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決定

 けれど、まず最初に確認しなければならないことがある。


「それで、父上。一応すぐ目の前のことについて確言をもらいたいです」


 一応父上が手伝ってくれる雰囲気に行っているので、この際確言いただけることはすべて処理しよう。特に目の前のことである呪われた森調査は、父上の助けがあるかどうかが非常に大きな影響を及ぼす。父上はこの国、いやこの世界で一番呪われた森のことをよく知っている御方だから。


 父上はまた席に戻って座った後、穏やかな眼差しで私を見つめた。


「いい。とりあえず八割くらいは信じられるよ」


「そうしても八割ですの?」


「あの御方が本当のイシリン様じゃないかもしれないから」


 イシリンは眉をひそめた。父上の態度が不愉快で……はなく、少し呆れた様子だった。


「ひざまずいたくせに確信がないってこと?」


「一応礼儀は示したのですが、イシリン様について別ルートで調べて演技している可能性もありますからね」


 言葉はそう言っているけど、父上の表情を見ると否定的に考えているようではなかった。見守っていた母上もただ苦笑いするだけだった。


 でもイシリンは納得どころか、ますます怒り気味だった。


「それで? まだテリアを完全に信じられない理由は何なの?」


「ご心配なく。テリアの前世や『バルセイ』のことはほとんど信じています」


「ん?」


 イシリンは首をかしげた。私もこれは少し理解できない。八割というのはかなり多くのことを信じてくださるという意味ではあるけど、私の話をほとんど信じているのなら残りの二割は何だろうか。


 父上は私たちの疑問を感じたかのようにニッコリと笑った。


「まだ確信できない二割は、貴方が本当のイシリン様なのかということだけです。ですがそれとは別に、テリアの話は信じるしかありません。本来なら絶対に分からなかったことをテリアは全部知っていましたから」


 隣で母上も微笑んで口を開いた。


「詳しい事情は分からないけど、そのイシリンという御方が偽物なら偽物を用意するための情報を得たってことでしょ? ということは結局情報を得るための経路が必要よ。あのイシリンという御方が本当なら、彼女見つけるために情報を得たはずだし……偽物なら、偽装するために彼女の情報が必要なんでしょ?」


 そうなんだ。そもそも本来なら私がイシリンのことを知る方法はなかった。それでもイシリンという存在をお見せしたということは、少なくとも彼女についての情報をどこかで得たこと。それだけのイレギュラーとして私の前世の記憶と『バルセイ』を認めてくださったという意味だ。


「もちろん感情的にはイシリン様が本物だと思うよ。だからひざまずいて敬意を表した。あの御方の偽物を作るというのが……どんな意味なのか分からない君じゃないはずだから」


 父上の眼差しが一瞬鋭くなった。


 イシリンは我が家の使命そのものであり、現公爵である父家が礼を表わすほどの存在だ。そのような存在の偽物を作ったということは、我が家に対する侮辱である。


 父上の言葉は警告だ。それを知らないほど愚かな娘だったら許さないという。もちろん私はそんなバカじゃない。


「もちろんです。偽のイシリンを作るということは、我が家にとっては誓いの言葉を破ったのと同等ですからね」


「そんなに?」


 母上はまた驚いた。どうやら母上には後で説明を別にしないと。表情を見ると、父上が代わりにしてくれそうだけど。


「そもそも誓いの言葉という文化自体がイシリンから始まったんですの」


「え? 私?」


「ええ。イシリン、貴方もこれは知らないでしょ。五人の勇者が誓いの言葉を作ったのは、貴方を封印した直後だったからね」


「……そこまで知っているとは。これは認めないわけにはいかないんだ」


 父上が苦笑いした。もちろんわざとそのような感想を抱くよう誘導したのだけど、いざ実現したら私も苦笑いするところだった。


「誓いの言葉は始祖様がイシリンを封印した直後、必ず彼女を解放すると自ら誓ったことに由来しています。自分のすべての名誉と権限をかけて誓うのを見て、五人の勇者の残りのメンバーがそれを一つの制度として確立したんです」


 すなわち、イシリンは最初の誓いの言葉の対象であり、誓いの言葉という制度そのものの根源だ。そんな存在をむやみに侵犯するのは単純な懲戒程度で終わる事案ではない。


 もちろんこれもオステノヴァ公爵家の当主だけに伝わる秘密であり、『バルセイ』がなかったら私が知るはずがない情報だ。


「よく知っているね。さっき言った二割も形式的なものに過ぎなかったけど……それさえも言えなくなってしまったよ」


「協力してくださるんですの?」


「それ以前に、何への協力が必要なのか言わなかったよね? 公爵の権力と権限が必要だということはさっき聞いたけど、具体的に何をするかはまだ一言も聞いていない」


 そういえばそうだった。


「申し訳ありません。前世の話に熱中して忘れてしまいました。……まずはすぐに助けを求めたいことがありますの。呪われた森についてです」


「うむ? そこはもう君の友達と一緒に修練に使っているんじゃない?」


「騎士団が呪われた森の大規模浄化を図っているのはご存知ですわね?」


「もちろん。使える土地を拡張して、南の国との地上交易ルートも作れるからね」


「その事業を壊します」


 父上は口をちょっとだけ開いた。あんな風に当惑する父上は初めて見たので、少し新鮮だね。


「……なぜ?」


 私は『バルセイ』で大規模な浄化後に起こった出来事を言った。おまけに『バルセイ』に登場しなかった邪毒神たちと燃える海や北方の大陸のことも。


 父上が手を額についた。


「事件を防ぐためには森を今のまま放っておくのが一番確実だということだね。そして邪毒神が森に介入している可能性もある、と」


「それを確認するためにも調査が必要です。そして邪魔するためにも」

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