エリネのクエスト
「それは貴方のように時間に関わる力を持っているということ?」
【いや、それは違う。強いて言えば私の力をのぞいたと言えるでしょ。とにかくあいつも知識は私と同等のレベルであり、神として貴方がどんな存在なのかも感知して知っているはずよ。貴方が未来を変えるほど奴の行動が変わるのもそれが原因でしょ。計画が壊れるのをそのまま放置する奴じゃないから】
大体分かった。
でもなんで私をあえてカラオーネ砂漠に呼び出したのかはまだよく分からない。私を誘おうとしたのは分かるけど、あえてそこを選ぶ必要はなかったから。
私を殺すのが目的だったとしても、そこは良くない。むしろ人が多い所だったら人を守るためにジェリアとの戦いに集中できなかった可能性があったから。でもカラオーネ砂漠には小規模な研究所がいくつかあるだけで、今はそれらの研究所さえ半分捨てられている。おかげで私はジェリアが侵食技を展開した時も仲間のことを心配しただけだった。
悩むために唇を噛んでいたからだろうか。『隠された島の主人』は私の疑問を察したかのように再び話した。
【あいつが具体的に何を望んでいるかは私にも分からない。どうしてあえてカラオーネ砂漠を選んだのかも。でもあいつの根本的な目的について一つ察していることがある】
「何なの?」
【あいつは自分への恨みを募らせているんだよ。無差別な多数の恨みじゃなく、ごく少数の強い憎悪を。奴の目的にそれが必要なようだよ。いったい何のためにそんなことを望んでいるのかは私も分からないけれど】
「ごく少数の強い憎悪、か。私の恨みを誘導しているということ?」
【多分ね】
いったい何が欲しいからそんな変態的なことを望んでいるのか分からないわね。
とにかくここで話すことはすべて終わった。敵の根本的な目的についてはどうせもっと話しても推測できる材料がないから。
去ろうとしたら『隠された島の主人』が最後に言った。
【貴方はエリネ・リムバインに注目していたようだったけど。そろそろ彼女を使ってみたらどう?】
「それくらいは貴方が言わなくても私が自分でやるわよ」
まったく、味方になるならもっとしっかりすればいいのに。
とにかくその言葉を最後に、私はみんなを連れて部屋から出た。
***
「お嬢様。エリネ・リムバインなら前におっしゃっていた……?」
「そうよ」
私はロベルの質問に簡潔に答えた。
エリネ・リムバイン。シドがアカデミーに来たばかりの頃に会った繁華街の遊び店の店員さんだった。その日偶然会って以来、彼女の行方を注視し続けていた。
アルカは横で首をかしげた。
「その方はどなたですか?」
「そういえば話してあげたことがなかったわね」
エリネさんは『バルセイ』の登場人物ではあるけれど主要人物じゃなかったから。サブクエが一つあった商店NPCだっただけで、そんな人までいちいち説明していたら話が長すぎ。
でもエリネさんのサブクエに関連したことがこれから起こるから、今話しておいた方がいいだろう。
「エリネさんは『バルセイ』の商店NPCの一人だったわ。メインストーリーとは全然関係なかったけれど、サブクエを一つくれたの。二年前に偶然会ったわ」
「重要な方でしたか?」
「ゲームの観点からは全然。サブクエも必須ではなかったから。けれどストーリーの観点からはかなり重要だと思う。だからエリネさんの行方をずっと見守っていたわよ」
前世の私はゲームをしながらエリネさんがパーティーに正式に参加していたらどんなに良かっただろうかとずっと考えていた。戦闘力が強くて……じゃなく、ちょっと違う意味でゲーム脳が作動したからだけど。
エリネさんは強いわけでもないし、重要な人でもなかった。サブクエで同行して、ちょっと臨時のパーティーメンバーになったくらい。戦闘力は一般人そのものだった。
それでもエリネさんが重要だったのは彼女の特性が重要だったからだ。
「エリネさんの特性は『幸運』よ。ただ存在するだけでも幸運があふれる特異な特性よね」
『バルセイ』では彼女がパーティーにいるだけでアイテムドロップ率が何倍にも増幅された。そのサブクエが進行中の間にはメインストーリーの進行が不可能になったけれど、ファーミングフィールドの入場は自由だった。
それでサブクエを始めてエリネさんをパーティーに加入させた後、あらゆるフィールドを歩き回りながらアイテムをかき集めるのがプレーヤーたちの常套手段だった。正直、そうでもしないとラスボス戦を準備するのがとても難しかったわよ。
しかもストーリー面でもエリネさんの役割はそれなりにあった。
「エリネさんのサブクエは病気の母上様の薬の材料を手に入れることだったわ。その途中、エリネさんの特性の力で偶然安息領のアジトを発見したわよ」
正直、前世のゲームや漫画ではありふれたネタだったけどね。
そのクエストをしなくても問題はない。でもクリアするとその後のストーリーが圧倒的に楽になる。そしてそれは安息領の横暴をより容易に防ぐことができるという意味でもある。
この世界はゲームではない。エリネさんの助けを受けられるのも一度だけではない。もちろん一般人のエリネさんを過度に巻き込むことはできないけれど、彼女の助けを受けられる時は受けた方がこれからを容易にしてくれるだろう。
そんな考えを要約して話すとアルカは心配そうに眉をひそめた。
「でもそのエリネさんっていう方は一般人じゃないですか。あまり深く巻き込むと危険になるのじゃないでしょうか?」
「そこは私も考えているわ。エリネさんの『幸運』は強力だけど無敵じゃないだろうから。できるだけエリネさんには迷惑をかけないようにするつもりよ」
まずはゲームのサブクエだった薬材料探しからする。ゲームでサブクエが始めた時期はもっと未来だったけれど、根本的な原因であるエリネさんの母上様の病気は今も同じだから。
まずはエリネさんと久しぶりにお会いしましょうか。
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