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調査隊発足

 バルメリア王国の六つの騎士団の一つ、太陽騎士団は王国の南部を司る。


 南部は四大公爵家の一角であるオステノヴァ公爵家の領域であり、先代太陽騎士団長との縁もある。そのため、太陽騎士団はバルメリアの騎士団の中で最も魔道具技術力と戦略戦術のレベルが高い。また、呪われた森は南部のオステノヴァ公爵領に隣接している。そのため、太陽騎士団は呪われた森から流出する魔物と邪毒に対処する専門部隊を別途保有している。


 その太陽騎士団で呪われた森の調査隊を発足させたけれど……。


「……なんで父上がここにいらっしゃるんですの?」


 私はあまりにも呆れてため息をつく気分にもならなかった。でも仕方ないもの。私の父上、つまりオステノヴァ公爵本人がこのような場に直接来臨するとは想像もしなかったからね。


 私だけでなく知り合いたちもみんな当惑していた。騎士科じゃないケイン王子とシドを除いて、『バルセイ』の主人公であるアルカと攻略対象者はみんなこの場に参加した状態だから。


 けれど、騎士たちは平穏だった。彼らが公爵という存在に慣れているからではない。公爵の父上が勝手にこんな場に出ることはできなかったはずだから、事前に騎士団と協議をしたんだろう。


 父上は当惑している私たちを見て苦笑いした。


「テリア、父がここにいるのが嫌なのかい?」


「嫌なことじゃありません。たださすがの公爵様がこんな場にいらっしゃるとは思わなかっただけですわよ」


「資料だけで伝えられる知識は限界があるからね。今回の調査隊の顧問として正式に合流したんだよ」


 調査隊の指揮官が頷いた。


 今回の調査隊はなんと太陽騎士団の千人隊が一つまるごと来た。実際、森の規模を考えれば、千人隊でも十分だとは言えない。呪われた森の総面積は伯爵領を三つほど合わせたレベルだから。千人隊一つだけなのも、騎士団の本来の役割のためには戦力を過度に投資できないからだ。


 確かに、千人隊を効率的に運用するためには父上が直接いらっしゃるのが道理だろう。千人隊はその名の通り千人の部隊だから。


 それに父上は今度の調査で私をサポートしてくれると約束した。そして調査の結果を確認して、今後私をサポートし続けるかどうかを決める予定でもある。だから直接いらっしゃったんだろう。


 父上は調査隊の指揮官に近づき、握手を求めた。


「カラン千夫長。娘を優先して申し訳ない。今日はよろしく頼む」


「呪われた森の研究で論文まで出してくださったオステノヴァ公爵閣下が直接参加してくださって心強いです。よろしくお願いします」


 父上とカランさんが話している間、リディアは私に耳打ちした。


「テリア、公爵閣下はなんで呪われた森を研究したの?」


「ただの好奇心だと聞いたわ。邪毒と呪われた森は人類には脅威だけど、研究者にはかなり魅力的な素材だからね」


 嘘じゃないけど、真実をすべて言ったわけでもない。


 父上が呪われた森を研究したのは全部、家の悲願であるイシリン解放を果たすためだ。邪毒の正確な原理を理解することは必ず必要であり、邪毒に汚染された存在を再びこの世の生命体として定着させることができるのか調べなきゃならなかったから。


 その研究は多くの成果を上げた。その中には今後『バルセイ』の事件解決に使われる重要な成果もあるので、父上の研究は非常に大きな意味があった。けれど……残念ながら、本来の目的であるイシリン関連は全く進展がなかった。


「私のためにこんな所に閉じこもるなんて。子孫であるだけなのに、どうしてそこまでするのよ」


 イシリンはぶつぶつ言った。


 今、彼女は竜人少女の姿で正式に参加した。さらに、父上が正式に彼女の身分を登録し、アカデミー騎士科に編入までさせた。あくまで法的な身分に過ぎないけれど、それだけでも感動した父上を慰めるのは意外と苦労だった。


 ……いや、実は竜人の姿をアカデミーに納得させることからが苦労だったけれど。この世界にはそんな種族がいないから。


 イシリンは目を細めた。


「……まったく。シエラの奴も子孫も、どうしてこんなに困る奴らなのかしら」


「すごく嬉しそうだけど?」


「ふん」


 そのようなやり取りの間、父上はカランさんとの談笑を終えた。その後、本格的な人員と経路配分が始まった。


 基本的には千人隊を構成する十個の百人隊が散開して森を調査する。調査といっても実際にすることは、討伐した魔物の死体と植物標本を採集して持ってくること。現場で直接何かを調べるのは、本当に深刻だったり急な何かを発見した時だけだ。


 ところがその時、ジェリアが少しためらいながら手を上げた。


「申し訳ございません、オステノヴァ公爵閣下。一つお願いしてもよろしいでしょうか?」


「気軽にしなさい」


「ありがとうございます。僭越ですが、ボクをテリアと同じ部隊に配属させていただけますか?」


 ……ジェリア。そのせいだね。


 実は現場実習が始まる前に、ジェリアが私と別々に話をしていた。




 ***




「『隠された島の主人』が貴方を呼び出したって?」


「そうだ」


 アカデミーの庭園で、私はジェリアに話を聞いていた。まさか最初の一言から驚くことになるとは思わなかったけど。


 ジェリアが内密に話したいことがあるって言ったから、二人きりで話をすることにした。ロベルとトリアも遠くから護衛するだけで、この場の話を聞いてはいない。


 けれど、ジェリアの用件は私が想像できなかったことだった。


「貴方が呪われた森に行くと恐ろしいことが起こる……ってこと?」


「ああ、最悪の場合はボクも君も死ぬんだと言われたな」


 私とジェリアが死ぬ?


 今の私の強さがどれくらいなのかは『隠された島の主人』も知っているはずだ。それでも私が死ぬと言ったのは、それだけの事件が起こるということだろう。


 ……ちょっと待って。そういえばあいつは『バルセイ』のことを知っている。


 邪毒。ジェリア。悲劇。ジェリアも私も死ぬかもしれない……。


 ……あ。

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