一つの終わり
少し疲れたように力がなかったけれど、明らかに自分の意志を取り戻した声だった。
答えたかったけど口が開けなかった。ただ一つの、しかしあまりにも巨大な感情が湧き出て息が詰まりそうだった。戦いが終わったという実感と共に、戦っている間に凍っていた感情が再び動いた。
「ごめん……ごめんね。本当に……」
「……なぜ君が謝るのか分からないな」
「でも……貴方がそうなったのは……」
私のせいだよ。その言葉を防ごうとするように、ジェリアの手が私の口を塞いだ。
「丸見えだな。ボクが〝こう〟なったのも『バルセイ』の内容だったな? だから君はボクがどんな気持ちを抱いていたのかも知っていただろうし。……そういえば一度は堂々と相談もしたんだな」
ジェリアは頭を上げた。その時になってようやく私はラスボス化が解除された彼女の姿をまともに見た。
彼女の姿は昔通り……じゃなかった。邪毒に浸食されて歪んだものは邪毒が消えても元に戻らないから。『浄潔世界』だけは世界権能らしく少しでも邪毒の後遺症までも除去してくれる例外的な能力があるけど、それもちょっとだけに過ぎない。
それでも外見は第三フェーズに突入する時に生えていた角が消えない程度だった。角の大きさは小さくなったけど。そして髪の毛の半分が雪のように真っ白に脱色された。……というか、髪の変化は邪毒じゃなく『冬天世界』の覚醒の影響だけど。むしろ邪毒のため黒髪が維持されていたのだ。
けれど、どれだけ変わったかは重要じゃない。変化があったことと残っていること、それが消えない過去を象徴していたから。
そのせいで涙が出そうとしたけれど……その瞬間、ジェリアは私の額にデコピンを食わせた。
「いたっ! 何してるの!?」
「つまらない自責に埋没しようとする気配が見えたからな」
「つまらないなんて! 貴方がそうなったのは……!」
「ボクが自分自身の足りなさを認められず誤った方法で足搔きした結果だ。ボクの過ちの責任を君が代わりに負おうとするな。それがむしろもっとボクを惨めにするぞ」
ジェリアの眼差しは厳しかった。ついさっき邪毒侵食から回復した人とは思えない力が眼差しの中から輝いた。
「テリア。行き過ぎの責任感は自分にも他者にも迷惑になるだけだぞ。今回のことはボクの過ちから始まったもので、君はそれをボクの代わりに直してくれた。むしろボクが君に借りがあるのだ」
「で、でも……」
「反論は聞かないぞ。……聞いてくれる時間もないしな」
ジェリアがそう言った直後、突然鋭くて早い斬撃が私たちを襲った。ジェリアの足元から伸びた氷壁がそれを防いだ。
私とジェリアは同時に斬撃が飛んできた方向を振り返った。
「……本当に飽きもしないわね。これ何回目?」
「目の前に置かれたチャンスを見逃すわけにはいきませんね」
ピエリ・ラダスだった。
状況は良くはない。私たちみんな満身創痍だから。私を助けに来てくれた全員が私とジェリアの衝突の余波に耐えなきゃならなかった。その上、私はジェリアと直接戦いながら激しく消耗し、〈真 太極〉を完成した代価として今は立っていることさえやっとであるほど体がボッロボロだ。〈五行陣・金〉の光はすでに消えて久しい。
でもピエリにも有利な状況じゃないわよ。
「本当にチャンスだと思うの?」
力が抜けて座り込むような足に無理矢理力を入れて動いた。ピエリは以前と違って少し緊張した様子で剣を取り直した。
今の私は〈五行陣〉を完成した。ピエリもその意味を知っているだろう。体が満身創痍になったとしても、大英雄の彼をある程度は相手できるようになったということを。しかもみんなめちゃくちゃ消耗したとはいえ、百人を超える戦力がまだ残っている。
しかも最大の戦力がある。
「そういえば『隠された島の主人』が言っていたんだな。この試練を乗り越えればボクはテリアに匹敵するほど強くなると」
ジェリアは突然一歩前に出た。彼女の体から津波のような魔力が噴き出した。
――『冬天世界』侵食技〈冬天世界〉
砂漠の風景が再び雪原に変わった。
砂漠全体を支配したさっきとは異なり、今は目に見える範囲が〈冬天世界〉で侵食された程度。だけど世界権能の侵食技を展開したという点は同じだ。しかもジェリアの魔力は消耗が全く感じられないほど膨大だった。私さえも驚いたほど。
ジェリア自身だけが平然としていた。
「ピエリ・ラダス。〈五行陣〉に至った剣士と世界権能の保有者を相手にも勝利を断言するほど貴様が強いのか?」
「……強がりがひどいですね」
ジェリアは答えの代わりに剣を振り上げた。彼女の特性と同じくラスボス化の影響で覚醒した『冬天覇剣』だった。
〈五行陣〉と始祖武装を習得した私と、世界権能と固有武装を手にしたジェリア。万全の状態だったとすればピエリを倒すことさえ可能な大戦力となった私たちを前にして、ピエリの顔に葛藤が浮かんだ。
ここで私たちを逃したら次はもっと面倒になるだろう。しかし、今でも私たちを相手に勝利を保証することはできない。余計に無理をして彼自身がここでやられてしまうと彼が長い間追求してきたことを成し遂げられなくなる。
そして彼はただの自尊心のためにそのような危険負担を甘受する人ではない。
「……ちっ」
ピエリが小さく舌打ちをしながら背中を向けた瞬間、ジェリアが『冬天覇剣』を力強く振り回した。氷雪の斬撃がピエリへと放たれた。けれどピエリは『倍化』で自分を加速させ、あっという間に逃げた。
「逃げるのも呆れるほど早いんだな」
ジェリアは鼻で笑った。でも彼女の声には隠せない安堵があった。今の状況でピエリと戦うのは負担だっただろう。
ピエリの気配が完全に消えた後、ジェリアは再び私を見た。彼女の凛々しい顔が柔らかな笑みを浮かべた。
「ボクの過ちを収拾してくれてありがとう。そして経緯は悪かったが、とにかく力を得たのは事実だな。今後この力を利用することがあればいくらでも利用しろ。君になら喜んで利用されるからな」
「……ジェリア」
言いたいことは多い。けれど言えることはなかった。ジェリアの凛々しい目が、強い心が弱い言葉をすべて塞いでしまった。
だからこそ、私に言えることは一つだけだった。
「ありがとう」
ジェリアは返事の代わりに笑いながら私の肩を叩いた。
そうして、最初のラスボスの脅威がこの世から消えた。
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