率直な言葉
アルカはその答えを聞いて眉をひそめた。
「どうしてですか? あの時の私は情けなかったし弱かったじゃないですか」
【貴方がこの世界にどんな存在なのか知っているから。そして『万魔掌握』は世界権能でしょ。自分の能力を半分も理解できず、まともに使うこともできないバカとはいえ、世界権能のポテンシャルは何よりも強いから。そして私にとって貴方の力は分かりやすいんだよ】
『バルセイ』を作った開発者であるカリンお姉ちゃんなら、アルカの力とポテンシャルについてはよく知っているだろう。
この世界と『バルセイ』の正確な相関関係はまだよく分からない。せめて偶然一致しただけの世界じゃないだろうけど……『隠された島の主人』の時間能力が未来の可能性さえ垣間見られるのか、あるいは時間軸が異なる平行世界があるのか。ひょっとしたら思いもよらない新しい可能性があるかもしれない。
いずれにせよ重要なのはこれまで『バルセイ』の情報はすべてこの世界の要素と一致していたということ。『隠された島の主人』が本当にカリンお姉ちゃんなら〝主人公のアルカ〟については少なくとも私ほど知っているだろう。『バルセイ』の開発者であることを考えると私以上の可能性もある。
一方、アルカは依然として真剣な顔で質問を続けた。
「それもお姉様のためだったんですか?」
【もちろん。私の行動にそれ以外の目的なんてないよ】
「貴方にとってお姉様はどんな存在ですか?」
【それは言えない。でも一つ言えることは……】
奴はしばらく口を結んだ。でもそれだけでも私には驚くべきことだった。何かを言おうとすること自体が奴には珍しいことだったから。
【私にとってこの世界のすべては〝テリアの味方〟と〝テリアの敵〟、たった二つだけよ。全部平等に嫌いだけど、せめて役に立つ奴には最低限の助けは与えられる】
奴が笑い声をあげた。好感や暖かさとは全く縁のない……むしろ嘲笑に近い声だった。けれど私に向けられた顔から強烈な視線が感じられた。
【貴方の周りの人が危ないこともあるでしょ。その危険が貴方の役に立つものなら私は今回のようにその危険を防がない。だからといって無条件に放置するつもりはないけれど】
「どうして? 貴方の言う通りなら他者を配慮する理由はないでしょ?」
【言ったでしょ。私が望むのは貴方の幸せよ。幸せというのはただ一人で生き残るだけでは達成できないじゃない? だからできるだけ手伝ってあげるだけよ。でも当事者である貴方が死んでしまったら意味がない。だからもし貴方を救うために貴方の周りの誰かが死ななきゃならないのなら、私は喜んで死なせておくよ。いや、自分の手で直接殺しても構わない】
奴の声から熱が感じられた。それがどんな感情なのかまでは分からないけれど、その熱が私に向かっていることだけは分かった。
【私の最優先はあくまで貴方よ。それが私の大原則であり、私のすべてだ。でもこの世界で私が邪毒神である以上、私にできることには限界がある。だから私はできることだけをやる。貴方が誰一人も失わない道を選んだければ必死にもがくようにしなさい】
「今更だね。そんなことは貴方が言わなくても自分でやるわよ。今までもそうだったし」
やっと奴の心が、本質が少し見える気がした。
奴は危険な存在だ。奴の言葉に偽りがなければなおさらだ。世界や人間への愛情なしに私だけのために動くということ、そして〝私だけのための行動〟が奴の主観的な基準に依存するということ。それはすなわち奴の判断によっては私以外のみんなに有害な行動さえ躊躇なくするかもしれないという意味だから。
ジェリアの件は運が良かった。そしてジェリアは今の私と匹敵するレベルになったし、私は〈五行陣〉に到達した。この時期の私たちとしては最上と言っていいほどだろう。けれど、『バルセイ』の悲劇はそんな私たちさえも油断できない脅威だ。だから今後さらに危険な状況はいくらでも発生しうる。
そんな時に『隠された島の主人』が何をするか予測できないというのはとても大きな不安だ。もし私の周りの誰かを排除するのがもっと合理的だと思うなら?
実際、『バルセイ』では攻略対象者がミスを犯して状況を悪化させたこともあった。そのような状況を排除するために最初から当事者を殺してしまおうとする可能性も十分ある。
けれど私が奴を無視するとしても奴が大人しくしてくれるはずはない。むしろ私が知らないところで自分勝手に何かをやらかすのがもっと危険だ。だから頭が痛い。どう対処するかは今すぐは結論を出せない。
最後にもう一つだけ確認したいことがある。
「大体分かったわ。最後にもう一つ聞きたいんだけど」
【何?】
「安息領にも『バルセイ』のことを知ってる奴がいると思う?」
ジェリアのラスボス化とカラオーネ砂漠という場所は、どう考えても『バルセイ』について知ってこそ可能な選択肢だった。
『バルセイ』で黒幕と呼ばれた奴が安息八賢人の筆頭かもしれないということは以前聞いた。そしてあいつはすべてを企んだ奴で、すでに私の行動に対するフィードバックで『バルセイ』とは違う歩みを見せたということも。
けれど、私をカラオーネ砂漠に呼び出したのは単に黒幕として自分が企んだことに対する予測を越えた。結果自体を明確に知っているとしか思わない。
『隠された島の主人』が微笑んだような気がした。
【奴も私と似てる。私は厳密に言えば『バルセイ』の知識で行動したわけじゃないから。むしろその逆だというか。私の力でこの世界の数多くの可能性を見たし、それをもとに織部カリンとして『バルセイ』を作ったんだ。そして奴はすべてを画策した側として自分の計画がどんな結果を生むか全部知っていた】
最近、会社の仕事と個人的な仕事が忙しくなり、時間を取られる日が増えました。
今まではできるだけ事前に作業をしようと努力することで何とかしてきましたが、そろそろそれも難しくなるほど仕事が増えています。
これは一時的なものですので、一ヶ月ほど経つと再び正常化すると予想していますが、一ヶ月間はやむを得ず更新できない日があるかもしれません。
正常化するまでは更新が不安定になる可能性があります。
基本的に月曜日と火曜日を除く週5日、19時5分がマジノ線です。
19時5分までに更新されない場合、その日の更新はないと考えていただければ結構です。




