎石〉を噴き出した。兄様の手が突き刺さって血が出た。そのように解放された手をそのまま押し付けて兄様の服を燃やし、胸の中にあった物を強奪した。


 黒騎士の魔道具だった。外形は一般的なものと大差ない。けれどケイン王子殿下の結界がある今なら確実にわかる。邪毒の量や密度が一般道具とは格が違う。おそらくジェリアが使ったのと同じ安息領のものだろう。


 私は殿下の結界のもう一つの機能を作動させた。特に特別なことではなく、もともと結界の権限を持った者にだけ見られる邪毒を他の人にも公開的に見せるだけだけれど。


 あふれそうな邪毒の姿を見て周りから悲鳴が上がった。


「一体何の……」


 兄様が慌てた。最悪の場合は魔道具自体は奪われても、こんな風に目に見える形になるとは思わなかっただろう。


 実はあまり意味はない。専門的な知識がなければこれが正常なのかどうか分からないから。でも周りにショックを与える程度ならいい。


「ケイン王子殿下。あのクズを連行してください」


「!?」


 兄様が後ろを振り向いた。いつの間にかケイン王子殿下が兄様の後ろに来ていた。


 彼は私を見て苦笑いした。


「公の行動をすることもできるとは思っていたのですが、派手すぎますね」


「何をしてもこのクズが逃げられないようにしたかったんです」


「ここまでする必要はありませんでしたが……まぁ、構わないでしょう」


 ケイン王子殿下が手を上げた。宴会場の外郭にいた衛兵たちが近づいてきた。意図を悟った兄様が腹を立てた。


「殿下!? これはどういうことですか!?」


「容疑者を逮捕するのですが。もちろん調査は公正に行います。無実なら補償も十分にしてあげますのでご心配なく」


「何の根拠で……!」


「この宴会場には最初から私の結界が設置されていたんです。そもそも今回の宴会の目的は安息領を探し出すことでした」


 ……素直すぎじゃない? 目的を言うのが。


 大げさに事をした私が言うべきことじゃないけど、私がやらかしたことは局地的な騒動とごまかすことができた。けれどケイン王子殿下が堂々と宣言しちゃえばそれも不可能なのに。


 ケイン王子殿下は周りが反応する前に先に指パッチンをした。結界が変質する気配が感じられた。今まで私たちの目にだけ見えた安息領の跡が皆の目に現れた。


 ケイン王子殿下は状況に相応しくないほど爽やかに笑った。


「もともとはこんなに公然と誇示するつもりではありませんでしたが……リディアさんの行動を見て考えが変わりました。これも特に悪くはなさそうですね」


 あちこちから悲鳴が上がった。でもケイン王子殿下はそれを無視して私に近づいてきた。でも彼の目は衛兵に連行される兄様を注意深く見守っていた。


 兄様は最初ケイン王子殿下が現れた時は怒っていたけれど、今はむしろ素直に連行されていた。いくら王子様だとしても、王家とも力比べができる貴族の公爵家なら力で無理矢理克服することもできるんだけど。


 もちろん兄様は今アルケンノヴァ公爵家との縁が薄くなってそのような強硬な手段を使えない状況だけれど、そのためだけじゃないという感じがした。


「リディアさん。何か考えが多そうですね」


 ケイン王子殿下が話しかけてきた。私は兄様の方を見て頷いた。


「仕方ないですよ。あいつも何も考えずにここに現れたはずがないですから」


「ここに来たこと自体に意図があると思うのですか?」


「多分ね」


 兄様も本当に何も知らないバカではない。『バルセイ』でも兄様はあくまで安息領と〝協力〟して利用する程度だったと聞いた。今は状況がかなり違うけど、おそらく配下になって利用されるだけの関係じゃないだろうね。


 この宴会が安息領を探し出すために決心して演出された場所だということまでは知らなかっただろう。でも今は兄様の立場が微妙な状況だ。


 しかも今ここで発見された安息領の数が多すぎる。もともと王家や騎士団がこのような方法を使わなかったのはこのような手段を使ったということ自体が政治的に問題になり得るし、成果は少ないからだよ。


 安息領のトップがテリアの設計をゆがめている今なら、このすべてがどのような意図によるものかという疑念を抱く。


 ……一応テリアと相談してみないとね。

読んでくださってありがとうございます!

面白かった! とか、これからも楽しみ! とお考えでしたら!

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