宴会場で
こんな宴会に来てみるのがいつぶりか分からない――数多くの貴族たちがそれぞれ華やかさと富を誇っている宴会場を眺めながら、俺はのんびりとそう思った。ハセインノヴァ公爵家の後継者である俺はこのような席にはあまり来ない方だから。
宴会の参加経験自体はなくはない。王国の四大公爵家の一員として俺自身の政治的な立場は俺も父上もよく知っているから。
我が家がどんな役割を遂行するかは別として、公爵家とはそれ自体だけで注目を集める存在だ。たとえ俺が望まないとしてもこのような席を避けることはできない。実際には俺自身も特に嫌いなわけではないので必要な時はこのような場に来て他の貴族たちを相手にしたりもした。
でもハセインノヴァはもともと秘密工作に特化した家柄。そのような要員を使うのはもちろん、直接遂行することにも長けていなければならない。そのため、近寄りがたいイメージがある。良くなく見られると誰も知らないうちに暗殺されるとか、王国のすべての秘密を握っていてその一部でも見たら家ごとに存在が消されるとか。
……暗殺だとか消されるのかというのはともかく、秘密を握っているという部分は必ずしも間違っているわけでもないけどね。おそらくこの国で情報としてオステノヴァ公爵家と対立できる唯一の存在が我が家だろう。
「何よシド。今日は結構着飾ってきたね?」
俺を呼ぶ声に振り向くと、リディアが目を丸くして俺を見ていた。
「なんだ? 嫌がってるのかよ?」
「いや、素敵だけど?」
わざとそっと感情を込めて皮肉ったけど、リディアは純粋な目でそのように反論した。
……時々本当に分からない奴だね。最初は俺をあまり好ましくないと思っていたけど……いや、実際にも俺への態度はあまり良い方ではなかった。テリアの知り合いの中でリディアが俺より粗雑に接する相手はケイン殿下だけだから。
でも俺を本当に嫌っているのじゃないか、それともただ性格がそうなのか褒める時は率直に褒める。正直意外なくらい。
「お前もよく似合うね。きれいだよ」
「ありがとう。ところであんたもここに来るとは思わなかったの。後ろで変なことをするのが好みだと思ったからね」
率直に感謝の意を表した直後に俺をディスるなんて。本当に分からない奴だ。
……だから面白いんだけど。
きれいだということもお世辞ではない。リディアは実際の年齢より五つは若く見えるほど小柄だけど、にもかかわらず存在感が強く感じられるほどだったから。白髪に近い銀髪とよく似合う純白のドレスはとてもきれいで、ブローチやイヤリングなどには強くて鮮明に輝くルビーがあった。可愛い印象を少し強く鋭くしてくれる化粧もよく似合う。
……あのルビーがただの宝石じゃなく、すべて有事に備えた〈爆炎石〉というのがちょっと怖い事実だけど。
「君たちはいつも仲がいいな」
とんでもないことを言う人がいた。ジェリアだった。彼女の傍でジェフィスは苦笑いしていた。
ジェリアもこんな宴会にはあまり来ない方だし、俺と時期が重なったことがないからこんな姿は今日初めて見るけど……正直衝撃的ではあるね。普段とはイメージがあまりにも違いすぎる。これもこれでよく似合うけど。隣にいるジェフィスは無難で丁寧なスタイルで、不本意ながら埋もれてしまう感じだ。
「仲がいいなんて、何を見てそんなことを言うの?」
「見て感じたままを言っただけだぞ?」
リディアは不平を言ったけどジェリアは平然と受け流した。するとリディアは不満そうに眉をひそめた。でも彼女が再び何かを言う前にジェリアの表情が真剣になった。
「元気になるのはいいことだが、今日の目的を忘れないように。遊びに来たのではないからな」
「知ってるよ」
この宴会の目的。それは貴族界に隠れている安息領を探すことだ。
安息領はあらゆる場所に存在する。当然貴族の中にも安息領の同調者が存在する。でもそのような者たちは簡単に尻尾を出さない。自分が直接乗り出すことはほとんどなくお金と人を安息領に支援するのがほとんどだから。
そのような者たちを一堂に集め、できるだけ捜し出すのが今日の目的だ。
間もなく今回の宴会の主催者であるケイン殿下が現れて簡単な演説をし、音楽が流れ本格的に宴会が始まった。
同時に俺たちにだけ感じられるかすかな魔力が流れた。
「これがケインの言ったアレだな」
「確かに見えると思うよ」
ジェリアとリディアは呟いた。
俺も彼女たちが何を見ているかは知っていた。俺にも同じものが見えるから。
たった今流れた魔力はケイン殿下の結界だ。邪毒の影響を受けたことがあったり、邪毒に関連した道具を持っていたり、安息領のレースシリーズが封印された宝石を持っていれば見つけることができる。身体自体がレースシリーズに改造されたオメガも。
安息領を相手にするために心血を注いで開発した結界だと聞いたけど……さすがにそう言うに値するね。非常に隠密で当事者でさえ知らないほどだ。俺たちは結界の情報を見ることができる〝権限〟を持っているからこそ結界の存在を感じることができただけだ。
結界はあくまで安息領の魔道具や邪毒に接した者を捜し出すだけ。そんなものと全く届かず、ただ思想や行動だけを同調する者は探し出せない。
それでも目立つ者がかなり多かった。
「……思ったより多いな。役に立たない狂信者たちに同調する愚か者がこんなに多いとは。同じ貴族であることが恥ずかしいほどだぞ」
ジェリアが眉間にしわを寄せながら言った。確かにそう言うほど多かった。割合としては少ない方だけどあまりにも人が多いため、数自体はかなり多い。
「結界で見つけた奴らは覚えておけばいいぞ。本当の問題は結界に捉えられない奴らだ。今から各自見つければいい」
「やり取りで相手を探るのは自信がないけど」
「ボクも同じだぞ。仕事だから諦めろ」
ジェリアは率先垂範するかのように近くの貴族に近づいた。他のみんなもすぐに行動を開始した。
俺もとりあえず動いてみようか。
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