プロローグ 決心と共有
カラオーネ砂漠での一戦が一段落した後、私たちは父上の力を借りてバルメリア王国に戻った。みんながジェリアと話したがっていたけれど、まずは帰還が急務だと判断したのでしばらく先送りさせてもらった。
父上は十分な休息空間と資源が必要だとおっしゃって私たちをオステノヴァ邸宅に召還してくださった。騎士科じゃないので参加しなかったケイン王子と事情があってカラオーネ砂漠に行けなかったジェフィスまで召還し、広い部屋に私たちを集めてくださった。
父上が後始末のために部屋を出るやいなや話の堰が切れた。
「一体どうしたんですか? なんでジェリアお姉さんがそんな様子に……」
「その力は何だったの? その程度ならほとんど騎士団長級だったのに」
「ジェリア様、お体は大丈夫ですか?」
私と一緒に戦った人々がジェリアを心配したり力の根源を知りたがっていたし。
「報告は受けたよ。大変なことになったようだね」
「姉君、その角と髪は一体……?」
ケイン王子とジェフィスは当惑を隠せなかった。
こんな反応も仕方ないだろう。まだジェリアがなぜ暴走したのか、その恐ろしい力がどこから来たのか教えてくれなかったから。ケイン王子だけは何か見当がついているような気配だったけれど。
何からどう説明すればいいか悩む私とは違って、ジェリアはフッと笑って軽く口を開いた。
「安息領の魔道具を何も知らずに使って大事故を起こした。恥ずかしいことだな」
「いやちょっと待って、そんなに軽く言う問題じゃないでしょ!?」
「ありのままを言っただけだぞ?」
びっくりしてツッコミしたけれどジェリアは平気だった。むしろこの状況を楽しんでいるような気さえした。邪毒のせいで頭がおかしくなったんじゃないよね?
他の人たちがまだわけが分からないという顔で首を傾ける中で、ケイン王子だけは苦笑いした。
「結局あの時のそのせいだったってこと?」
「ああ」
「え? ケイン殿下、事情をご存じですか?」
「ジェリアが私に安息領の黒騎士の魔道具を任せました。何度か使ったら変な感じがして危ないと言っていましたよね。それをもう少し早く気づいたらそんなことも起きなかったでしょう」
「本当にその通りだな。やはり慣れないことはしてはいけないものだぞ」
ジェリアは豪快に笑った。
うーん、ジェリアのテンションが妙に高いんだけど。邪毒の副作用なのか、それとも単に気分がいいのか分からない。
しかしテンションが高いこととは別に、私を見つめる眼差しが鋭く輝いた。
「皆に事情を説明してもらう前に一つ聞きたいのだが」
「何?」
「当事者であるボクより君の方が事情をよく知っているようだが。ボクの言葉が間違っだか?」
ジェリアの眼差しから強い確信が見えた。私がやらかしたことがあって……というより、暴走した時の記憶があるからかも。確かに『バルセイ』でもラスボス化した時の記憶がすべて残っているというセリフがあったようだ。
まぁ、あの時堂々と言ったこともあったし。ジェリアとしては疑うに値するだろう。
と思ったけれど、どうやらそれだけじゃなかったらしい。
「戦いの途中で君がボクをラスボスと呼んだんだな。そして暴走した時のボクの力は確かに騎士団長級、いやそれ以上だった。今はそれほどではないが……とにかくそんな強力な力を持って暴走する存在なら、君が言ったラスボスに当たると思うぞ」
「やっぱり鋭いわね」
これくらいなら隠せないわね。そもそも隠すつもりもなかったけれど。
私はラスボスのジェリアについてすべて話した。彼女が自分のルートのラスボスだったこと、そしてなぜそうなったのかもすべて。動機が動機だからジェリアも少し恥ずかしそうに顔を赤めたけれど、話の流れを切らなかった。
「だから『隠された島の主人』が警告した時、大したことないと思ったんだな」
「そうよ。……本当にごめんね。私がバカみたいに油断さえしなかったら……」
「ボクの本音まで全部察して行動できるはずがない。君が自責することではないぞ。だから謝りはやめろ。それよりもっと生産的な話をするぞ」
ジェリアは腕を組んだ。彼女はまるで子どもを厳しく叱る親のような勢いで話し続けた。
「君がなぜボクの暴走について言わなかったのかは大体見当がつく。君としては可能性のない未来だと思ったんだろう。訳もなくそういうことを言っても傷つくと思っただろうし。そうだろ?」
「……ええ」
「君が謝らなければならないのはその部分だ。余計な思いやりで情報を隠してしまい、結局事が起こってしまったことだ。最初から……とまではいかなくても、君が前世と『バルセイ』について告白した時ラスボスのこともすべて話していたら今回のことも予防できたはずだ」
極めて正しい言葉だ。私は首を亀のようにすくめるしかなかった。
ジェリアは私の姿を見てため息をついた。
「まぁ、もう起こったことはしょうがない。それに皆苦労はしたが、その見返りとして得たものもあったからな」
ラスボスとしての力は消えたけれど、それでもジェリアは格が違って強くなった。『冬天世界』と『冬天覇剣』を覚醒した今なら私と対等だと言っていいほど。これからのことを切り抜けることにジェリアの急激な強化は本当に大きな助けになるだろう。
「だがテリア。秘密はもう良くないぞ。他のラスボスの中にもボクのような事例があったらどうする?」
「……本当にもっともらしい言葉だわね」
ラスボスがすべてジェリアのようなケースではない。でも一部だけ言わずに隠そうとすれば疑われると思って言えなかった。
しかし今回のことが起こってしまった以上、ジェリアの言葉通りその〝一部事例〟を心配するのは余計な思いやりに過ぎないだろう。
話そう。全部。そのせいで傷つくかもしれないとしても……それはあくまでもゲームのストーリーであるだけ。今の私たちの話じゃないから。
決心を固め、私はついに口を開いた。
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