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怪しい烏合の衆

 安息領は私たちを襲いに来た……というには少し微妙だった。


 彼らの方向は森の中心部だった。つまり、私たちと同じ方向に進んでいた。そしてこっちを気にする様子じゃなかった。多分同じ場所に向かって進んでいる途中、偶然出会っただけだろう。まだこっちに気づいてはいない様子だ。


 百夫長は安息領を認識するやいなや手で合図した。騎士たちは攻撃態勢に入った。


 あっちがまだこっちの存在に気づいておらず、私たちの目的は安息領討伐じゃなく森の調査。だから無視できるなら無視するのもいいけど、そうするには距離が近い。私たちの規模も規模だから、バレるのは時間の問題だろう。その前に先に攻撃するという意味だ。


 騎士たちはそれぞれ魔力の斬撃や銃の魔弾で攻撃を浴びせた。森の魔物化した動植物を突破し、ちょうど相手を殺さないほどの威力だった。安息領部隊もようやくこっちに気づいた。


「敵襲だ!」


「立ち向かえ!」


 安息領の数は三十人、みんな雑兵だった。その半分が騎士たちの先制攻撃で戦闘不能になった。残りはその半分を盾に負傷を回避した。でも言うこととは違って、奴らは警戒しながら距離を置くだけだった。


 それも当然だろう。安息領の雑兵は単なる烏合の衆のテロ組織員にすぎないから。一人の力はバルメリアの平騎士の方が圧倒的に強い。ところが今はむしろ頭数もこっちの方が圧倒的。森で奇襲するのならともかく、正面対決はバカなことだ。


 ところが、奴らの気配が急に変わった。


「待って、あいつを見ろ」


「ふむ?」


「ほう……『最優先ターゲット』だ!」


 奴らは突然自分勝手に興奮し、武器を取り出して本当の戦闘態勢をとった。


 奴らの視線が向けられたところは私……じゃなくて、ジェリア?


「全隊員。三分以内に掃討しろ」


 百夫長が冷静に指示を下すと同時に、安息領雑兵たちが一斉に〝バカなこと〟を始めた。


「あいつを捕まえろ!」


「あの御方がご褒美をくださるだろう!」


 奴らのテンションは高かったけど、私とジェリアにたどり着くこともできなかった。百人隊の騎士たちがあっという間に奴らを制圧したから。勢いよく飛びかかった割には虚しい結末だった。


「……何だろ?」


「さぁね」


 ジェリアの疑問に答える言葉がないわね。


 その後もそのような遭遇が続いた。時々安息領の小規模部隊に遭遇し、奴らを騎士たちが冷静に制圧した。奴らは最初は戦闘を憚ったけれど、突然態度を変えて突撃してくるのも同じだった。


 退屈なほど繰り返されるパターンの目的は明らかだった。


「ジェリア。感じたのかしら?」


「ああ。奴らの目的はどうやらボクらしいだ」


 最初は確信するほどじゃなかった。けれども、同じことが繰り返され続け、奴らの視線を観察し続ければ知るしかなかった。奴らがジェリアを狙っているということを。


「『隠された島の主人』が言ったことと関係があるのか?」


「……さぁね」


 ジェリアの疑いは妥当だ。けれど、私は眉間にしわを寄せるしかなかった。


『隠された島の主人』が警告したことが起きるためには、必ず必要な先行条件がある。迂回方法なんて存在しない。その条件は実現しなかったはずなのに、なぜ奴らがジェリアを狙うのかしら。


 他の目的があるのかしら? そうかもしれない。ジェリアはフィリスノヴァ公爵の娘で、最も有力な後継者と言われているから。彼女を狙う理由を探すより狙わない理由を探すのがもっと難しいほど、彼女の立場は利用されられる部分が多い。それはジェリア自身も知っている点だし。


 一人を捕まえて尋問したいけど、今私たちは森の中心部に向かって速く前進している。ゆっくり捕虜尋問をしている時間がない。


 ジェリアは私の表情を見て鼻を鳴らした。


「何であれ、奴らを撃退したら心配することは何もないだろう。だから気にするな」


「ええ、ありがとう」


 私たちが中心部に到着するまで、安息領の散発的な攻勢が絶えなかった。情報が伝えられたのか、最初とは違って決心して最初から私たちを狙う奴らがますます多くなった。でも百人隊を突破するほどの強い戦力はなかった。


「中心部に近づくほど濃くなる邪毒が安息領よりも大きな障害物ね」


「いざ安息領の奴らも邪毒で苦しんでいるがな」


「まぁ、邪毒神を崇拝したからといって身体が変わるわけじゃないからね。旧型浄化の魔道具を使うあっちの方がもっと不自由な状況でしょ。そろそろ魔道具の持続時間がギリギリだから」


 そんな感じで進んだ末、私たちは中心部に到着した。地図や羅針盤などは必要なかった。あまりにも濃く渦巻く邪毒が、そこが私たちの目的地だということを知らせてくれたから。


 まるで巨大な墓のようだった。前世のエジプトにあるピラミッドと似た規模だろうか。膨大な量の邪毒が巨大な規模で渦巻いていた。内部の光景は邪毒のため見えなかった。あまりにも濃い邪毒のせいで騎士たちとジェリアが使用中の魔道具の魔力が急速に消耗するのが感じられた。


 ここは私の出番だね。


「みんなさん退いてください」


 ――『浄潔世界』専用技〈浄純領域〉


 周辺一帯を私の魔力が覆った。


 邪毒が瞬く間に浄化され、純粋な魔力となって輝いた。それをまた『浄潔世界』の魔力に変換し、〈浄純領域〉をさらに拡張した。それを繰り返して中心部の邪毒を少しずつ取り除いた。


「……邪毒が濃すぎるわね」


 思わず呟きながら眉をひそめた。


 邪毒が濃すぎるあまり、私の〈浄純領域〉でさえ浄化するのに時間がかかった。結局私が勝つことはできるけれど、中心部を全部浄化しようとするなら一ヶ月はかかるだろう。


 百夫長が前に出た。


「テリア嬢。奥に入るトンネルを作る感じで頼む。その程度なら早くできるだろう」


「分かりました」


 百夫長の指示通り〈浄純領域〉を変形させた。私たちを守る領域はそのままにして、邪毒の渦に鋭く食い込む感じで領域を展開した。間もなく浄化の通路が形成された。


 私は前に出た。


「私が邪毒を浄化しながら前進します。気をつけてついてきてください」

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