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シドの探索

 一番最初のターゲットは俺とも面識のある一人の伯爵だった。


「お久しぶりです、サッドマン殿」


「おお、シド公子じゃないですか。お元気でしたか」


 年はうんざりだけどかなり外見をよく管理した男だった。


 サッドマン伯爵。我がハセインノヴァ公爵領に属する伯爵である。公爵領内での序列は高い方じゃないけど、我が家傘下の貴族の中では珍しく社交と外交に積極的なタイプであるからそれなりに立地がある。四大公爵家傘下の勢力はトップの性向にある程度従う傾向があり、我がハセインノヴァは単独行動と秘密主義性向が強いからサッドマン伯爵のようなタイプはかなり貴重だ。


 彼は相変わらず明るい笑顔で俺を迎えた。


「アカデミーに入学されてから特に頭角を現したと聞きました。おめでとうございます」


「秘務科はそれなりに秘密主義なので僕の話がそんなによく知られていると困るんですよ」


「ハハ、ご心配なく。我が息子が同じ秘務科ですので聞いた話ですから。我が息子も他の人には話しませんでした」


 そんな風にあまり意味のない雑談を交わしながら、俺は密かな術式で伯爵の周りを見回した。


 サッドマン伯爵本人には安息領の跡が見つからなかった。しかし彼の周りにいる人の一部から痕跡が発見された。彼らは普段から個人的にも政治的にもサッドマン伯爵と親交があった人々であり、サッドマン伯爵は彼らの代表のような立場でもある。


 その上、サッドマン伯爵の一派は性向の特徴上ハセインノヴァ公爵領の外交窓口のような役割をする。均衡のために彼ら以外にも同じ役割を担う一派がもっといるけど、外交窓口の一つが安息領に汚染されたとすれば我が家の立場からも座視することはできない。


 まずはサッドマン伯爵を含め、彼ら全体が安息領と関連があるかどうかを先に調べてみようか。


「最近新しい取引を始めたと聞きました。良い出会いがあったようで」


「やっぱりもうご存知ですね。ええ、ちょうどいい機会が……」


 やり取りの注意と体の焦点はサッドマン伯爵に向けたままで、魔力だけを密かに伸ばして周辺を観察した。


 今サッドマン伯爵の周りにいるのは八人。そのうち安息領の跡が検出されたのは三人だ。サッドマン伯爵まで含めた全体九人のうち三分の一だね。


 ずっと観察してみるとその三人と他の人々の違いが見え始めた。


 サッドマン伯爵を含む六人は俺とのやり取りに積極的に参加した。話さなくても関心を持って見守っていた。一方、その三人は一歩離れた所でためらうような印象が強かった。それに時々自分たちだけで眼差しを交わしたりもした。それなりにこっそりしようとしているようだけど俺の感覚は騙せないんだよ。


 こんな時にどうアプローチするかは状況と人によって違うけど……ふむ。


「ナブロン殿。お久しぶりです」


「! ……ご無沙汰しておりましたでしょうか」


「僕はまぁご覧の通り」


 ナブロン伯爵と彼の補佐官の二人。補佐官たちは伯爵に従う立場だから差し置いておいても、ナブロン伯爵から安息領の跡が発見されたのはちょっと意外だ。彼は領地内の安息領討伐に積極的な方だったから。


 それも偽装だったということかな? それとも何か事情があるのかな? いずれにせよ、掘り下げてみないと分からない問題だ。


 幸い、刺してみる言い訳はあるんだね。


「体調が悪いのですか? 顔色が少しよくないですよ」


「ご配慮いただきありがとうございます。健康には異常がありません。多分疲れているからだと思います」


 疲れか。ちょっと気になるね。ナブロン伯爵の役割や性向を考えるとこんな場で疲れを訴えるほどの生活はしないから。


 その時、サッドマン伯爵が笑いながら割り込んだ。


「ナブロン殿は最近忙しくなりましたね。私も詳しい事情はわかりませんが、領地への物資や贅沢品が増えたようです。ナブロン殿は要人を接待することに長けていますので、おそらく重要な人に会うのでしょう」


「あ……ええ、まぁ、そんなことになります」


 ナブロン伯爵の態度は曖昧だった。


 ふむ。何かあるような気がするけど、簡単に教えてくれるとは思わないね。サッドマン伯爵が彼と同じ側なのか、事情を知らずに言ったのかは分からないけど。


 俺はわざとナブロン伯爵に興味を失ったふりをして再びサッドマン伯爵との話に集中した。もちろんそうしながら魔力の感覚は極限まで鋭くし、隠密な探索術式まで加えた。ターゲットは今この場にいるサッドマン伯爵たちとナブロン伯爵たち全員。


 長く見る必要もなかった。


 ナブロン伯爵は俺がサッドマン伯爵との話に注意を払うとすぐに肩の力を抜いた。表情はまだそのままだったけど、魔力の流れを見ると安堵した様子が明らかだった。さっきまで動揺して揺れたのが嘘のように落ち着いてきたから。


 彼はそうしながら静かに俺とサッドマン伯爵のやり取りを見守っていた。でも彼の視線が正確には俺に集中していることが容易に分かった。


 一方サッドマン伯爵は陽気で余裕があった。むしろ彼が言う話の中にはナブロン伯爵の疑わしい情況をさらに知らせたり、サッドマン伯爵自身に向けた疑いさえ抱かせるものもあった。それでも彼は自覚していない様子だった。


 サッドマン伯爵はもともと徹底的で計算的な人ではない。むしろお人好しの面のおかげでハセインノヴァ公爵領の外交窓口になれたから。そのすべてが演技だったら話は変わるだろうけどまだそんな感じはしない。


 まだ確信する段階ではない。でもサッドマン伯爵は無関係だという方に心証が傾くね。


 残ったのはナブロン伯爵が安息領と関連があるという決定的な手がかり。特にサッドマン伯爵が言った最近の動向が気になるけど……。


「……!?」


 突然ナブロン伯爵は息を呑んだ。できるだけ抑えたようだけど感覚を鋭くしておいたおかげではっきり聞こえた。


 密かに彼の視線を追ってみた俺は思わず眉をひそめた。俺自ら制御できなかったほど意外な状況だったから。


 この場に現れるとは想像もできなかった人物がその場にいた。

一ヶ月前に申し上げたとおり、最近更新が不安定でした。

当初は週3回程度の更新ペースになると思っていましたが、予想以上に忙しかったせいで更新があまりにもむちゃくちゃになってしまいました。

まだ会社と個人的な問題が完全に解決されていませんが、それでも一ヶ月前よりは状況が多少良くなりました。


来週からは更新を正常化できるようにできる限り努力してみます。

申し訳ございませんでした、そしてありがとうございます。

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