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ケインの考え

「心配?」


「そう、心配」


 ジェリアは知らないだろう。今私の目には彼女がどれほど危なっかしいのか。


 初めて会った時から彼女は強い力を求め、強い人のことが好きだった。そのような面は今もそのままだ。それ自体は問題ない。しかし、最近の彼女はどうやら力を求める態度が変わったようだった。


 昔のジェリアなら、どこで何を活用して修練をしても気にしなかった。自分と剣があればどこでも構わないという立場であり、魔物を討伐することは手段の一つに過ぎなかった。たまに気に入ったものが消える状況になってもすっきり忘れたりした。そうだった彼女が、有用とはいえ一つの場所に未練を持ったように振る舞うのが意外だった。


 考えすぎかもしれない。ただ機会があるからこそそうしただけで、それ以上の意味はないかも。いくら古い友人だとしても、彼女をよく知っているかのように当て推量をするのが私の傲慢に過ぎないかもしれない。いや、実際にその方がいいだろう。


 しかし……どうしても不安だ。今回のことだけではない。前からジェリアがどこか不安な状態だということは知っていたから。それに関してリディアさんが私に相談を要請したこともあったくらいで。


「君、テリアさんとの差についてかなり悩んでるよね? 普段なら修練場所や素材にあまりこだわらない君があえて呪われた森に執着するのも、彼女を追いかけるための修練場を失いたくないからじゃない?」


「……森はボクだけの修練場所じゃないぞ。ボクたち皆が有効に活用しているんだ」


「皆のためというのは嘘ではないね。君がそんな奴だということは知っている」


 しかし、私の指摘は否定しなかった。それだけでもジェリアの本音ははっきり見えた。ジェリアもそれを知っているかのようにため息をついた。


「……まぁ、君の言う通りではあるんだな。だが候補地に森がなかったら、浄化作戦について知っていても森に行こうと提案しなかっただろう」


「それは知ってる。君は公私混同する奴じゃないから。ただ心配だよ」


「心配? 何が?」


「切実さはいい動力だけど、時には隙になったりする。君のその心を敵が狙うかもしれない」


「変な心配をするんだな」


 そう、変な心配かもしれない。ジェリアが今暴走しているわけでもなく、せいぜい行き先を選ぶのに若干の理由があったという理由だけでこんなことを言うのは不適切かも。


 でも切実さが盲目になり、盲目が隙になるのをあまりにも多く見てきた。政治の世界ではありふれたことだから。私は王子であり、そのような世界をうんざりするほど経験した。だからこそ、私だけができる心配なのだ。彼女の前に置かれた戦いは政治の戦いではないが、知略の競争の現場になれば結局同じだ。


 もちろんジェリアは盲目的に目標だけを追求する奴ではない。しかし、安息領が何をするかは誰にもわからない。特にピエリ・ラダスは力だけが強いのではなく、知略も優れたタイプである。そして実際に私たちは奴の邪毒獣召喚を結局防げなかった。ひょっとしたら想像もできない手段でジェリアを苦境に陥れるかもしれない。


 そんな考えを率直に打ち明けると、ジェリアは大笑いした。


「相変わらず気苦労だな。まだ気配すらないことを心配しすぎると君の心が先に病むぞ」


「真剣に聞いてほしい」


「真剣に聞いてるぞ。だから言うのだが」


 ジェリアは相変わらず笑っていた。しかし、微笑みの意味が変わった。


 ジェリアの笑顔はいつも自信に満ちて堂々としていた。私にとって彼女は信頼できる友人であり豪傑だった。私がやり過ぎたことをする時は私を叱ってくれて、私が助けを必要とする時は誰よりも先に手を伸ばしてくれる人。彼女はいつも私が王子として最初に重用する騎士だった。


 そんな彼女の笑顔が、今だけはいじらしかった。


「……ありがとう。正直、おかげで心が整理できたぞ」


 ジェリアはポケットから何かを取り出した。私もよく知っている品物だった。精密に制御される邪毒を身体に注入して自分を強化する黒騎士の魔道具だ。それ自体は違法ではないが、黒騎士として資格を認証された者でなければ所持および使用が厳しく制限される。


 あれをなんでジェリアが持っているんだろう?


「一時はこんなことに頼ろうともしたが、やはりボクには似合わない。だからこれは君に任せる」


「どこで手に入れた?」


「安息領の物を拾ったんだ。ピエリの王都テロ当時に」


 私の表情が固いのが自分でもわかった。ジェリアはそんな私を見て苦笑いした。


「これ、使った?」


「……少しは」


「バカなのか? 安息領の奴らは黒騎士の魔道具をそのまま使わない。リミッターを解除したり、動作方式を変えて身体に害になることさえ甘受して出力を高めるよ。何の副作用があるか分からないんだ」


「知ってるぞ。だからあまり使わなかった。成長のためにちょっとヒントを得た程度だぞ。……邪毒獣事件の時は前線を維持するために実戦で少し使用したが」


 私はジェリアを叱り続けようとした。しかし、彼女は私の手に魔道具を握らせ、もう一方の手を私の肩に乗せた。彼女らしくない弱々しい笑顔が私の視界を埋め尽くした。


「正直焦ってたみたいだな。ボクも実際に使いながら違和感を感じたし、その後は使っていないから心配するな。今まで大きな問題はなかったから大丈夫だろ。それでもボクのことを心配してくれたのはありがとう。これはもうボクが持っていない方がいいと思うぞ」


「……今からでも知っていればよかった」


 私は魔道具を受け取って背を向けた。今はジェリアの顔を見たくない。彼女のことが嫌いになったのではなく、意外な姿に思いがけない感想を抱いてしまったのが恥ずかしくて。


「ケイン? どうした?」


 一人だけゆったりしてるのがちょっとムカつくんだけど。


 ジェリアには過ちはないが、幼稚に怒った。今さらそんな姿を見せておいて、本人は自覚すらないなんて。


 彼女を振り返ると、純粋に疑問だけを感じる表情が見えた。私はわざとジェリアを挑発するように微笑んだ。


「普段からそんな顔をしていたら、男がいっぱい詰め掛けているはずなのに」

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