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中心部到達

〈浄純領域〉の通路を維持したまま前進した。


 安息領が中心部に潜伏している可能性を考えて警戒していたけれど、奴らが近づいてくる気配はなかった。まぁ、中心部に潜伏するのは旧型の魔道具では全く不可能だから当然だろう。


 それでも万が一でも奴らがいたら、大きな脅威になりかねない。中心部は邪毒が濃すぎて、魔力の気配を探知することができないから。それを知っていたので騎士たちは外側よりも中心部の内側への警戒を維持していた。


 中心部に向かって前進し続け、私はイシリンと思念通信を交わした。


[イシリン、ここの邪毒濃度についてどう思う? 他の場所……燃える海や北方の大陸より濃度が特に濃いようだけど]


[邪毒神の違いよりは場所の違いだと思うの。呪われた森はもともと大量の邪毒が残っていた所だから。中心部はもともと邪毒が濃かったはずだし、それが邪毒神の影響を受けて大量に氾濫する状況でしょ]


[邪毒神の仕業なら目的は何なのかしら?]


[……それはわからない。希望的に考えるなら『バルセイ』の事件を防ぐためでしょ]


 燃える海も北方の大陸も。結果的に『バルセイ』で発生した大規模事件を防ぐ結果となった。そしてこの森も、浄化作戦さえ取り消せるようになればその二ヶ所のように一つの事件を未然に防ぐことができる。


『隠された島の主人』は『バルセイ』に登場しなかった邪毒神たちが自分の仲間だと言った。それが事実であり、今までの歩みを信じてあげるとしたら……少なくとも今回の邪毒神も敵じゃないだろう。けれど、ここの邪毒神が奴の仲間だとはまだ確言できず、百パーセント信じるのはやっぱりまだだ。


[邪毒神のことは核心部に到着すれば調べられるでしょ。それより私は安息領の奴らが気になるわよ]


[攻勢が散発的すぎるから?]


[そう]


 それはちょうど私も気にしていたところだ。


 ここに来る間、安息領にたくさん会った。でも彼らはみんな小規模で歩き回っていただけで、調査隊を妨害しに来たような様子じゃなかった。むしろジェリアを確認するまでは交戦を避けようとする傾向が強かったし。


 イシリンもそれを感じたようだった。


[こっちも安息領に何度か出くわしたの。でも奴らは口だけで威嚇するだけで、交戦が始まる前に逃げようとしたの。騎士たちが追いかけて制圧したけどね]


[ということは、積極的に立ち向かうのはジェリアがいる時だけだということね]


[そもそもジェリアが目的なのかしら?]


[可能性はあるでしょ。奴らは何か探しているような気配だったわよ。中心部に向かってはいたけど、もしジェリアが配属された部隊が中心部に向かうと考えたのなら同じだろうし]


 でも考えられるのはそこまでだった。やっぱり奴らの本当の目的が何なのか、なぜジェリアを見てかかってきたのかは分からないから。森の調査を終えて帰る途中で安息領にまた出くわしたら、何人かを捕虜にしないと。どうせ騎士たちも安息領を逮捕して尋問する必要性は感じているだろうし。


 思念通信をしている間、邪毒の渦の真ん中に到着した。正確に言えば距離を見積もってこの辺なら真ん中だろうと思ったんだけど、目の前に見える光景だけを見てもここが中心部でも核心だろうという気がした。


 巨大な岩構造物があった。形が整えられたわけじゃなく、ただ大きくて高い岩がいくつかあるだけの姿だった。外見は大きさが大きいこと以外は平凡な岩だった。


 けれど()()()()()()()()()()。濃密な邪毒が渦巻くここで、邪毒に侵食されて歪まない岩とは、逆にありえない現象だ。


 やっぱり騎士たちも見逃せなかったのか、直ちに岩を調べようとする動きを見せてくれた。百夫長が一番先に剣を抜いて岩に向かって振り回し、他の騎士たちも剣と銃で岩の標本を獲得しようとした。


「隊長! 岩を採集することができません!」


「剣も魔弾も通じません。どうしましょうか」


 騎士たちが言ったように、岩には何も通じなかった。単純に硬くて壊せない、みたいなものじゃなかった。岩に攻撃を仕掛けた瞬間、何か正体不明の魔力場のようなものが攻撃をすべて弾き出した。私も魔力場を分解する魔力や技術を使って岩を壊そうとしたけど全く通じなかった。


 こんな所に普通の岩があるということ自体も怪しいけど、あの反応はもっと怪しいわね。


[イシリン、怪しい岩があるの。そっちで確認してもらえる?]


 イシリンは竜人少女の肉体に自分の意識を宿して活動しているけど、本体はあくまで形を変化させ、私の体内にある邪毒の剣だ。いくらここが濃い邪毒の渦巻きの中だとしても、彼女と思念通信を交わすのと魔力の感覚を借りることはそれほど難しくない。


[ふむ……邪毒神の力が感じられるわね。燃える海で見た赤い宝石と似た感じなのよ]


[やっぱりそうだったわね。どんな邪毒神なのか分かる?]


[そこまではわからないわ。でも邪毒神の修飾語を考えると……これは『広闊な大地の心臓』だと思うわよ。岩だから]


 単なる発想だね。だけど『バルセイ』に登場しなかった邪毒神たちの中から選べというならば、『広闊な大地の心臓』が最も可能性がありそうだ。イシリンの言う通り岩だから。


 岩に手を出した。燃える海でそうだったように、邪毒神の意志と触れることができるかもしれないから。けれど今回は何も感じられなかった。攻撃した時と違って弾き出される感じもなく、ただ平凡な岩に触れる感じだった。


 ただし、平凡なのは物理的な感触だけだった。感覚を集中してみれば岩の内側からかすかな邪毒が感じられた。存在するということくらいしかわからないほどかすかな気配だったけれども。


 イシリンの意見もあるから、邪毒神のものだということは明らかだ。でもこれをどうやって調べるの?

読んでくださってありがとうございます!

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